魔女は何でもお見通し

奈々先輩に用事があった帰り、珍しくジャッカル先輩とバッタリ遭遇した。
まあここ三年生の棟だからな。そりゃ会うよな。

「ジャッカル先輩だー!」
「おう猫宮、元気だなぁ」
「取り柄なもんで…」

次の授業もあるので二言三言交わしてその場は分かれた。
うーん、ジャッカル先輩あれ具合悪いんだなぁ。
声に覇気がない。若干気だるげな様子だった。昨日の雨にやられたのだろうか……でも目に見えて具合が悪そうではなくて、多分気付かない人は気付かないだろうくらいだ。

魔女は魔法を用いて薬を作ることがよくある。その為人の体調の良し悪しが何となく分かってしまうのだ。

「悪化しないといいけどなぁ」

少し不安があるが、ジャッカル先輩は自分の不調を知られまいとした節があった。だから敢えて何も言わなかった。でも倒れたらどうしよう……
そんな考えがぐるぐると頭の中で高速回転をする。気が付けば授業が全て終わっていたのだった。そんな馬鹿な。


やっぱり少し心配で、帰る際にジャッカル先輩の様子を見て行くことにした。先輩の現在地を魔法で探す。
(保健室か…)
寝ているのだろうか。とりあえず保健室に向かい、中に入ってみればベッドに横たわり氷のうで額を冷やしているジャッカル先輩が居た。

「猫宮!?」
「うわ!めっちゃ悪化してますね!」

先輩は驚いて上半身を起こしたが、若干ふらついている。
明らか具合悪くなっている。オーラが淀んでいるよ。

「どうした?」
「日中会った時具合悪そうだなーと思って、とりあえず帰る前に様子見てこうと思いまして」
「よく分かったな…普通にしてたつもりだけどよ」
「魔女に隠し事は不可能ですね」

勝ち誇ったように笑えばベッドの近くまで丸椅子を持って行って座る。

「これから帰ります?」
「いや、部活行くぜ」
「は!?そんな状態で!?」
「今日練習試合があるんだよ。それに、体調管理できてねえって知られたら幸村にどんな説教受けるか……あと真田」

具合が悪くて青いのに、ますます顔を青くさせる。あー真田先輩そういうとこ怖そう。

「ジャッカル先輩もうちょいこっちきて」
「?何すんだ……?」
「いいからいいから」

怪訝そうに近寄ってきたジャッカル先輩の背中に手を当てて、回復魔法をかけながら優しく撫でる。
体内の炎症は見る見るうちに消え、奪われていた体力をMAXまで戻しておく。先輩の顔を見上げればすっかり良くなっていた。

「頭痛もだるさも無くなった…マジかよ…」
「魔女に不可能なことなどないのだ」

腰に手を当ててふんぞり返れば、元気になったジャッカル先輩にバーカと言われた。だがしかし彼に言われると全然悔しくない。愛あるバーカである。

「ありがとな、助かった」
「真田先輩達の小言よりも、体調悪化して倒れたら大変ですからね」
「そうなったらますます真田達が怖そうだな…マジで助かった…」
「購買のカレーパンでいいですよ」
「ちゃっかりしてんなお前!」

そう言って彼は笑いながら私の頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。玄関まで一緒に歩きながら、少しだけ部活のことを教えてくれた。主に丸井先輩の愚痴だけど。
いつかジャッカル先輩のために、奴をぎゃふんと言わせなくては。