魔女と魔法薬

「やべえもんができてしまった」

私は部屋で一人、机の上の物を見ながらそう呟いた。
母親の手伝いで魔法薬を作っていたのだが、その過程で思わぬ産物が生まれてしまった。なんというか、媚薬の一種だと思う。
飴玉のように一口サイズの球体で、ほんのりとした紅色が光に反射してキラキラと光っている。
母親に頼まれた薬というのは、体内の悪いところにピンポイントで成分が届き、浄化してくれるというもの。そして薬というのは副作用が付き物なので、服用しても眠くならない、喉が渇かない…等というなかなかの万能薬だ。
しかし大きな病気を治せる程の力は無い。

眠くて…ちょっと分量間違えたらこれだよ……なんだよ媚薬って…
その紅い飴玉のような物を鑑定してみる。

効能:フェロモン増加、男女問わず惹きつける、気分の高揚、周囲の好意を増幅させる

これやべーやつぅ。
誰彼構わず魅了しちゃうやつぅ。
いやでもこれさ、絶対欲しい人には売れるよね……?いやいやいやいやだめよ理久、そんなことしてはだめ。絶対お母さんに怒られる。
でもなあ捨てるのは何か勿体ないんだよなあ。自分が使いたいわけじゃないけどさー面白そうじゃんねー。
学校行ってから考えよう。
私はその魔法薬を薬を包む紙に包んでポケットに入れた。

****

魔法薬のことなぞすっかり忘れ、今日も椿ちゃん由奈ちゃんと元気に学校生活を送った。帰りのHRを終えて意気揚々と玄関へ向かうと、部活へ行く丸井先輩に会った。

「よぉ理久、帰んのか?」
「そうですよー先輩は部活ですか、忙しいっすね」
「つーかお前部活は?」
「……へへ」
「うちは文武両道が基本だろぃ」
「入りたいのなかったんですもんー」

テストは上位だもん。入試だって上位10位以内だったし…運動できて勉強できないよりよくない?

「よし、それ黙っててやっからブツ出せブツ」
「言い方が物騒なんですよ…今アメくらいしかないですよ」
「上等」
「カツアゲだわ…」

はよ寄越せと手を差し出してくる丸井先輩の手に、ポケットから飴玉を二個掴んで渡した。

「サンキュー」
「酷い先輩だ…」
「ほら部活行ってくる先輩への抱擁は?」
「そんなことしたことなくないですか?」

おちゃらけながら腕を広げる丸井先輩を半目で見てしまう。なんだこの人。
ノリが悪いと叱られたが、叱られる意味が分からないのでスルーしておく。

「猫宮さん、今から帰るの?」
「あ!!幸村先輩だ!」
「俺ん時と態度がちげぇ」

その可憐な声は!幸村先輩や!!振り返れば優雅に微笑む幸村先輩と、真田先輩に柳先輩も居た。わー!噂の三強!
私はその三人に笑顔を向ける。

「皆さん部活頑張ってくださいね」
「おい俺にも言えよぃ」
「丸井先輩ファイッ」
「お前それ意味が違うだろ意味が」

そのまま彼らを見送り、私は校門へ向かって歩き出した。
あーそう言えば、魔法薬どうしようか考えるの忘れてたわ。椿ちゃん達と遊ぶのに夢中になって………

………。

……………アメ……あれ…?魔法薬……そういやポケットに………てかさっき私丸井先輩に……?

サーッと血の気が引くのを感じ、震える手でポケットをまさぐる。
入っていた飴玉を掴み手を広げれば、そこには市販の飴玉しかなく。

………………ヤヴァイ……