大パニック

先輩達に説明しようとしたのも束の間、何故か幸村先輩に背後から抱きすくめられてしまった。機械のようにぎこちなく振り返れば艶っぽい表情をした幸村先輩と目が合う。だから!こんな至近距離だと!私でも薬の効果にやられてしまうんだって!ていうか何で先輩私にしがみついてんの!?

「俺は放置かい?」

カーンッと頭を金槌で打たれた気分だ。背中に覆いかぶさるように抱き着く先輩はやはり男で、密着した部分から先輩のしっかりとした体を感じる。ただでさえ自分今顔真っ赤なのにますます茹で上がってしまうではないか。

「理久!説明!!どうなってんだよ!!」
「あのそれが実は……ヒッ!」

首筋に何か生温いものが当たった。目の前の丸井先輩は頬を赤く染めて、ワナワナと震えている。
その間にも首筋に当てられた生温いものは、ぬるりと私の肌を滑り、短く水音が響く。
死にそう。

「〜〜〜〜〜ッ!!無理無理無理!!先輩すいません…!」

羞恥に耐えられず振り返るとすぐ目の前に幸村先輩の顔があって、もう少し勢いがあればキスしてしまう程の距離だった。危ねえ!

「やっと積極的になってくれたね」
「ぎゃーッ!一旦眠らせますね!?」

私は幸村先輩の目元を片手で覆うと、眠りの魔法をかけた。……はずなんだが…!?
目元を覆っていた手を掴まれ指先にキスをされる。どこの王子様だ、幸村先輩がやると様になるからつらい。

「目隠しが好きなの?猫宮さんが見れなくなるのは勿体ないな」

ああああああああ効かないんだけど!!?!?どうするどうするこれどうする!!!!!!待って本当どうしたらいいかわかんない!!!!
あ……!!眠気防止の効果がここで活きてんの!?なんて厄介なんだ!!!!

「ちょちょちょ!部長何やってんスか!」

頭の中は大パニックで固まってしまっていた私を救出してくれたのは切原先輩だった。幸村先輩から引き剥がされ、守るようにぎゅうと抱き締められる。安心感!!この安心感半端ないぞ!!?!?
よし、よしよしもう眠らせるとかそういうのじゃなくて強制的に意識手離してもらおうそうしよ……うわーッ!!幸村先輩が柳先輩誘惑してる!!!

「待て精市待て、どうしたんだ」
「何?柳俺のこと嫌い?」
「いやそういうことではなくてだな…」
「幸村くん落ち着けって!」

助け船を出したのは丸井先輩で、そのせいで次のターゲットが丸井先輩になってしまった。幸村先輩に顎を掬われ甘い言葉を吐かれている。丸井先輩顔真っ赤だ。
子を守るように未だ私を抱き締めてくれている切原先輩が我慢ならずに叫ぶ。

「これどーなってんだよ!?」
「わたしのつくったまほうのおくすりのせいですね」
「は!?」
「なんかよくわからないけどびやくてきなものができてしまいまして」
「媚薬!!?!?って何だ?」
「なんでしょうねわたしもわかりかねます」
「理久ーッ!!!!早くどうにかしろぃ!!!!!」

倒れる寸前の丸井先輩に叫ばれ、幸村先輩に対して昏睡の魔法をかけた。大丈夫、命に別状はない。
強制的に意識を手離した幸村先輩はぐらりと体勢を崩し、それを丸井先輩が受け止める。ナイス連携!

からの私は土下座だ。
丸井先輩が私を睨む目は般若のようです。

「理久〜……」
「申し訳ございません」

今度こそ説教タイムが始まる。