魔女の立ち位置

私と切原先輩は無事間に合い、というか切原先輩が大変だっただけで私余裕で間に合ったよな。
先輩達に挨拶をしてバスに乗り込む。適当に空いている席に座ると、当然の如く切原先輩が隣に座った。

「永住の決心ついた?」
「今の今!?急かしすぎじゃないですか!?」
「決めるのは早いほうがいいだろ?」
「いやいやいや何が何でも早過ぎ…私まだ高一ですよ」
「三年間なんてあっという間だろうが!今すぐ決めろ!」
「いや横暴!」

しかもそれじゃ永住一択じゃねーか!もっと選ばせろよ!
すると、後ろに座っていた丸井先輩が後ろからひょいと乗り出してきた。

「何の話してんだ?」
「丸井さん聞いてくださいよー!こいつ高校卒業したら北海道戻るとか言ってんスよ!?だめでしょ!?」
「は?だめだろ」
「だから何で…」

一瞬眉間に皺を寄せた丸井先輩が、何言ってんの?とばかりにそう言うので頭の中のハテナが一層増した。何故どいつもこいつもだめだと言うのか。私の進路は私のものなのだが。

「遊べなくなんじゃん」
「別に行き来くらい余裕ですよ」
「だめ」
「何故」
「近くに居ねーのがだめ」
「日本には居ます」
「そういうのは近くって言わねーんだよ馬鹿」

馬鹿という言葉と同時に真上から拳骨が落ちてきた。まだ平手のほうがよかった……拳骨って…最近なかなかないぞ拳骨って…痛い……

「うーん、俺も猫宮さんと離れるのは嫌だなぁ」
「えー幸村先輩まで…」

斜め前の席に座っていた幸村先輩が、少し眉尻を下げながら微笑む。

「だって、寂しいじゃないか」

寂しい。その言葉に少しだけきょとんとしてしまった。ちらりと切原先輩や丸井先輩を見ればうんうんと首を縦に振っている。そうか、寂しいってことなのか。

「たかが後輩ですよ」
「そんなことないよ。大事な後輩だよ、大事で特別な、ね。」

自分が特別なんて、そんなことあるはずないだろう。いや、普通の人から見れば魔女は特別かもしれないけれども。

「まあ魔女なんてそうそう居ないですからね…でも呼ばれればすぐ来れるし……」
「魔女だから特別ってわけじゃねーっつの!魔女云々抜きにしても、特別ってことだよバーカ」
「丸井先輩ね、女の子に馬鹿連発は良くないと思うのよ私。好きな子にも馬鹿って言う気!?」
「そこは上手くやるから大丈夫だよバーカ」
「ほらまた言う!!私馬鹿じゃないもん!!」
「自分馬鹿じゃねえっつってる奴程馬鹿が多い」
「ギーッ!!!むかつく!!!」
「理久暴れんなってオイオイ」

ケラケラと笑って人を小馬鹿にしてくる丸井先輩に応戦していれば切原先輩に押さえつけられる。やめろ放してくれ、私はこの先輩と決着をつけねばならないのだ。

「つーかお前差し入れは?手ぶらじゃねーか」
「デデデデッデデデーン亜空間〜〜〜〜」
「うわ理久の腕消えた!」

彼らには見えていない亜空間へ手を突っ込むと、空間に入っている腕が傍から見れば消えたように見える。そこから自分の荷物を引っ付かみ少しだけ引っ張ってみた。

「ここに全部入ってるんで大丈夫です」
「くそ便利かよ」
「丸井先輩も収納しましょうか、静かになる(笑)」
「バスから投げ落とすぞお前」

バスに揺られる間幾度となく丸井先輩と合戦を繰り返し、その都度切原先輩にうるさいと諫められた。なんというか、一見すると切原先輩のほうがうるさそうな気するんだけど実際うるさいのは丸井先輩だ。我儘ボーイめ。
もう面倒くさかったので手で耳を蓋すれば二度目の拳骨が降ってきた。ちょっと涙目になった私を、切原先輩が呆れたように撫でてくれたので痛みはすぐどっかに飛んでいったようだった。ゴッドハンド切原……

丸井先輩に何仕返ししようかな……