「あん?そいつ海に居た時のか?」
氷帝とご対面するや否や跡部さんにソッコーバレた。まあ当たり前か。
「今日はね、お昼作ってもらったんだよ」
「へぇ……珍しいじゃねーの、練習試合にまで女連れてくるなんてな。よっぽどお気に入りか?」
「まあね」
意地悪じみた跡部さんの笑顔を幸村先輩は優雅に笑って受け流す。それを見た跡部さんはわざとらしく肩を竦めて、私を見た。
「猫宮っつったか」
「はい」
「迷惑かけねえようにな」
「了解です」
端的に、短く返事をする。それがよかったのか跡部さんはフッと笑って私の肩を軽く叩いた。
「おー、あの跡部が友好的だぜ」
「よかったなぁお嬢ちゃん」
誰。
跡部さんは幸村先輩達と話をすべく少し離れた場所へ歩いていってしまった。取り残された私に話しかけてきたのは赤い髪の小柄な人と、丸眼鏡をかけた人だ。
もう一度言おう、誰だ。
「名前なんつったっけ?」
「猫宮です」
「俺向日な!」
「忍足や、よろしゅう。跡部と同じ三年や」
「わあ年上…一年です……よ…よろしくどうぞ…」
小柄な彼が向日さんで、丸眼鏡が忍足さん……忍足さん関西弁だすげえ。
おどおどと頭を下げればそう固くなるなと向日さんに背中を叩かれた。有難いけどもう少し力加減をしてほしい。私は一応女の子なのだ。
ほんの少しだけお話をして、いざ練習試合が始まった。
まさかマネジメントでもさせられるのかと思ったが、氷帝にはたくさんマネージャーがいるらしく彼女達が立海の面倒も見てくれるらしい。
そして、私は息をのんだ。
「「「きゃあああああああああああ跡部様ぁあああああああああああ!!!!」」」
パネェ。
黄色い声援パネェ。目だけで回りを見渡せばえげつない女子の数だ。
跡部さんが人気そうなのは分かっていたが、その跡部さんを筆頭にテニス部は大人気のようだ。
それに加え、我が立海のファンもいるようで、先程から先輩達の名前も叫ばれている。
いいのか、こんな練習試合でいいのか先輩達よ。
これあれかなぁ、周りの野次にペース乱されないようにっていう訓練かな。
「誰あの女」
「マネージャー?」
「見たことないわよ」
「誰狙いなわけ?」
う、うわあああああああああん!!!何か聞こえるぅ!!怖いよ視線に殺されそうだよ!!!
何で私がベンチに座ってるかって!?
『お前はここな!』
って切原先輩が勝手に座らせやがって!出ていこうとしたのに周囲を取り囲む女子が怖くて結局ここから動けない!
胃が痛いよ胃が…こんなの聞いてないよ……約束と違う…
「大丈夫か?」
「むりですよむりむり…ジャッカル先輩私お家帰りたい…」
「いやぁ…帰してやりてーのは山々なんだけどな……そんなことすると確実に俺が怒られる…」
「いつもこんな状況で練習試合してるんですか?」
「まあ氷帝とする時は大体こんな感じだな」
「アイドルかよ…」
私の一言にジャッカル先輩は苦笑いをした。
周囲の目に耐えながらそっとコート内を盗み見る。確かにテニスをする先輩達はかっこいい。皆真剣な表情をして、活き活きとしていた。
いつもの賑やかな先輩達ではないような気がして、別人を見ているかのようだ。
常に気だるげな仁王先輩でさえ全然違う。覇気があるよ覇気が!誰だあれ!
「…先輩達こんなすごかったんですね」
「まあ…それなりにな」
「丸井先輩とかいつもあんなにアホみたいなのに…」
へっと笑ってそう言えば私とジャッカル先輩の間を物凄い勢いでテニスボールが通り過ぎた。すぐに後ろでフェンスがガシャンと大きな音を立てていた。
「わりーな、目測誤ったわ。理久何か言ったか?」
「…………なにもいってないです」
「そうか、ならいいんだよ」
丸井先輩はキラキラとしたイケメンスマイルを浮かべていたが、『次はぶつける』と明確な念を送ってきた。怖すぎた。
「丸井先輩ホラーなんですけど…」
「いらねーこと言うなよお前…俺までとばっちり受けるんだからな…」
「怒られる時は一緒ですよジャッカル先輩」
「絶対嫌だわ」