魔女にも選ぶ権利がある

「っだー!!疲れた…!」

ぼーっと雲を眺めていたら切原先輩の声が響いた。
自分の意識を雲からテニスコートへ戻せば、ぞろぞろと皆がベンチへ戻って来る。どうやら午前の練習が終わったようだ。

「飯ー!!」

練習中とは打って変わって柔らかい表情を浮かべた丸井先輩が抱き着くかのように腕を大きく広げてこちらへ向かってくる。さっきの黒い笑みが嘘のよう……

「理久!飯!」
「私飯じゃないです」
「んなこと分かってるっつの。お前まずそう」

いらないいらないと真顔で言うので歯を剥き出しにして怒れば爆笑された。
後からきた仁王先輩が丸井先輩の隣に立つと、私の顔を見てにやっと口角を上げる。

「猫の威嚇」
「そんな可愛いもんじゃないんですけど!!!」
「そう思っとるんは自分だけじゃ」
「も゛ーッ!!!!」

言い返す言葉が見つからず声を荒げれば丸井先輩に牛だと言われたのでじゃあ丸井先輩は豚かと言えば本気で怒られた。しかしその他立海メンツが噴き出したのは聞き逃さなかったからな私。



氷帝学園の学食を借り、昼食となった。
跡部さん達にバレないように亜空間にしまっていたお弁当達を取り出して広いテーブルへ並べる。
亜空間に入れていたため、作り立てのようにまだほんのりあったかかった。

「美味しそうだね…」

量とおかずの数に幸村先輩が感嘆する。
私は少し照れながら、無限ドリンクボトルから容器へ冷えた麦茶を注いだ。

「口に合うか分かんないですけど」
「ふふ、そんなに謙遜しなくても大丈夫だよ」
「幸村先輩だけだ優しいのは……」
「あぁ?俺らも優しいだろうが」
「丸井先輩うるさいあっち行って」
「理久最近反抗期か!!そんな子に育てた覚えありませんよ!!」
「丸井先輩に育てられた覚えありませんけど!!?」

丸井先輩が面倒くさいので、遠くの席に座って皆でご飯を食べ始めた。皆口々に美味しい美味しいと言ってくれて、私は少し恥ずかしくなってちびちびと麦茶を啜った。

「ようこんだけ作ったのぅ…」
「私に不可能はない」
「麦茶おかわり」
「自分でやってくださいよ…」

仁王先輩は笑顔でコップをこちらへ差し出す。私はメイドか何かか。
皆が食べ終わりそうな頃合いを見計らって、ランチボックスが入っていた鞄から別な容器を取り出す。
デザートでございます私が自分で一番楽しみにしていたものです。

「マンゴーココナッツプリン!!」

じゃーんとテーブルに出せばひと際目を輝かせる人がいる。言わずもがな丸井先輩だ。
彼は目を輝かせた後すぐに真顔になって、私をじっと見つめてくる。

「理久今すぐ俺と結婚しよう」
「いや勘弁」
「即答すんじゃねー!!」
「私の理想にかすりもしないんで…」
「本気で申し訳ないっつー顔すんな!!」

プリンを食べながら怒り狂う丸井先輩にもう一度すみませんと申し訳なさそうに謝りながらも、そっと右手を前にだしてノーセンキューとしっかり意思表示をした。
丸井先輩が旦那……?超めんどくさそう………

「フラれてやんの…」

隣で仁王先輩が腹を抱えて笑っている。机に突っ伏してぶるぶると震えていて、なかなか珍しいものを見ている気分だ。

「でも、猫宮さんと結婚する人が羨ましいね。こんなに美味しいご飯を毎日食べられるなんて」
「えー!!じゃあ私幸村先輩ん家のシェフになるー!!」
「結婚する、じゃないんだ」
「それはおこがましいっていうか」

そう言えば幸村先輩は残念だと笑った。私も残念です。

「理久!おかわり!」
「丸井先輩食うのはや!ていうかデザートっておかわりするもんじゃなくない……?」
「やけ食いじゃ」
「仁王うっせー!!」
「丸井やかましいッ!!」

丸井先輩だけ真田先輩に一喝された。ドンマイ…
キッと睨まれたので再び麦茶を啜りながら顔を横に逸らした。