魔女だって眠気には勝てない

ようやっと午後の練習も終わった頃、私は睡魔に襲われていた。
睡魔がきたとき先に帰ってもいいか伺いを立てたところ、答えはノーだった。何故だ。

「猫宮、ぐらついているが大丈夫か」
「眠いっす真田先輩。ほんと眠いです」
「後は帰るだけだ、もう少しの辛抱だぞ」
「もう少しってどのくらい〜〜〜」

眠くてぐらぐら体を揺らしていると、周りに人が集まって来る気配がした。

「理久ー!荷物あの変なとこに入れて!」

自分の荷物を掲げそう言うのは丸井先輩だ。あの先輩楽しようとしてんな……いいけど

「まあ氷帝のやつらが見てないところで……って、おい、おい理久、馬鹿ちょっ」

丸井先輩が何か言ってるけどとりあえず仕舞ってやろう。世話が焼ける先輩だぜ……なんて思いながら眠くて閉じかけている目を必死に開け荷物を掴むとぽーいと亜空間に投げ込んだ。
何やら周りが騒がしいが眠気には勝てない。ついには意識が吹っ飛んだ。誰かが支えてくれたような気もしたが、既に夢の中だ。

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「猫宮!」

真後ろに倒れ込む理久を咄嗟に支えたのは真田だ。先程まで眠そうにしていた彼女はついに意識を手離してしまったようだ。

「寝てしまったようだな」
「お、俺はどうしたらいいのだ蓮二…」
「抱えてバスに乗せたらいいだろう」
「な、いや、待て、しかし」

理久を挟んで少し面白い状況の真田と柳を見て幸村が小さく笑う。それからくるりと後ろを向けば、あの海で見せたような驚きの顔をする氷帝メンバーが居た。

「猫宮さんが寝てしまった以上、前回のようにはいかないよねぇ」
「丸井が今頼むからじゃ」
「俺のせいかよ!」

喧嘩をする仁王と丸井を横目に、幸村が跡部へと近づく。

「幸村、今のは一体……」
「猫宮さんが寝てしまったから、俺の独断で話すことにしよう」

キングとて目の前の出来事に動揺しないわけにはいかなかった。荷物が目の前で急に消えるなんてことあるわけがないからだ。

「今から言うことは決して口外しないでね」

キラリと目を光らせた幸村が、氷帝メンバーを一瞥する。彼らが小さく頷いたのほ確認すると、簡潔に説明を始めた。
当然彼らは疑いの眼差しを向けて来る。仕方のないことだろう。しかしあの幸村が言っているため、無闇に嘘だとは言い難い。

「ってことで彼女は魔女なんだけど……まあ信じてないよね」
「信じろっつーほうが無理がある。御伽噺の類じゃねーか」
「俺達も最初はそうだったんだけどね……うーんどうしようか」

幸村は、真田に抱えられスヤスヤと眠る理久を見ては小さく笑みをこぼす。

「叩き起こすしかなくね?」
「丸井、一応理久は女の子ぜよ」
「いや俺が悪いみたいな言い方してっけどお前の"一応女の子"っつーのも最低だからな」
「どうやって起こしますー?」

眠り込む理久は起きそうにもない。きっと何をしても今の彼女は起きないだろうと幸村はそう感じた。

「後日、また説明しにくるよ。彼女と一緒にね」
「モヤモヤさせたまま帰るんかい自分ら…」
「ふふ、楽しみにしておいてね」

忍足が困惑しながら引き留めるも、それをするりと躱す。有無を言わせない幸村のオーラに氷帝を始め立海までもが顔を引き攣らせた。

「はー……お前起きたら覚悟しとけよ〜」

ぐっすりと眠る理久に小声で丸井が苦言を漏らしたが、気持ちよさそうに寝息を立てるだけだった。