聞きたいこと

一氏と付き合うようになったのはいつだったか。
理由もイマイチわからない。

いつもと変わらない放課後。部活終わりに、同じ部活の男子に呼び出されると告白された。前から好きだったと。
そんな気がしていた。いや!自意識過剰とかじゃなく!アピールが物凄くわかりやすかったのだ。
でもあたしにはそんな気は一切無く、申し訳ないけどと、断った。
傷付いた顔をしていたけど、仕方ないものは仕方ない。

今彼氏が欲しいとは思っていないのが一番の要因だ。
部活して、好きな漫画読んで、友達と出かけて、そんな日常が楽しくていっぱいいっぱいだから。
まあ強いて言うなら楽な人がいいなぁ

そんなことを考えながら帰路につくため校門へ向かうと、同じクラスの一氏に会った。
一氏とは他の男子以上に仲がいいと思う。
奴がやること全てツボる。じわる。だから授業中面白いことするのはやめてほしい。

「お前も今帰りか」
「そうよ〜お疲れ一氏」
「ん」

素っ気ないこの態度が、逆に安心感をもたらしてくれる。めっちゃ楽だわぁ…
あたし一氏のこと好きなのかな…

「聞いて聞いて、さっき告られちった」
「……は?」
「青春しちゃった…」
「返事は?」
「断った!今彼氏とかいいし、そこまで知ってる相手じゃないしさぁ」
「ふーん。ほんならどんな奴やったら付き合うんや」
「ええ?うーんそうだな……………一氏みたいにこう、気合う人がいいなぁ、あと趣味合う人でしょ、あとお互いの時間尊重し合える人!」
「注文多いわアホ。………ほな付き合うか?」
「え?」

****

そうして付き合い始めたわけだけれども。
展開が予想外過ぎて未だに信じられないわけで。
いや、普通に一氏は好きだよ?なんだかんだ気も合うし振り回されるわけでもないし。
逆にだよ逆に、一氏は何であたし?女避けかなぁ…何気に人気あるもんなぁ

「オイ、人の顔黙って見てなんやねん!何か言え!」
「眠い」
「それが人の顔見ながら考えとったことなん?馬鹿にしとる?」
「滅相もない!」
「真顔やないか腹立つわ!」

通常運転のような会話をしながらあたしの部屋で、二人はテスト勉強に励む。
お互い分からないところを教え合いながら、あっという間に夕方になってしまった。
こんなに時間て早かったか……

「一氏何か飲む?新しいの持ってくるよ」
「麦茶」
「おっけ〜」


コップに麦茶を注ぎながらふと考える。

いっそ本人に聞いてみようか。
何であたしと付き合おうとか思ったのか。
そのほうが手っ取り早いよなぁ……
別に嫌だからじゃない。純粋に気になる。

****

「お待たせ〜ついでにお菓子持ってきた」
「おおきに」
「ちょっと聞いていい?」
「ん?まだ分らんとこあったんか?」
「何で一氏はあたしと付き合おうと思ったの?」
「ぶはッ!!!」
「何!?きったね!!」

一氏は手渡しした麦茶を飲んだかと思うとすぐさま噴き出した。

「お前がいきなり変なこと聞くからやないか!!」
「あたしのせいかよ…変じゃねえし……純粋な疑問だし…」

顔を真っ赤にしてひたすら文句をぶつけてくる一氏に、うるさいなぁと思いながら耳を塞いだ。
そんなに怒らなくたっていいのに〜んも〜

「っ!」

すると突然、耳を塞いでいた手を引っ張られた。
びっくりして横を見るとすぐ目の前に一氏がいた。
初めての距離に、思わず彼を凝視してしまう。
と、急に片手を引っ張られたせいでバランスを崩してしまった。
もう片手を床につく間もなくあたしは背中から倒れこんだ。
もちろん一氏も道連れである。
倒れこんだあたしの上に覆いかぶさるように落ちてきた一氏に笑うと、急に顔を上げたと思うと、しかめっ面のままキスをされた。

「なんで!?」
「うっさいわ!お前が変なこと聞くからやないか!」
「だって理由聞いてないじゃん!付き合おうと思った理由!気になったんだもん!」
「………今更そんなこと聞くっちゅーことは、俺のこと好きやなかったんか…?」
「いや好きだよ何言ってんだ馬鹿」

そう返せば、あたしの肩にぽすりと顔を落とした。

「……………よかった…」

小さくそう呟いた言葉に、またしてもハテナが飛んだ。

「ねえ一氏、別に嫌いになったとか、別れたいとかっていう話じゃなくてさ、純粋に、あたしのどこが良かったのか聞きたいのですが」
「………お前だけが何でも笑ってくれるから。他の奴がスルーしたとこも全部、お前だけ笑ってくれるんや」
「だって面白いもん一氏」

がばっと顔を上げた一氏は、それはもうこちらまで赤くなってしまうほど顔が赤く、目を泳がせていた。

「お前が告られた言うた時、ぶっちゃけ焦ったんやからなアホ!そのせいでいらんこと言うてしまったし!しかもお前OKしてまうし!なんやねん!」
「いや……付き合うなら一氏がいいかなとか思ってたから…」
「そんな素振り見せへんかったくせに!」
「それはそっちもな!?」

ふんっ、とそっぽを向かれる。
そんな態度とは反対に、倒れた体を起こしてくれた。

「…………ぶふっ」
「何笑っとんねんコラァ!」
「いや………、ふふっ………なんか…もっと好きになってしまったかもしれない…」
「意味わからへんとこでデレんな!」
「一氏顔赤!めっちゃ赤!」
「やかましいわ!!!」

ばしーんと頭を叩かれた。

****

「いつから好きだったの?」
「…………」
「ねえ、いつからあたしのこと好きだったの?」
「…………」
「そんなにシカトするならあたしも学校でシカトするね」
「いつからとか知らんねん!気付いたらや気付いたら!」
「照れ屋め〜」
「ホンマお前うっさいねん口塞ぐで!!」
「どうやって?さっきみたいに?ちゅーで?」
「ええ加減にせえよお前ーッ!!」
「ははは!!」