素敵な一日を

7月20日。
そこまで興味はないけど、自分の誕生日。今日はそんな日やった。
誕生日やからって特別なことはしない、俺は。
周りが勝手にプレゼントを押し付けてくることがとても鬱陶しくて、この日だけは学校に行きたくないなぁと年々思うようになった。

けど、今年は違う。
好きな子ができたからや。
クラスはちゃうけど、廊下で会えば立ち話をする、女テニやから自然な成り行きで一緒に帰ったりもする。
なんだかんだでお互い名前呼びまでする仲や。そいつ以外居らんねんで、俺が名前で呼んどる女の子。
今日は誰もが持ってる自分だけの「特別な日」や。
初めて自分の誕生日が楽しみだと思えた。早く今日になって、彼女から「おめでとう」の言葉が聞きたい。
表情には出さへんかったけど、少し、内心浮かれとった。

「こんな日に熱出すとかありえへん………!!」

熱に浮かされベッドの中で小さくそう叫ぶ。
だるさと寒気と頭痛でキレようにもキレれない。
誕生日なんか嫌いや……何で楽しみにしとった年に限って風邪引かなアカンねん。
……むかつく、寝よ…

枕元に置いていたスマートフォンがひっきりなしに鳴っていたが、なんか全てがむかつくので無視をした。

(………理久、何しとんのやろ。あいつからも連絡来とるやろか…)

一瞬、そんな期待が過ぎった。
けどこんな日に風邪引くくらいや、そんな上手い話があるわけがない。
そう自己解決をすると、酷く落ち込んでしまった。
情けへんなぁ……
明日、おめでとうって言ってくれるやろか。

うとうとと眠気が襲う。
特に抵抗する理由もないのでその眠気に身を委ねた。









ふと、目が覚めた。
今何時やろ、俺どのくらい寝たんかな
だいぶ熱は引いたようで、少し体が軽い。
汗で少しべたつく体を流そうと、あくびをしながらベッドから起き上がった。

「あれ、光起きちゃった」
「!?」
「えっうわあああああ!!いたッ!!」

なんや、え、何が起きたん今、びっくりしすぎてベッドから転がるように落ちてしまった。
夢か?まだ熱あるんかな俺、今理久がベッドに寄り掛かっとった気が…

「おおおおおお光大丈夫!!?!?まだ熱あるの!?ていうか今おでこぶつかっちゃったね大丈夫!?あたし石頭だからさ!!?」

理久が俺の下であたふたとしている。
夢………やないんか…

確認をするようにぺたぺたと理久の顔を両手で触る。
そんな俺がおかしかったんやろな、理久は目を大きく開いてきょどきょどと俺をガン見しとる。
おもろい顔やなぁ

「…光……だいじょ…え……怖い何………まだ熱あるのか…てかおでこ赤くなってるウケる…」
「お前も赤くなっとるわアホ」
「受け答えできた奇跡…よかった……」
「うっさいわアホ」
「でッ!」

今度は意図的に頭突きをする。ホンマに石頭やなめっちゃ痛いクソ

「ちゅーかなんで居んねん」
「光宛ての荷物預かってきたんすわー!光のお母さんが部屋上がってって!」
「風邪引いとるやつの部屋に入れるとか親失格やな」
「まあまあ!ていうか退いてくれ光さん」

そういやずっと理久の上に乗ったままやった。
……もう少しこうしてたい気持ちもあるが、理久の表情が変わらんことに地味にショック受けたから退くことにする。
俺男として見てもらえてへんのかなー……それやったらもう一生学校行きたないわ

そんな俺の気も知らんと、理久は子供のように荷物を広げる。多すぎや

「これが謙也先輩でしょ、これ白石先輩、これは小春先輩と一氏先輩から、あとこっちが…」

次々と並べられる物。
誕生日プレゼントやろうなぁ…喜ぶ気ぃになれへんわ……
活き活きと物を並べる理久に、子供みたいやなぁと思いながら相槌を打ってやる。
甥っ子相手にしとるみたいや
……まあそういうとこも好きやけど。あ、ちゃうで、甥っ子をそんな目で見たことあらへんからな、勘違いすなや

俺が何喋ってもホンマ楽しそうに聞いてくれるし、俺が喋れへんかったら一人で楽しそうに喋っとるし。
自分の話しかせぇへん他の女子とは違って、理久がする話は様々な「色」があって、聞いているだけで楽しい。
自分のクラスの話とか、今ハマってるお菓子とか。
あと自分がツボった話を一人で爆笑しながら教えにくる。大抵おもろないんやけど、一人で笑っとる理久見て笑ってしまう。
そういうとこがとても愛らしくて、ますます好きになってしまった。

「こんなもんかな!」
「どうもおおきに」
「はい!あたしからも!」

小包を手渡された。
並べられた物の中で一番小さいその小包に、期待はしなかった。
どうせとりあえずあげる的なやつやろなぁ……
そう思っていると、多分開けろということだろう。目をキラキラ輝かせた理久がこちらをじっと見つめている。

しゃーないからゆっくりその小包を開けてみた。

「……ピアス…?」

シンプルなシルバーピアス。
ヘッドには控えめな赤いスワロフスキーが埋め込まれていた。

「誕生日おめでとう、光!」

嬉しそうに満面の笑みで、今日一番聞きたかった言葉を口にする彼女に、ぎゅっと胸が締め付けられた。
このまま、お前と付き合えたら最高なんやけどな。
何て言えるわけもなく、ぶっきらぼうにお礼を言った。

「ちなみに」
「?」
「おそろい」

そう言って、理久は顔の横の髪を上げると、先程貰ったピアスと全く同じ色のピアスが耳たぶに居座っていた。

照れくさそうに「どう?どう?」と聞いてくるが、色々追い付かない。
なんやそれ、嬉しすぎる。
理久が選んでくれて、しかもおそろい買ってて付けてくれてて。

期待してええんかな。
今日は俺にとって特別な日なんやろ、少しくらい、期待してええんやろか

「……めっちゃ似合っとるで」
「へへー!」

嬉しそうにへらっと笑う彼女に、わがままを言う。

「理久、もうひとつ、欲しいもんがあんねんけど」
「お?何?今日は光の誕生日だからね!あたし頑張るよ!」
「理久が欲しい」

貰ったピアスをきゅっと握り、真剣に伝える。
最初は固まっていた理久やったけど、俺の言葉を理解すると見る見るうちに顔を真っ赤にした。

「返事は?」
「…………………………イイヨ……」

激しく目を泳がせこっちを見ない理久の顔を両手で掴む。
ちらちらと俺を見ながらも必死に顔を背けようとするが、そんなの許さへん。

「理久、ちゃんとこっち見て」

顎を引き、嫌々ながらこちらを見る理久が可愛くて今すぐにでも喰ってやりたい気持ちに駆られるが、そこはぐっと我慢する。

「今までで一番の誕生日や。おおきにな。あとこれからよろしゅう、理久」
「……………誕生日おめでとう光…よろしくおねがいしますぅ…」

そう言い終わると即座に顔を背けた理久に腹が立って、問答無用で唇に噛み付いた。

財前Happy Birthday!!(2017.7.20)