02

入学から一週間。
めぐるという友人のおかげで少しは馴染んだのではないかと理久は思う。
彼女はテニス部に入っているようで、とても活発な女の子だった。
そしてなんということだろうか、理久の隣の席である日吉若もテニス部らしい。その為めぐると日吉は顔見知りで、度々部活のことで言葉を交わしていた。
一度、めぐるに誘われテニス部を覗きに行ったが、あれはすごかった。
テニス部というのは美形しか入部できないのか?と素直に思ってしまう程美形揃いだったのだ。隣の彼も然り。
なんと恐ろしい部活か。
その流れで女テニに入らないかとめぐるに誘われたが、丁重にお断りした。運動は嫌いではないがどちらかというと理久は文化系である。
何なら部活に入るのが面倒くさい。放課後が潰れてしまうからだ。

「理久部活入らないの?」

授業の合間の休み時間、次の授業の準備を終えためぐるがくるりと体を反転させ後ろの席の理久に声をかけた。

「絶対入らなきゃだめかなぁ」
「ううん……絶対ってわけじゃないとは思うけど……あ!テニスやるのがだめならマネージャーは!?」
「無理かな…」
「ええ……」

残念そうにしゅんとするめぐるの姿は、さながら落ち込む小型犬のようだ。

「ねー日吉くんーマネージャー欲しくない?マネージャー足りてる?足りてなくない?」
「……急に何だ」

あろうことかめぐるは、一人静かに本を読んでいた日吉に声をかける。小さく溜息をつきこちらに視線を向けた日吉は大変迷惑そうに秀眉を歪ませた。

「男子のほうマネージャー出入り激しいらしいじゃん?無害な子欲しくない?ねえ?理久とかすごいぴったりだと思わない?」

何を言い出すんだこの人はと、理久はめぐるを見る目を細めた。
話を振られた日吉は、面倒そうに一度視線を落としてからちらりと理久を見る。

「いらない」
「えええええ何で!」
「出入りは激しいがマネージャーの人数はそこそこ居る。だからいらない」

ここで必要だと言われても普通に困るので、いらないと言われて安堵する。というか彼に聞くのが間違いのような気がする。
これはもはや何か部活に入ってしまったほうがいいかもしれない、そう思わざるを得ない状況だ。

「日吉くん空気読んで!ここは同意して理久をテニス部に引きずり込むんだよ!」

空気を読むのはお前だと理久は言いたかったが言葉をぐっと飲みこむ。

「嫌々マネージャーやられても困る」
「くっそ〜」

話は終わったと言わんばかりに本へ視線を戻す日吉を横目に、次はどの手で…などど不穏な独り言を漏らすめぐるに、理久は気付かれないように溜息をついた。