「待っ、待って待って待って!」
「何か問題があるのか?」
「問題ばかりでしょうが!!!」
突然何言ってんだこの坊ちゃんは!!合宿に!?いや!あたしまだバイトあるし!!帰らなきゃならないんだわ!!
それに咲良達にこのことバレたら今度こそ確実に溝ができる!!やめてくれ!!
「あたしあっちでバイトしてまして……早く帰りたいなーなんて…」
「バイトだと?じゃあお前が働くはずだった分はこちらが払っておく」
「いやいやいやいやいやいや!そういう問題でなくて!宿題とか……!」
「終わってねぇのか?」
「…………終わってます…」
なん……なんすかこの威圧感………わーさっき向日が言ってたことこれか…確かに怖いわ
「他に問題は?」
「親に言ってないし、多分心配されるはず…」
「じゃあ今すぐ確認取ってこい」
何であたし逆らえないんだろ……こっちは中身高校生なのに何で中学生に負けてるんだ……
おどおどしながら部屋を出て再び母親に電話をする。
出ないでくれと願うが、そんな願いは無情にも砕かれた。
『どうしたの?』
「いや……その……今日帰るつもりだったのですが…たまたまテニス部が合宿に来てて………その……」
『何?ハッキリいいなさいよどうしたのよ』
「いや………」
すると突然背後から伸びた手にスマートフォンを奪われた。
驚いて振り返るとそこには跡部が居たのだ。
「!?何!?」
彼は、固まるあたしから少し距離を取り何やらあたしの母親と電話をし始めたではないか。何でだ!
待って待って待ってやめてくれちょっ
「話はついだぜ。さ、部屋に戻るか」
「ついたの!?ついちゃったの!?うちの母親納得しちゃったの!?」
「うるせえ、病院だぞここは」
「すいませッ」
こえぇ〜………白石って本当優しかったんだな……今頃有難みを感じる…
というか本当に何を話したんだ……何でお母さん納得しちゃったんだ…何かこう犯罪に巻き込まれてるかもしれないとか思うところじゃないのか……
「話ついたん?」
「わかんない……」
「えぇ?」
「勝手に彼がうちの母親と話し始めちゃって…」
「快諾してもらったぜ、当然だろ」
「マジかよ……」
長い長い溜息を吐けば白石に背中をさすられる。同情してくれるならどうにか帰れるように手伝ってほしいのですが……
「白石どうにかしてくれんか……あたし帰りたい…」
「うーん………心配やから俺は跡部クンの意見に賛成やねん」
「あッ!ほら!あたし服とか全然持ってきてないし!てか合宿いつまで?」
「31日までや。今日24日やから、合宿は一週間てとこやな」
「ほら〜そんな長期間分の荷物無いし〜無理っすわ〜」
「それ俺の真似ですか?病室の窓から吊るしますよ」
「すいませんでしたこわ……」
冷えに冷え切った財前の視線が刺さる。すいませんでしたあたしが軽率でした。
「ふっ、それには及ばねえ。必要なモンは俺が買い揃えてやろう」
ドヤァアアアっとした顔で跡部がキメ顔をする。
そうだった〜〜〜〜〜あなた様がいらっしゃった〜〜〜〜〜〜どうにでもなっちゃう〜〜〜〜
いや待って待って……これ咲良達にバレたら大問題だって…咲良達だけじゃない、学校の人達にバレたら今度こそ何か起きるって……
そこに、救いの手が差し伸べられた。
「おい跡部、この子嫌がっとるし帰してやったらどうや」
「そうだぜ!……俺の不注意が原因だけどよ、合宿に女が居るっつーのは、他の学校の奴らだっていい気しねーだろ」
そう言われ彼らを見ると、忍足こそ表情は変わらないが、向日の目には敵意の色が示されていた。
……いやまあ最初は四天にも嫌われてたからいいけど、あたし嫌われ要員か。マジか。
跡部様は普通だけど………あー女に慣れてるからってことかな……?
でもこれは最初で最後のチャンスかもしれない……彼らの発言を上手く使えば帰れるだろう。
しかし一歩間違えればあたしという存在を印象付けてしまう気がするのだ。よくあったじゃんそういうこと。な。
むっずい……さじ加減むっずい………どうしよう何て言ったらいいんだ、考えろ、考えろあたし
……うわああああああ何言ったってうざい女になるのが落ちだああああああそうなりたいはずなのにプライドが許さねえええええええくっそおおおおおおお
どうせぶりっ子したところで財前にド突かれるのが目に見えてる。どうしろってんだ
「まあどっかの知らん女なら邪魔やったろうけど、理久先輩なら大丈夫やないですか?」
違う、違う財前そんな言葉を求めているんじゃない
「迷惑かけるような子ちゃうで、理久は」
ふぐぅうううう仲の良さが仇になった……!!そんな二人して庇ってくれなくても…!
青学も立海も!他の氷帝メンバー見たいけど……!!ちょっと今後の学校生活にとってリスキー過ぎるんだ…
かと言って何も言えねー!言葉が見つからねー!
「何や理久先輩黙り込んで、腹でも痛いんすか?」
「もう皆さんの判断に任せます……あたしは帰りたい…」
財前デリカシーが無い。
「安心しぃ、何かあったら俺らが守ったるから」
そんな男前な笑顔しないでほしい。
守ってほしいんじゃない、違う、あたしは帰りたいっつってんだ
「ふん、白石はともかく財前も大丈夫だっつってんだ。少なくとも学校のうるせえ女共よかマシだろう」
「俺信用無いん?」
「てめーはお人好しなとこがあるからな。財前のほうが正直な言葉だろう」
「同感っすね、部長は優しすぎるんすわ」
「えー俺が責められるん」
終わった。あたしの攻防は終わってしまった。そこまで何もしてないけど。
咲良達に何て言い訳しよう、どうしたらいいんだろう、事故ったことを全面的に出して同情を買うしかない。いやもう先に連絡してしまうか…そうしようかな…
「跡部達はああ言ってっけど、俺達は騙されねえからな」
「……ま、謙也に聞いてみれば大方わかるやろ。いつ本性が表れるか楽しみやな」
さっきにも増して嫌悪感と敵意を向けてくる二人を一瞥する。
だったらもうちょい反対してくれよ。後からごちゃごちゃ言うんじゃないよ馬鹿共が。
ごく自然と顔を顰め舌打ちをすると、二人は僅かにムッとした顔をした。
何か言いかけたようだが、それは跡部によって遮られる。
「っつーことで、猫宮、必要なモンを今から買いに行ってこい。俺様ん家のメイドと一緒にな」
「メイド〜リッチ〜〜〜〜」
もうどうにでもなーぁれ!!!!!!!!!