18朝チュン(語弊)

「ク!ソ!が!!!!!!!」

理久は激怒した。
何故ゲームをプレイし始めると急に重くもたつくのか。
タップしてんだろ!?今タップしたよな!?な!!?!?何でミスになんの!?それそっちの都合だろ!?何でタップした瞬間譜面止まるの!?しかもピーク過ぎてからサクサク動きやがってクソじゃない!!?!?

気が付けば夜中の二時である。
ずっとこの調子なのだ。頭にきて頭にきて何回もやりすぎてこんな時間だ。
しかもイライラし過ぎてフルコン出ないし。何なの
頭にきてスマートフォンをベッドに叩きつけ、部屋を出た。

自販機のある場所まで来ると、イライラが収まらないまま力強く自販機のボタンを押す。
あーあーあーあーあークソ、何なのあれ絶対ミスってなかったしちゃんとタップしてたし何でミスになんだよクソクソクソ!
がっくんかあたしは!ちくしょう!!!!

ガコン、と音を立て吐き出し口から取り出した冷たいお茶を一口飲む。
ソファの端っこに座り廊下に背を向ければ目の前には外が見える大きな窓があった。
暗くて何も見えんけどな!!
はぁと溜息をついて首だけで項垂れる。

「あ…」

背後から声がした。
誰だよと思いながらもこの声は知ってる。どれだけお前達のアニメを見たと思ってんだ特定くらいお安いもんだぜ
振り返ると気まずそうにする切原が居た。どうしたこんな時間に

「こんばんは」
「っス……」

それだけ交わしてあたしはまた窓に向き直った。うわめっちゃ気まず、スマホ持ってくればよかった。ベッドに叩きつけた恨みか?お前が動作モサモサなのが悪いと思うけどな

「あの、」

彼はいつの間にかすぐ後ろまで来ていて、しょんぼりとした顔であたしを見つめてくる。
かわいっ

「寝れないの?」
「ちょっと…」
「何か飲む?何でもいい?」
「えっ、ちょ」

彼の答えを聞く前に自販機に向かい定番のジュースを購入する。
そのジュースを彼に手渡した。

「まあ飲め飲め」
「すんません……」
「そして座れ」
「はぁ…」

困ったような顔であたしの言うことを聞く彼は、根はいい子なんだなと思った。
ただ周りの環境が、昼間の彼のようにしてしまっただけで。

「俺、その……アンタのことが気にかかって寝れなくて…」
「気にしなくていいって…傷なんてすぐ治るんだからさー」
「でも女、だし」
「うーん……まあ大多数の女の子は嫌だろうけどあたしは別に………何かヤンキーっぽくてかっこよくない?」
「いやちょっとよくわかんないっス…」
「マジかよ…」

何でわかってくんないんだ、この中二病精神をくすぐる怪我のかっこよさを。
ちょっと憧れたりしない?顔の殴られた痣とかさあ……あたしだけなんか…

「何であの時、謝ったんスか」
「…いやぁ、うーん………言い方ちょっと悪くなるんだけど、ぶっちゃけどうでもよかったんだよね。ここに居る人に嫌われようが何言われようが。一個だけ言い訳させてもらうとここに居るのは跡部…くんが無理矢理そういう流れにしたんだよマジで。まあそうだとしても一種の居候みたいなあたしが、合宿頑張ってる君達に言えることなんか何もないわけ。どう考えたってあたしは邪魔なんだから」
「俺あの時、副部長に集中力が無いって叱られてイライラしてて…カッとなって……殴るしましてや蹴っちまって……本当にすんませんでした」
「まさか蹴られるとは思わなかったけどね……笑う」
「笑い事じゃないんですけど」
「まあまあ、あたしと君と銀髪の彼が口を割らなければ誰も知りえないんだから、このまま黙っておいてね。白石にバレたら大事になりそうで面倒くさい」

そう。白石が面倒くさい。これ以上構われたくない。あんなイケメンに毎度毎度構われるこっちの身にもなってほしい、ただでさえ跡部の次くらいに好きだったんだから。
あー眠くなってきた…ぐらぐらする

「猫宮さん、は、腹立たなかったんスか?あん時」
「音ゲー中に動作がカクつくこと以上に腹立つことなんてない」
「ちょいちょい意味わかんないこと言うのやめてもらっていいっスか、話繋がらないっス」
「へへへへ……ほら…早く寝ないと明日起きれないぞ………部屋戻って寝ろ…」
「いやちょっと、アンタここで寝る気っスか!?」

ソファにもたれかかったまま重たい瞼に抵抗することなくちょっと目を瞑る。あーあーあーこりゃやばい寝る……いっか…ちょっと寝て部屋戻ろう…無理立てない

「ちょっと!部屋どこですか!部屋で寝てくださいよ!」
「…ほんの少し寝たら行く……むり動けん…」
「肩貸すんでここで寝るのやめてください!」
「めんどくさい……」
「ちょっと寝るってもうそれ寝るって!何号室ですか!」
「306……」
「すぐそこじゃねーか…」

そこで理久の意識は途切れた。

****

スマートフォンのアラームが鳴る。
一応彼らが起きる時間に設定してあるのだ。
重たい瞼を必死に上げ、ぼーっと横に居る人物を眺めた。
…………隣に…人が居る………?

「ッ!!?」

勢い良く起き上がると何故か隣で寝ている切原が居た。同じベッドで同じ布団かけて。
何でだ何でだ何でだ
人間って本当に驚くと動けないもんで、スヤスヤと寝ている彼を凝視して固まってしまった。
酔っぱらって連れ込んだみたいなこの状況何だ!?何があった!?

「ちょ、君ちょっと、起きて起きて…!!」
「んん………」

あああああああああ可愛いな!?可愛いな!!?!?!?じゃなくて!!!!!

「起床時間だよ!副部長に怒られるよ!」
「副部長!?」

副部長という単語に大きく反応した彼は勢いよく起き上がり床に落ちた。ちょっと笑った。

「大丈夫か…」
「何とか…」
「てか何で一緒に寝てるん…」
「アンタあのまま寝ちまうから、部屋まで運んだんスよ。そしたら俺の服離してくんなくて」
「大変申し訳ありませんでした」

何やってんだ自分………典型的なエロ漫画か何かか…服離さないって何だよ…

「同室の人心配するんじゃない……誰と一緒?」
「柳先輩っス」

うーーーーーわ最悪。絶対色々探られっから。もう最悪じゃん。

「今すぐ!迅速かつ冷静に!部屋に戻りなさい!」
「へーい」

切原は別段焦る様子もなく、大きな欠伸をしてふらふらとドアまで歩いていった。
怖い怖い怖い柳怖い。
どうか無事に済みますようにと心の中で祈る。

「あ」
「……、どした」
「もしその傷残ったら、俺が責任取りますよ」
「いやいらん」
「言うと思った」

それは、とてもとても可愛いらしい笑顔で。あーあんなに可愛らしく笑える彼を変えてしまった環境が物凄く恨めしい。こんなにも素敵で素直な子なのにな。

「じゃ、戻ります」
「ごめんね連れ込んで……怒られたらあたしも一緒に怒られるから…」
「それもっとまずいと思いますよ」
「だよね…」