テニス部と言えば。
中学校のテニス部もすごかったなぁなんて今更理久は思い出す。
神奈川でも随一のマンモス校だった中学では、関係のない自分も知っている程にテニス部は強豪だった。
まあテニス部の友達……なんて居なかったし、あの頃は自分とは住む世界が違う人間達なんだと結論付け、彼らの話題を振られても適当に流していた。
それにテニス部にはあまりいい思い出がなかった。今の今まで記憶の隅に追いやっていた程だ。
「理久って立海からこっち来たの!?テニスめっちゃ強いとこじゃん!」
めぐると中学の話をしている中で、理久は立海大附属に通っていたと彼女に告げると、大変興奮したように声を上げた。
「らしいね」
「らしいね!?」
「テニス部の友達って居なかったからなぁ…よく分からないんだよ」
腕を組んでうーんと理久は唸る。
「猫宮、立海出身なのか?」
「お、日吉くんが食い付いてきた」
めぐるが意外そうに目を見開いて、日吉を見やる。
話を続けようかと思った時、教師が入ってきてしまい強制終了となった。
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その日、午後の最後の授業は体育だった。男女それぞれ分かれバスケットボールをすると教師が告げる。
適当に班分けをして、自分の班の番が来るのを壁際で小さく体育座りをしボーっと待っていた。
めぐるはなかなか運動神経がいい。バスケ部に入ったとしてもレギュラーを狙えるのではないかと思える程ひょいひょいとゴールを決めていた。素晴らしい。
理久がボールの行方を目で追っていると、隣に誰かが来た気配がした。
「ん?」
「猫宮、あまりボーっとしてると危ないぞ」
壁に背を預け横目でこちらを見下しているのは日吉だった。日吉が女子側に来たことによって待機中の女子達が浮足立っているのがよく分かる。
「どした日吉くん」
「午前中の話だ。お前立海出身なんだろう、テニス部の切原という奴を知っているか?」
「…あー、居たよ。そういえばテニス部だったなぁ」
「交流はあったのか?」
「いや、特にはなかったよ」
嘘である。
ぶっちゃければ切原と関りはそこそこあったし、彼の先輩ともそこそこ交流はあった。
だが友達だったわけではないと思うのであえて言わない。
理久は思い出したのだ、テニス部に関わればろくなことがないということを。
「まあ、切原はテストが壊滅的だったっていう印象が強いね」
「容易に想像できるな」
「切原と仲良いの?」
「いや別に」
どういうことなんだと理久は聞き返したかったが、ぐっと堪える。
「まあ、お互い部長を務めたんでな。仲が良いわけではないが関りは深いよ」
「へえ」
僅かだが、日吉の表情が柔らかい。それだけ彼の中でテニスという存在は大きいのだろうと思う。仲が良いわけではないなんて言いながら、切原の話をする日吉の表情は少し嬉しそうだ。
「何か嬉しそうだね」
「気のせいだろう」
素直じゃねえ、そう理久は思って気付かれないように顔を伏せて笑った。
「猫宮」
「ん……ぅぎゃーッ!」
日吉に呼ばれ、顔を上げると目の前にボールが飛んできていた。ぶつかる、と思った瞬間横から手が伸びる。
パシン、という乾いた音を立てボールは日吉の手によって理久の目の前でピタリと止められた。
「だから言っただろう、危ないって」
「………すんません…」
ほんのり顔を青くしながら見上げれば、呆れた顔の日吉と視線が絡んだ。