34白石行動開始

ピンポーン

理久の家のインターホンが鳴る。
少し間を置いて玄関のドアが開かれれば、どちらさまですかとドアを開けた「彼」が言う。

「どちらさまって…理久ちょっ「違います」……え」

白石が理久と名前を呼ぶと、目の前の「彼」はあからさまに不機嫌な顔をした。
眉間に皺を寄せ白石を睨みつけている。

「え……いや…………え?」
「ち、が、い、ま、す、け、ど?」
「……………あ゛ッ!!もしかして弟クン!?」
「似すぎ……」
「似すぎやろ……」

弟という言葉に謙也も財前も目を見開いた。なんせ髪が少し短いことを除けばまんま理久なのである。見間違えるのも無理はない。

「すまんなぁ……お姉ちゃんから弟クンと間違えるなて言われとったんやけど、あまりにも似とって……えっと、お姉ちゃん居る?」

****

「さーてと」

ゲームやりまくったおかげでスマホの電池が無い。それにHPももう無いのでゲームはお休みにして、昨日買ってきた新刊6冊を読もうと思う。うひゃー胸アツ……
濃いグレーのスウェットを穿きTシャツというラフな格好でベッドに寝そべると、枕元に積まれていた新刊に手を伸ばした。その時だった。

「姉ちゃん!!!!!」
「うぉああああああッ!!?」

バァン!!!と勢いよくドアが開けられいつになく怒気がこもった「お姉ちゃん」が響いた。
びっくりしたー………ななななな何…
びびりながらゆっくりドアに顔を向けると大変お怒りの直哉が居りました。え何何あたし今日まだ何もしてないよ……何でそんな怒っとるの…

「な、直哉……どした…」
「姉ちゃんの友達来た」
「は?友達?」

ハテナを浮かべ体を起こすと、申し訳なさそうな表情の白石が直哉の後ろから現れた。

「……何してんだ白石…」
「白石だけやないで!俺と財前も居る!」
「いや何してんだよ……」

よっと元気よく謙也くんが声をかけてくる。財前は小さく頭を下げた。

「姉ちゃん早く髪伸ばせ!!姉ちゃんに間違えられるの今日もう三回目なんだけど!!」
「あー!白石お前間違ったんか!気をつけろって言ったのに!」
「いやこれは無理があるて…」
「全部姉ちゃんのせいだろ!クラスの女子に姉ちゃんのほうがかっこいいねって言われる俺の身にもなれ!!」
「お…お前学校でそんなこと言われてんのか……姉ちゃん初耳…」
「初めて言ったからな!!」
「ごめんて………後でハーゲンダッツ買いに行こ、ね?」
「それ何回目だよ馬鹿!!絶対だからな!!」

バタァンと大きな音を立ててドアが閉められた。ハーゲンダッツには弱い弟……可愛いやつめ。

「で、何しに来たんだあんたら。アポなしって」
「理久と話しに来たんや」
「話って…」
「あ!!」
「何謙也くん」
「これ昨日出た新刊!?理久も買ってたん!?」
「謙也くんもこれ読んでんの?」
「友達に借りて読んでんねん!ちゅーか漫画ありすぎやな!?棚に収まってへんやんか!」
「そー新しい本棚買わなきゃ……」
「新刊!読んでええ!?」
「いいよー」

謙也くんは目をキラキラさせて新刊を手を取り読み始めた。うわまぶしっ

「理久先輩、これ何すか」
「それあたしがやってる音ゲーのCD」
「聴いてもええですか?」
「いいよーはいCDプレイヤー」
「……今時…?」
「買ったCDは…!最初にCDプレイヤーで聴くって決めてるの……!ジャケットと歌詞見ながらCDセットして聴きたいから……!!一通り聴いたらパソコンに取り込んでスマホに取り込んでる」
「ふーん……」

CDプレイヤーで聴き始めると、財前は少し顔を輝かせる。お、もしかして好みだったか?お?マジ?

「ええですね、これ」
「でしょ!?いいでしょ!?どのバンドもそれぞれタイプ違ってて!でも一曲一曲完成度高いし歌上手いし!」
「先輩これ今日貸してください」
「いいとも〜!」

財前はCDを聴きながら、DVD、CDが収められた棚を漁っている。自由だなこいつらー……ていうか何しに来たんだろ……ただ遊びに来ただけなのかな…あとは白石だけ…

「で、白石は何する?」
「話しに来た言うてるやろが」
「だってあの二人見てみなさいよ、完璧遊びに来たって感じじゃん」
「あいつらは無視や無視」

すると、ドアがノックされ再び開けられた。
そこには直哉が居て、多分母親に使われたのだろう、コップと大きいペットボトルのお茶をトレイに乗せて持ってきてくれた。いい弟だ……

「ちゅーかホンマお前ら姉弟似すぎやろ……」
「ご近所さんにも言われる〜」
「理久が怒ったらあんな顔になるんかな」
「滅多に怒らないからよくわかんない」
「へー………で、本題なんやけど」
「うん」

ずずっとコップに注いだお茶を啜る。

「俺謙也が好きなわけちゃうからな」
「ゴフッ!!ゲホッ!グッ……!」
「理久きったな」
「いった…!鼻に入った……!!財前お前喋ったの!?」

そう言って財前を見やると、完全にヘッドホンをしていて見向きもしない。

「いやそれは……いいんだ、白石隠さなくていいんだよ…大丈夫あたしには分かってるから…」
「何がやアホ!何も分かってへんやないか!何で謙也やねん!」
「鈍感でアホでうるさくて人の話聞かない子って謙也くんしかいなくない?」
「「何でやねん!!」」
「うーわハモった」

漫画に熱中していた謙也くんまでもが漫画を放り投げてツッコミをしてきた。お前それあたしの本だぞ!投げんな!!

「何で俺になんねん!おかしいやろ!」
「いやまんま謙也くんじゃない?」
「理久に言われたないわ!」
「何でよ!!」
「ええか、よう聞けよ理久。俺も白石も、おまけに財前も、ノーマルや。普通に女の子が好きっちゅー話や」
「えー…………じゃあ誰だというの……見当たらないんだけど…」
「理久は、知りたいん?」

真剣な表情で問いかけてくる白石に、あたしは少し考えた。
うーん……知りたいには知りたいけど………謙也くんでないとするとますます協力しづらい…咲良と千昭以外にそこまで仲いい子いないからなぁ…どう協力したらいいかわからんし……
それに何より、白石なら一人でもいい方向へ持っていけそうな気がする。こんだけイケメンなんだもんなぁ余裕よねぇ

「いや、いいや」
「ええんかい」
「上手くいくことを祈ってる!」
「めっちゃむかつく……」
「何でだよ」

がくりと項垂れる白石に首を傾げた。なんだなんだ、あたしにどうしてほしいんだお前は。っていうか財前勝手にライブDVD見始めたんだけど……自由…すごく自由……

「はー…………まあもうすぐ教えたるわ」
「別にいいって」
「楽しみにしときや」
「いやだから、いいって」
「お、漫画だけやなくてラノベも揃っとんなぁ」
「話聞けって」

****

「お邪魔しましたー」
「なげーよ!居過ぎだよ!」
「ええ溜まり場見つけましたわ」
「溜まり場っつったぞ!財前あいつあたしの部屋溜まり場っつったぞ!!」
「なあ全部読めへんかった本あるからまた来てええ?」
「謙也くん?あたしの部屋漫喫じゃないからな?」
「お菓子持ってくるから!」
「だから漫喫じゃないって!言ってんの!」

完全にいい場所を見つけたと言わんばかりの謙也くんと財前に文句を垂れるも二人は聞く耳を持たない。謙也くんは次読む漫画をリストアップしてるし。あたし許可してないんだけどなぁ

「白石…」
「俺もまた来るわ」
「いやいやいや」
「アカンの?」
「…いや……だめなわけじゃないけど…」
「ならええやん。次はちゃんと連絡するし」
「当たり前じゃ……アポなしの時は入れないからね」
「分かっとる分かっとる」
「頭を撫でるな!」
「ほなこっち?」
「抱き締めんな!家の前じゃ!」

ごく自然と人を抱き締める白石の横っ腹を叩く。それでもぎゅうぎゅうと抱き締めてくる白石に大層呆れた。お前好きな子どうした。いや別にいいんだけど

「理久はこうされるん何とも思わんの?」
「白石いい匂いするなぁ」
「それは理久もやない?めっちゃええ匂いする」
「嗅ぐな嗅ぐなくすぐったい」

首筋に鼻を寄せすんすんと匂いを嗅ぐ白石がくすぐったくて体をのけ反る、が、しっかり腰を掴まれていて離れれない。なんなの〜スキンシップ激しいこのイケメンなんなの〜さすがに恥ずかしいて……

「白石……!離れろ……ッ!」
「んー?何?」
「ぎゃあああああ耳元で喋んな!!!」
「お、理久顔真っ赤!レアやな」
「お前えええええええ」

****

「俺らは何を見せつけられとんのやろ」
「謙也さんとは無縁のリア充っちゅーやつですね」
「無縁やないわ!!……多分」
「多分(笑)」
「笑うなや!!」