一日目を無事終え、問題の二日目だ。
今日は氷帝御一行が来るので朝から緊張感が半端ない。
そわそわしながら昨日と同じように衣装に着替え、文化祭は始まった。
忙しさに氷帝が来ることもすっかり忘れて教室の中をバタバタとしていた時、廊下が何やら騒がしくなった。
何だ何だと白石と目を合わせ首を傾げる。
ドアに一番近かったあたしが廊下に顔を出してみると、騒ぎの元凶である集団が目に入った。
「あー!!居た!!猫宮ー!!」
「うっさいなと思ったらあんたらか!!」
あたしを見つけるなり向日くんが大声でこちらを指さす。
「うわ!お前写真より気合入ってんな!?」
「あれは衣装合わせだったからねー。久しぶりだね」
「おう久しぶり!元気そうだな!」
「そっちもな」
「よう猫宮」
「跡部くんいらっしゃい」
向日の背後から隠しきれてないオーラを纏った跡部が声をかけてきた。さっきの騒ぎは半分が跡部のせいだな…どこ行っても人気だなお前は……
「似合ってるじゃねーの、アーン?」
「跡部くんも似合うと思うよ」
「当たり前だろ」
そう言ってフッと笑う跡部に苦笑いをする。よく分かってんじゃないの。
「おーい理久、跡部クン達案内してきたらどうや?」
背後から聞こえた声に振り返れば白石が居た。白石を見た氷帝の面々は久しぶりーと声を掛け合っている。クラスのほうは大丈夫だからと、氷帝御一行の案内を勧められる。えーあたしがするの……
「白石のほうがよくないの?」
「ついでにそのままクラスの宣伝してきぃ」
「そういうことか……」
白石に背中を押されとりあえず跡部達を引き連れてクラスを後にした。
行く直前渡された看板を首から下げて。
クレープ屋やお好み焼き屋、たこ焼き屋。定番の店がずらりと並び、向日と宍戸がうるさい。宍戸お前そんなんだったか?騒ぐやつ激ダサだぜとか言う感じじゃなかったっけ?
あれが食べたいこれが食べたいと騒いでは跡部に集っている。跡部よ、お前はそれでいいのか。ついでにあたしもクレープを買ってもらった、ラッキー
「先輩達がうるさくてすみません…」
「いやいや……文化祭は騒がしくなくっちゃね…」
申し訳なさそうに鳳が声をかけてくる。でかくて首が痛くなっちゃうよ
「にしても本当に猫宮さん似合ってますね、さっきから写真撮られてばっかりですし」
「へへへありがとう〜照れるね」
「男より似合うってどうかと思いますけどね…」
「日吉!」
「男より似合ってるなんて世界一の褒め言葉だね!」
「変な人…」
「日吉!失礼だろ!」
日吉は日吉のまんまだね!財前とは違った生意気さですわ〜
ぷりぷりと怒る鳳を宥めながらあちらこちらで騒ぐ氷帝の三年に視線を移す。お元気ですね〜
猫宮次あっち、猫宮次こっちと向日に引っ張られあらゆる出店へ連れて行かれる。きっと今あたしの顔は酷いことになっているに違いない。元気良過ぎるんだって……
「すまんなぁ岳人がうるさくて」
「疲れた………すげえ疲れた……」
「後は適当に俺らで見て回るから、クラス戻ってええよ」
「えー!猫宮もう戻るのかよ!!」
両手に食べ物を抱えもぐもぐしながら声を上げる向日を見て、あたしと忍足(眼鏡)は呆れたように空笑いをした。子供か。
「何かあったらまたクラス来てくれればいいから」
「えーーーー」
「あ、そういや美男美女コンテストに白石出るから見てって」
「お前も美男枠で出たらよくね?」
「あー!その手があったか!ちくしょう!」
「とりあえず写真撮ろうぜ!青学と立海の奴らにも自慢する!」
「なんだそれ」
クラスに戻る前にと、あたしを中心に氷帝に囲まれながら写真を撮る。
それを向日は嬉しそうに見てサンキューとお礼を言った。くそ可愛い。
じゃあまた、と言ってあたしはクラスへ戻った。時計を見てみるともうお昼は過ぎている。とりあえずクレープ食ったし昼飯はいいか。
****
「理久、どうやった?」
「疲れた……けどめっちゃ楽しそうだったよ」
「そら良かったな」
「そういや白石美男美女コンテストもうすぐじゃない?」
「え、もうそんな時間か?……あー嫌やなー………」
「頑張れよ!」
「あ、理久絶対見に来てや」
「白石の一人勝ちでしょ?分かりきってるって」
「そういう問題ちゃうねん、絶対来い」
「えー………じゃあ氷帝の皆と見てるね」
「おん」
いつになく真剣な表情の白石に首を傾げたが、まさかあんなことになるなんて思っても居なかった。
****
「理久、見に行くで」
「え、謙也くん抜けて大丈夫なの?」
「許可は貰ってるから大丈夫や」
「あそう……」
衣装に制帽を被ったまま美男美女コンテストが行われるステージまで二人で歩く。
忙しさにかまけて行けませんでしたーっていうのを期待していたのに、咲良と千昭にも行ってこいと言われ行くしかなかった。そんな面白いことなんてないだろうに……ていうか咲良達は見なくていいのか?
ステージにつくと見事に氷帝御一行に加え四天宝寺テニス部も集まっていた。
「まさか白石が出るとは思わんかったわ」
「えっ」
まさかの謙也くんの一言に思わず声が出る。
「最初は断っとったんやで?それが何でか急に出る言うてなぁ」
「何があった……」
「さあ……」
そんなことを話しているとコンテストが始まった。
美男美女コンテストというだけあって見目麗しい人達が勢揃いである。その中でもやはり白石は際立っていて、会場のあちこちから白石を呼ぶ声が聞こえた。
うーん………やっぱり白石があたしを好きだというのは夢なんじゃないか?あれから普通だし……白石は寝言でも言っていたんじゃないだろうかとさえ思えてくる。
出場者はそれぞれ一言スピーチ的なものをするらしい。で、その後投票が行われて後夜祭前に結果発表するらしい。
投票お願いしますだの皆同じような言葉を言う中、最後は白石だ。
何を言うのか我々はわくわくしながら白石を見守る。
「ほな最後、白石」
「おん。理久!」
「えっ」
何故か名前を呼ばれた。腕組みをしてぼけーっと白石を見ていたもので、急に名前を呼ばれると体がびくりと跳ねた。え、聞き間違い?
「………理久、呼ばれとるで」
「聞き間違いじゃなかった……あいつ何考えてんの…」
謙也くんとこそこそ話しているともう一度名前を呼ばれる。
よくわからないまま手を上げてみると、こっちへ来いと手招きされた。
はああああああああああ!!?そのステージに来いってか!?何で!?馬鹿じゃないの!!?
「猫宮呼ばれてんぞ、早く行ってこいって」
「面白がってんだろ!宍戸くん面白がってんだろその顔!」
「時間無いんやからはよ行け」
「財前背中を押すな!!!」
キョロキョロと周りを見ながら小走りでステージ下まで行くと、あろうことかステージに上がれと言われた。これには司会の生徒も困惑である。あたしも困惑だ。
「お前は何をしでかす気だ……」
「こないだの返事聞こう思てな」
「………………この間……………いやいやいやいやまさか……」
白石はマイクを持ちあたしと向き合う。
「俺理久が好きや。俺と付き合ってくれ」
制止する前に言われてしまった。マイクで。騒がしかった会場は一瞬で静かになり、あたしは息が止まりそうになった。
うああああああああああああああなんてこった……!!!!!
だらだらと嫌な汗が流れる。何で!?何でこのタイミング………そういや最初は出るの嫌がってたって言ってたよな……おいまさかこの公開告白のために出場したというのかお前は……!!?
激しく動揺しながら白石を見やると、何とも勝ち誇ったような笑みをされた。
確信犯か……!!!!わざと断れない状況を作るためにこんな地獄のようなタイミングで……!!?
ここで断れば、あたしは針のむしろだ。明日あたしは死ぬだろうな。やってくれたな白石。
「返事は?」
余裕の笑みでそう尋ねてくる白石に、目が泳ぐ。
「…………あたしで良ければ……よろしくお願いします…」
くっそおおおおおおおおお恥ずかしいいいいいいいい……!!!!
あたしの一言に会場が沸いた。
指笛が飛び交い完全に祝福モードだ。今何の時間だっけ?と頭を抱えていると、被っていた制帽を白石に取られる。
「おおきにな、理久」
「後で覚えとけよ白石」
「文句なら後からなんぼでも聞いたるわ」
「え、ちょ、しら…!」
白石は奪った制帽であたしの口元を会場側から見えないように遮る。嫌な予感しかせず逃げようと体を後ろへ引くもすかさず白石に腰を掴まれさっきよりも距離が近づいてしまった。そしてそのまま顔を近づけられ、押し付けるようにキスをされる。
観客からは悲鳴が上がり、ステージ上に居た出場者達には丸見えだったためこちらはこちらで騒いでいた。
唇を離し制帽を再び被せられる。
「これからもよろしゅうな、理久」
そう言って笑う白石に何も言えなくなって、恥ずかしさのあまり片手で顔を覆うことしかできなかった。
一生白石には勝てないんだろうな。