38好きだから

公開処刑ならぬ公開告白をされた後はそれはそれはすごかった。
白石は満足気にあたしの手を引いてステージを下り謙也くん達が居る場所まで向かう。その間の周りの歓声、悲鳴、悲鳴。プラス嫉妬の視線が突き刺さる。今あたし何回死んだかな??

「白石お前なんちゅーことしとんねん……」

謙也くんが呆れたように白石にそう言うと、白石は笑ってサムズアップをする。

「やるじゃねーか白石」
「おー跡部クンにそう言ってもらえると嬉しいわぁ」
「猫宮ー、大丈夫かー?」

跡部と白石が話し込む横で片手で顔を覆っていると、向日がこそーっと声をかけてきた。可愛いなお前は。

「だいじょばない……しにたい…はずかしすぎるしにたい……」
「うわ!猫宮顔真っ赤!!」
「しにたい………」

げらげら向日に笑われながらますます項垂れる。穴があったら入りたいとはこのことか、今身をもって体験した。昔の人はよくもこんな的を得たことわざを作ったものだと感心した。

「理久先輩こっち向いてや」
「その構えてるスマホしまうんだったらな……!!」
「これスマホやないですよ、かまぼこについてくる板ですよ」
「何でそんなもん持ってんだよおかしいだろ」

スマートフォンを構え人の顔を撮ろうとする財前の足を踏みつけたが、倍返しされてしまった。すごく痛い。

「よっしゃ謙也、ちょお理久と話してくるから後よろしく頼むわ」
「は!?……あー………まあ、せやな。理久大変なことになっとるしな」
「早めに戻るわ」

あたしの意見も聞かず再び手を引かれ会場を後にする。
後ろから「猫宮がんばれー!」なんて向日の声が聞こえたが、何を頑張れというんだそんなこと言うなら代わってくれ。あっ白石×向日……?新しい扉開きそう………身長差萌える……

****

あの日、白石と出会った日に話をした空き教室へと入る。
はああああと溜息をついて椅子に座った。そんなあたしの隣に椅子を並べて白石も座る。

「今の気分は?」
「それをあたしに聞くのか……」

そう言うと、隣で小さく笑う気配がした。

「……理久は、俺と付き合うの嫌か?」

声色が変わった。申し訳なさそうな声でそう言うので思わず白石を見ると、眉尻を下げ悲しそうにこちらを見る白石と目が合う。

「あたしさ、白石に聞きたいことあるんだけど」
「おん」
「別にね、白石が嫌いだからじゃなくて、純粋な疑問なんだけど。すごい失礼なこと言うけどごめんね」
「……?」
「白石のその好意ってさ、あたしが異質な存在だから特別視してるせいで、あたしを好きだって勘違いしてるんじゃないかなって思っちゃうんだよ」

申し訳なさそうにそう告げると、白石は悲しそうな顔をした。その表情に胸がズキリと痛む。けど今ハッキリさせておかないと、小さな歪みは大きな歪みへ成長するだろう。

「ごめんね白石。けど白石は人気者だし大変モテるし、そもそもあたしは白石と同じ世界に居るはずがなかった存在だから、釣り合うわけないし。だから何であたし?って思っちゃうんだよ」

もし付き合ったとしても、この先本当のヒロインが現れた時、白石はその子の所へ行ってしまうんじゃないかと考えてしまう。あー想像したら泣けてきた、くそ、何でこんなことになった。同じ世界に来れただけでも幸せだというのに関りまで持ってしまって。ただモブの一人として存在できるだけでも良かったのになぁ

「理久」

名前を呼ばれると、太股の上で忙しなく動いていた手を握られる。あたしよりも大きなその手はすっぽりとあたしの手を包み込み、優しく力が込められた。

「急に現れたように、もしかしたら急に居なくなるかもしれない。そんな曖昧で不安定な存在なんだよ。明日には居なくなってるかもしれないようなあたしが、白石の貴重な時間を奪うわけにはいかないよ」

彼の手を握り返して、目を見つめる。自分の視界が揺らいだのが分かった。ぐっと涙を堪えれば、包帯を巻いた白石の左手が伸びて来る。その手を目で追っていると、指で思い切り額を弾かれた。

「ッッッッてぇ!!!?!?」
「アホ理久ー」
「ハァ!?」
「何や心配したわー異性として見てへんから無理とか言われるんかと思った」
「おい白石……今真剣な話を…」
「アホやな理久は」

アホアホって……!
ギッと白石を睨むと、何故か嬉しそうに笑われた。

「違う世界の人間だからとか、そんなの関係ないねん。理久と一緒に過ごしてきて純粋に好きになったんよ。理久の子供っぽいところとかうっさいところとか気遣わへんくていいところとか」
「えっ……褒められてる気がしない…」
「とにかくな、楽しいんよ、理久と居ると。ずっと一緒に居りたい思うし、独り占めしたくてしゃーない。それにな、理久にとっての一番は俺でありたいとも思うんよ。好きで好きで絶対断られたなくてああやって皆の前で告白して。必死やろ?それくらいお前が好きなんや、理久。消えるかもしれんとか関係あらへん。俺は理久がええんよ」

そんな優しい声で言うものだから。

「……白石女見る目ないなぁ」
「たまーに「何で好きになってしもたんやろ」って思うことはあったけどな、アホ過ぎて」
「白石??????」
「ま、そういうとこも含めて好きっちゅーことや。よっしゃ、改めて言うで。……理久が好きや、俺と付き合ってくれるか?」

真っすぐ見つめられて、その真剣な眼差しにへらりと笑って頷いた。
あたしも白石が好きだよと言葉を添えて。
白石は嬉しそうに笑って、座っているあたしの膝に向かい合うように跨った。

待って???????????

「いやいやいやいやおいちょっと」
「あー良かった、おおきにな理久」
「いやそれはいいんだけどちょっと、ちょっとちょっと、何してんだお前」
「今日もええ匂いするなぁ理久」

ぎゅう、と首に抱き着く白石の横っ腹をつつく。いやいやいやこの図おかしいでしょ、やるとするなら逆でしょうよ。

「話聞け?白石?」
「ん、好きやで」
「あれぇ?日本語通じないんかな」
「このまま二人で帰るか」
「謙也くんにキレられるよ」
「あー………謙也やからええやろ」
「謙也くん泣いちゃう…」
「大丈夫大丈夫」
「白石が言うことではない…」

いつまでこの状態なのだろうか、段々目が死んでいく理久と比べて白石は大変上機嫌だ。すんすんと鼻を鳴らしながらあたしの匂いを堪能する白石に、付き合ったのは間違いだったかもしれないとほんの少しでも思ってしまった自分は悪くない。

「理久」
「何」
「出会ってくれておおきに」
「………………こちらこそ、ありがとう」