07

日吉の背に隠れるも虚しく切原に捕まってしまった。
両肩を掴まれガクガクと勢いよく前後に揺られる。首がもげたらどうしてくれる。

「猫宮〜〜〜〜!!!何でお前勝手に氷帝に行ってんだよ〜〜〜!!」

何故お前の許可が必要なのだと理久は抗議したかったが、継続して肩を揺すられているため声にすることができないでいた。

「入学式でお前が居なかった時の俺の絶望が!分かるか!なあ!何とか言えよ!!」

お前のせいで声が出せないでいるんだ、理久は内心舌打ちをしたが面倒くさいのでそのまま続けて黙り込む。

「切原、お前が高速で肩を揺さぶっているせいで猫宮が喋れないんだ」

見かねた日吉が切原を引き剥がす。いらんことしてくれよってと思うものの、あのままだと確実に吐いていたような気がしたので一応感謝しておこう。

「猫宮!!」

さあ答えを聞かせろと潤んだ目で切原が訴える。

「どちら様ですか」
「お前ー!!!」

再び両肩を掴まれ揺さぶられる。エンドレスである。
日吉が一層迷惑そうな顔をしながら切原を引き剥がし、理久を視線で諭した。『真面目にやれ』と言われているのが分かり、理久はちょっとだけしゅんとなる。

「……親の転勤だよ。仕方ないじゃん」
「仕方ないかもしんねーけど!!何で一言もねーの!?」
「あれ?言わなかったっけ?」
「きょとんとしてんじゃねーよ聞いてねーよ!!」

惑わされなかったか。切原も少しは賢くなったのかもしれないと理久は感心した。

「お前が……お前が居なかったら………これから高校三年間俺の勉強面倒見てくれる奴いねえんだよ!!」
「知ったこっちゃねえんだけど!!?!?」

そんなことだろうとは思ったが、ここまでハッキリ言われるとは思わなかった。さっきの賢くなったという認識は間違いだったようだ。

「あんたの面倒見る人他にもいたでしょう!上河と田島は!?」
「高校でまで面倒見てられるかって断られた」
「同意見ですね」
「もうお前しかいねえんだよ猫宮〜!!今からでも遅くないから立海戻ってこい!!」
「何が遅くないだよもう手遅れだわ。入学したんだわ」

それでも駄々をこねる切原を見かねて、理久は必殺技を発動する。
目の前で騒ぐ切原から視線を外し、後ろでこちらを窺っている彼らに目を向けた。幸村達だ。
しかし幸村や柳では効果が薄いので、百発百中で発動可能な人物をじっと見つめた。
真田である。
理久と目が合ってしまった真田は面白い程に視線を泳がせ、居心地悪そうに眉間に皺を寄せた。
切原をどうにかしてくれと、立海に居た頃から使う理久の奥義だ。

「真田先輩」

もはや呼んでしまう。こんな茶番に付き合っている暇はない、理久はさっさと帰りたいのだ。

「おたくの後輩、何とかしてください」

理久は目を細め、棘を含んだその言葉を真田含め立海先輩陣へと投げる。
何なら日吉も手助けしてくれと彼に視線を移せば、彼は僅かに首を横に振るだけだった。