07. 逃げられない
「…ッ」
「僕が油断してたから悪いんだ。清光は悪くない!」
「黙れ。部隊長はこいつだ。お前も俺に逆らうのか?」
「やめろ、安定。全部、俺のせいだから」
ジンジンとした痛みと共に、口の中に血の味が広がる。今の俺は、この目の前にいる男の人形だ。
殴られた顔や蹴られた腹よりも、俺を庇おうと前に立つ安定の姿や、短刀達の押し殺した泣き声の方が痛い。
「…主、夕餉の準備が終わったよ。部屋で食べる?」
「ああ、そうだな。お前らはそこ、綺麗にしておけ」
俺と安定の返事を確認する前に、男は一振り目の俺とこの場を去って行った。
「清光…」
「さっさと片付けちゃおー」
「…うん。」
今回も、俺と安定は理不尽な暴力を投げつけられていた。
今の主であるあの男は、二振り目の俺と安定を引き取ってから今まで、幾度もストレスの捌け口にしてきた。
「せっかく、逃げられたと思ったのに、ね。」
月の給与はしっかり与えられているし、傷が癒えた状態で無いと外に出されないからか、表から見たこの本丸は真っ白だ。
それに、あの男にとって二振り目である俺と安定以外の刀には、普通に接している。
ブラック本丸から俺と安定を引き取っただけでも政府や他の審神者から信頼されていると言うのに、誰がこの現状を予想出来るだろうか。
こう、今置かれている現状を並べて見ると、改めて絶望的だな、なんて思う。
「明日、約束あるんだろ?」
「え?…うん。」
気付けば床は綺麗に拭き上がっていた。
綺麗な床は此処で悪いものなんてなかった≠ニ主張している気がして、寒気がする。側から見れば、出陣先で怪我を負ってしまった&翌ノしか見えないだろう。
「雑巾片付けとくから手入れ部屋行ってきなよ」
「え…いいよ。お前だってボロボロじゃん」
隠された真実≠表すように立つ安定はボロボロだった。恐らく、安定の目に映る俺も同じだろう。
「僕はいいの。早く、早く」
安定に背中を押され、俺は渋々と手入れ部屋へ向かう。
道中、現状の解決策を絞り出して見たが…やっぱり絶望的だった。
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