不満×試験×仕切り直し
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その後、ゴンが魚を捌いている際に、忍者のような奴が寿司の作り方を全て口にしたせいで、他の受験者にもレシピがバレてしまった。
そのせいで、洞察力での試験は撤廃になって、とうとう味だけで審査するようになった。ここは一捻りしないと合格は貰えないな。

「……よし。」

「何やってるのロウ?」

ガスバーナーでネタを炙っているとゴンは不思議そうに俺を見て言う。

「俺が食べた物には炙りサーモンなるものがあった。それの真似をしているんだ。もはや普通に寿司を握ったところで合格できるなんて考えてないからな」

「へぇ〜、そういうのもあるんだ!」

それにガスバーナーが用意されているということは、炙りを見越して用意してあるに違いないからな。ただし、どの程度炙るべきなのかは知らない。



俺はメンチの納得するように如何なることにも気をつけて寿司を作りメンチの元へ持って行った。

「どうだ!炙ってみたぞ!」

「ふ〜ん炙りね。………でも、握りがあまくて、シャリが崩れる。駄目ね」


一言で終わり俺の寿司は駄目だと言われた。結構自信あったけどシャリが崩れやすかったのか…。もう、やらなくていいや。これは俗に言う無理ゲーと言うやつで、やるだけ無駄骨だ。

俺の後から聞こえてくる声も「握りが硬くて口の中でぼぐれない」とか「握りに体温が移ってる」とかプロじゃないと、どうにもならないレベルの要求をしていてバカらしくなってきた。

「お前…よく諦めないな」

「俺、絶対ハンターになるんだ!!」

まぁ、俺みたいに強制されて試験受けてるわけじゃなく、目的あって受けてるんだから心意気も違うよな。俺もゴンの姿勢に少しは見習わなければならないな。寿司は諦めるけど。

ゴンはまたメンチの所に新しい寿司を手にして走って行く。キッチンに腰を掛けるとキルアが歩いてくる。

「あー、やっぱりロウも諦めたんだ」

「あれじゃあプロじゃないと無理そうだし諦めた」

今も多くの受験者がメンチの所に寿司を持って群がっている。その全てが駄目だと言われていて、料理にラッキーパンチはないのだとわかる光景だ。俺とキルアをそんな光景を眺めて馬鹿馬鹿しく思ってしまう。さてと、コエンマに言う言い訳でも考えておくか。



「わりぃ!腹いっぱいになっちった!」

案の定、一人も合格者は出ないまま試験が終わる。メンチからの二次試験終了の合図は周りの困惑を与えた。まぁ、俺はこうなるのが目に見えてたけど。
でも、流石に理不尽すぎて、暴動とか起こるじゃねぇか?試験官は二人共実力者なのは分かるから大丈夫だとは思ってるけどさ。

「納得いかねぇな。とてもハイそうですかと帰る気にはならねぇな」

メンチの自分勝手な試験に、流石にイラついたのか血管を浮き出しながら言う受験者。そりゃ、そんな理不尽な理由で不合格にされたら普通は怒るよな。でも、あんまり喧嘩売らない方が自分の身の為だと思うけどな。

「俺が目指しているのはコックでもグルメでもねぇ!ハンターだ!しかも賞金首ハンター志望だぜ!美食ハンターごときに合否を決められたくねーな!」

メンチもブハラも、腕はかなり立つと思んだがな。少なからず修行前の俺なら軽く倒されているレベルの実力者だ。そのくらい二人から放たれるオーラは他の者とは違う。あのヒソカとかサトツって奴も同じでオーラを扱える人間は、一線を画しているんだよ。

それに、美食ハンターと言っても珍味とかを求めるならば、当然のこと危険を伴うだろう。ハンターが何かは分からないが、基本的には戦闘は前提条件なのではと思ってしまう。

「それは残念だったわね。今回のテストでは試験官運がなかったってことよ。また来年がんばればー?」

自分の方が幾ら強いからと言って、これ以上煽ってやんなよ。なんだか、あのデブが今にもガチ切れしそうなんだが。まぁ、乱闘になれば、この世界の戦闘水準の参考にできるからありがたいっちゃありがたいけど。

「なんだとぉおお!!!」

255番がメンチに向かって殴り込みに行くが、確実に返り討ちに合うだろうなブハラの方に。視線をブハラに移すと、ブハラの平手が255番に直撃した。あれは痛いなぁ…。見事に吹っ飛ぶ255番を皆も見て言葉を無くしちゃってるし。

「賞金首ハンター?笑わせるわ!たかが美食ハンターごときに一撃でのされちゃって。どのハンターを目指すとか関係ないのよ。ハンターたる者誰だって武術の心得があって当然!」

そこでメンチはハンターとしての心意気をビシッと決める。カッコイイこと言ってるけど、メンチも我侭な女だよなぁ。



っ!?なんだこの気配…。並じゃねぇ使い手が近づいてきてやがる…。それも空中から…。このタイミングで接近するということは試験の関係者か?

「ゴン、少し外の様子を見てくる」

「え、どうして?って、ロウ待ってよ!」

建物の外に出れば、俺は空を見上げる。少し離れた所に飛行船あり、此方に近づいてきていた。あの中に実力者が居る。相当強いぞ。

「あれってハンター協会の飛行船じゃない?」

ゴンはそう言う所をみると飛行船に、それを暗示するものが提示されているのか。この世界の文字すら読めないから困ったぜ。

「通りで、強い気配を感じるわけか」

まぁ、確かに強い気配だが魔界には更に強い奴が結構いやがったから衝撃が少ない。



「それにしても合格者0はちと厳し過ぎやせんか?」

飛行船から聞こえてきた老人の声に、建物からメンチ達がぞろぞろと外に出てきた。その瞬間、飛行船から老人が飛び降りて見事に着地する。
大きなクレーターを作り着陸した老人を目に、受験者の殆どが困惑を隠せずにいた。そりゃ、オーラを扱えなきゃ足の骨が砕けちまうからな。



聞けば、老人はネテロというハンター協会の最高責任者。すなわちハンター協会の会長で、今の寿司試験を取り消しメンチにも実演してもらう形の試験をする事になり、マフタツ山に向かう事になった。それまでの移動手段は、ネテロが乗っていた飛行船で移動することになる。

「俺、飛行船乗ったの初めてだぁ」

窓から色んな景色を眺めるゴンはそう言う。言われてみれば、俺も乗った事ない。というか乗ってたとしても記憶にないんだな。

「結構、良い眺めなんだなー」

「ねぇロウは何処から来たの?」

「怖い怖い魔界から!」

ふざけて言ってみれば後ろからキルアが現れて何言ってんだみたいな顔をされた。
たしかに、魔界から来たわけではないけれどもさ、魔界には少しの間は滞在してたわけだし。

「……本当は記憶がなくて分からないんだけどな」

「はぁ!?記憶ないのにハンター試験受けてるのかよ!?」

「うっせーな。一次試験の時も言ったろ。俺には拒否権がなかったんだよ。記憶喪失で街中にいたら、修行させられて気がついたらハンター試験受けろって言われたんだよ!」

俺の言うことにゴンもキルアも哀れみの視線を送っていることに気がついて、もう黙ることにした。これなら、自分から受けって言ったほうが格好がついたよな。
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