蜘蛛鷲×卵×大ジャンプ
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飛行船がマフタツ山に到着すれば、そこにみんな降りる。大きな谷があるが、この谷がこれからやる試験に関係あんのか?

「試験内容は"ゆで卵"」

「ゆ、ゆで卵ぉお!?」

メンチの言葉に辺りは騒めく。急にレベルが落ちたと思ったから動揺しているんだろうな。

確かにフツーのゆで卵だったら拍子抜けも良いとこだぞ。
だけど、わざわざこんな所に来たということはフツーじゃないってことだよな。

「じゃ、一度しか見せないから、よく見ておくのよ!」

メンチがそう言った瞬間に、彼女は崖から飛び降りていった。

急いで前の方に行けば谷には糸のような物が張ってあり卵が糸に括り付けられているのが目に見えた。

「なるほど、アレを獲ればいいのか」

メンチは糸に掴まると、その糸についているクモワシの卵を一つ手にとって崖を上がってきた。

それを見せたメンチは注意事項として落ちたら、谷の底の川は激流で流されたらノンストップで数十キロ先まで流されるらしい。

でも、料理の腕前を試されないだけ個人的にはホッとする。

「こういうのを待ってたんだよね!」

ゴンも同じ事を思っていたようでウキウキした弾んだ声で言えば、最初にゴンが躊躇いなく飛び降りた。
続けて俺も飛び込めば糸に掴まって辺りを見渡す。

「こうやって見れば結構な数の卵があるんだな。今ここで全部の卵を落としたらみんな不合格か」

「おい、まさかだとは思うが馬鹿な真似はするなよ」

冗談混じりで言えばクラピカに怒られる。でも、目がマジだった所みると俺ならやりかねないと思ってるんだろうな。

俺は卵を一つ取りズボンのポケットに入れる。そろそろ上がるか。ゴンも無事に登りきったし俺も安心だ。

「たっ、助けてくれぇええ!!」

「………うむ」

この谷の深さなら1人くらい抱えてもジャンプで上がってこれんだろ。メンチさんは死にはしないって言ってたけど、殆どの奴はここから落ちれば大怪我間違いなしだしな。

俺は掴んでいた糸の反動を使って、逆に下まで飛び下りた。

「よっ!」

「……ぇ?」

やっぱり、普通の人間なら驚いちゃうよな。俺も、修行前にこんな事されたらビビったと思うし。いかに蔵馬の修行を受けた後の自分がヤバイのかが理解できる。

俺は男を抱きかかえると、足場に出来そうな岩を見つけて着陸した。実際に降りてみると結構な深さなんだな。

「おーーい!ロウ大丈夫ーー!?」

上を見れば小さすぎて姿は確認できないけどゴンが俺の安否を確認するような声が届いた。

「おぉー!!今上がるぜーー!!」

返事が届いたかは知らないけど、ヌレーメ湿原の時にレオリオの悲鳴を聞き取ったゴンの耳なら俺の声を届いているだろう。

さて、この深さなら見積もって200mくらい跳べば良いのか?こんな大ジャンプなんて数える程しか跳んだことがないけど。

「じゃ、ちと目を瞑ってろ」

「………」

「って、てめぇ!気絶してんじゃねぇかよ!」

そっちの方が楽かもしれないけどさ…。本当に度胸ねーな。取り敢えずは十分に跳べる様に足だけ獣人にフォルムチェンジするか。

ズボン履いてるから他の受験者達にはバレないだろ。これで足に妖気を込めて跳べば……。

「ふっ!!」

思い切り跳べば反動で足場にしてた岩がバラバラに砕けたみたいでデカイ音を立てた。

問題なのは、足場が崩れたせいで力加減ミスって、余計に力を入れちまったことだ。やっぱり少し跳び過ぎちまったじゃねぇか!?

秒で上まで跳んだが、跳び過ぎてメンチ達を見下ろせる高さまで跳んでしまい全員が完全に俺を化け物みたいな目で見てやがる。

地上に着地すれば、馬鹿でかい音を立てて足場となった場所を中心にクレーターが出来上がった。やべぇ、俺もちょっと前までは常人レベルだったから、今やったことがヤバイのは分かる……。

「あ、あはは!!メ、メンチさんクモワシの卵なら手に入ったよ!!」

「あんた、今300m近く跳ばなかった……?」

「気のせいでは?そう!そうだ!俺はマジシャンだから皆に幻覚を見せたんだよ!!」

「そ、そう」

なんか騒ついてるが、皆はマジックだと思ってくれた。集団催眠って奴だ。普通はありえないからな。次からは力加減は気をつけないとな。

「……まぁ、いいわ!これにてタイムアップよ!!」

「あ、待ってくれたんだ」

「まさか、あんたが受験者を助けに自ら跳び降りるって思わなかったからじゃない!気になってタイムアップするの忘れたのよ!」

「あはは、でも助かったぜ。ありがとうな」

礼を言うと俺は気絶した受験者を預けてゴン達の所へ戻る。
ゴンの目はキラキラと輝いているが、キルアやクラピカにレオリオは化け物を見るような目で見る。

「あんなに高くまでジャンプ出来るだなんて!凄いやロウ!」

やっぱりゴンは天使だなぁ。けど、あれを実力でジャンプしたってことにすると、これから俺は人間として扱ってもらえないような気がする。

「……跳んだんじゃない俺の手品。だから俺が跳んだ事は忘れろ」

くそっ、魔界じゃ普通の事だと思ってたが、こいつらの反応見るにやらかしたぁー!!
出来れば無難にハンター試験を合格しようと考えてたのによ。

「いや、お前マジですげぇ跳んでたぜ」

「どうみても跳んでた様に見えたぜ?」

「キルア、レオリオ、本人がマジックだと言っているんだ。そもそも人体学的に考えてだな……」

やべぇ、クラピカがよくわからない事を呟き始めた。遠くからヒソカがすげぇ俺の事見てくるし。最悪だヒソカに目をつけられるなんてよ。

「はいはい、その話は終わり!俺ちょっと目立ちたかったんだ!!ほら、クモワシのゆで卵作ろうぜ!!」

「ちょっとどころでは無いと思うが……」

何事もなかったように卵を茹でて、ゆで卵が出来上がればメンチからクモワシの卵と普通の卵の味を比べてみなさいと言われる。

「お!美味しい。」

メンチもはじめから試験はゆで卵にしとけば良かったのに。受験者も良い感じに人数を絞れたみたいだしさ。

「わぁ〜こんな美味しい卵、初めて食べたや!!」

やっぱり、ゴンは超が付くほどに純粋だよな。俺的には蜘蛛鷲の卵よりもゴンの笑顔の方が美味しいぞ。

だけど、こいつ危ういよな。ヒソカ蹴り飛ばしても大ジャンプしても俺を疑うどころか距離も置かなかった。こいつの純粋さは物凄く危ないものなのかもしれない。
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