正体×天狼×それ確定?
◆◇◆◇◆◇◆◇




50時間分を待つ事になった俺たちはタワー内の小部屋に隔離される。約束通り、ダブルベッドがある事はあるんだが、部屋の大半をダブルベッドが占めてしまっている。

「ロウ、本当に俺と寝るの?」

「もちろん!俺は是が非でもゴンと寝たい。だから頑張った!」

なんだかキルアとクラピカの視線がトゲトゲしいけど気にしちゃ負け。だが、あくまで提案を出したのはリッポーとか言う試験官だ。つまり俺は悪くないぞ。

「折角ロウが手に入れたベッドで俺も寝るのは不平等だよ」

「……あ、ゴンらしい意見だな」

俺と寝るのが嫌なのかと思っちゃったよ。だけど、俺としては一緒に眠っている所を見せつけるというのも悪くないと思うんだ。

「俺はゴンと寝る為だけに汗を流して頑張ったんだ。"お前と一緒に寝る"……ここが重要なんだ!」

「おい、ゴンが困っているぞ」

ぐぬぬ……!クラピカがそう言うなら諦めるか……。まぁ、ゴンの困った表情も俺的にはキュートだったし。今回は、それだけで我慢してあげるか。

「……最後はゴンの判断に委ねる」

それだけ告げて俺は適当な場所に座れば部屋の中をじっくりと見回す。時間つぶし出来そうな物はあるが、完全に密閉された部屋だな。

やはり先程の対戦相手について気になる。あいつからは俺と同じ何かを感じる。
でも、妖気は感じ取れないところを考えれば俺が妖怪ではないはず。

「なぁ、クラピカ」

「なんだ?」

本を手にとっていたクラピカは、一旦本から目線を離すと俺に視線を向けてくれた。

「さっきの怪盗ルミナの事、知ってるか?」

「あぁ、知ってるがどうかしたのか?」

「いや、やけに強かったから気になってな。出来れば奴についての情報が欲しい」

下手な事を言えば、俺が人間でないことがばれてしまいかねない。それだけは嫌だ。

「生憎だが、怪盗ルミナは謎が多くてな、身元は謎なんだ。だが、一つだけ彼女の真相が分かるかもしれない情報ならあるんだ」

「……それは?」

「………」

「……クラ、ピカ?」

なぜ何も喋らない。もしや、既に俺が人間でないとばれてしまったか?クラピカの洞察力なら、その可能性も十分に考えられる。
沈黙が続く中、次第に周りも異常な空気に気付き俺達を見る。

「ロウは何者だ?」

やっぱり人間じゃないってばれたか……?いやまさか、でもクラピカから十分にあり得るよな。ネテロも気がついたくらいだし……。

「そ、そんな事聞いて、どうするつもりだ?」

「何者かも分からない者に安易には情報は渡せない」

「クラピカ……?」

俺の事を疑っていると露わにするクラピカにゴンは不思議な様子で呼びかける。
だが、仕方のないことだ。この様子だと俺が普通じゃない何かという事を何らかの証拠か何かで確信してやがるな。

「最初ロウは、単純に戦闘においてのプロフェッショナルなのかと考えていた。だが、不思議なことに、試験官リッポーはどうしてもロウを闘わせようとしていた」

確かに、その事に関しては俺も考えさせられた。出た答えが、試験官達が俺の正体を探ろうとしていること。

「それだけで疑うのは良くねぇぞクラピカ」

「それだけではない」

レオリオは俺を援護してくれたが、クラピカは手にしていた本を俺達に見せた。本の題名は"知られざる者"というものだった。

「この本は、この世界で伝説的な生命体や絶滅した生物など様々な生物が載っている」

「それで?」

俺が何を言いたいかクラピカに問う様に言えば、クラピカは本を開き此方に見せる。

「この生物と、ロウの特徴がよく似ていると思ってな」

「なっ、クラピカそれは狼じゃねぇーか!ロウは人間だぞ!」

そのページには真っ白に輝く狼の写真と解説が書いてあった。その狼の名前はてんろう

「……クラピカそれを見せろ!」

「なっ、なにをする!?」

クラピカから本を奪い取ると、それをすべて読み込む。この世界の文字には慣れていないが、読めることには読める。

「……天狼とはシリウスオオカミの事を指す」

俺がオオカミになった時の姿と酷似している。いや、酷似なんてもんじゃねぇ。俺と同じ種類の狼に違いない。

天狼は本来、恒星であるシリウスを太陽にしている惑星あり、その星の民が遥か昔に、地球に贈った生物がてんろうだ。
天狼は、とてもこの世のものとは思えない戦闘力で地球を外部の生命体から守る様に命じられていた。

つまり、てんろうとは地球外生命体。俺と怪盗ルミナが同じ生命体ならば、ルミナも地球外生命体と言うことになる。そう仮定したとき、ルミナから放たれた地球の者とは違うオーラと言うのも説明がつく。

その強力な戦闘力を利用して今から100年ほど前に国の戦争兵器として使われるようになった。

「たった一回」

「え?」

クラピカの意味深な言葉に俺たちは疑問の声を漏らす。

「たった一回の戦争で天狼は使われる事はなくなった」

「……それは天狼を用いての戦争が地形レベルの破壊力を持っていたからか?」

「その通り。その人知を超えたパワーは恐れられ天狼は次々と処分されていった」

「そ、そんなメチャクチャな狼は抵抗はしなかったのかよ!」

「天狼は本来、人間の命令に応じる様になっていた。だから、殺す事も簡単さ」

「ひ、ひでぇ話だ……」

人間どもが俺達を?じゃあ、俺も人間どもに殺されたのか?なんなんだ、この胸糞の悪さは……。全てに裏切られた気分だ。

「それで、お前の正体が気になってな。ロウが天狼ならば、桁外れの戦闘スキルや、犬並みの嗅覚にも説明がつく。もしロウが天狼ならば、私の発言は人類の未来にも関わる。だから、闇雲な発言は抑えたいんだ」

俺を疑うのと言うのは、そう言う意味があったのか。なんというか、蔵馬の野郎も同じ事言いそうだぜ。頭が良いというか良い意味でしっかりしてる。

「……残念だが、俺は何者か分からないんだ」

「……記憶喪失か?」

多分、クラピカは聞かなくても気づいていたはずだ。俺が天狼である事を覚えているならば、知られざる者の本を奪わない。

「あぁ。気がついたら、森の中にいて俺は保護された」

「……そうか。じゃあ、もう一つ聞く。お前が天狼ならば、人類に復讐するか?」

今のクラピカからは、何かを感じる。計り知れない何かを。それについて言及したいが、やめておくか。

「さぁね。人類という規模が広すぎて、なんとも思えないよ。だけど、ゴン達みたいな好きになれる人間もいるから、特に考えてない……かな?。もちろん、クラピカも含まれてるぞ」

「……そうか安心した。まぁ、こんな事を聞いても私には止める権利なんてないのだがな」

「クラピカ?」

俺が復讐するとなっても止める権利がないとは、天狼を滅ぼしたのは人間だから同じ人間であるクラピカは止めれないと言うことか?

いや、違和感がある。それならば、私にはなんて自分個人を特定する言い方はしない。あくまで、クラピカだけの話だ。とすれば、クラピカは何かに復讐をする事を企ててると考えるのが、妥当なところか?先程感じた何かは、クラピカのその心の中にある怒り。それは俺と同じ立場であるという事を意味していたのか。

「すまないな。疑う様な事をして」

「良いよそんなこと。それに俺は人間だ。いくら天狼でも人間に化ける事は出来ないさ」

しかし、クラピカの洞察力には驚かされるよ。なんとか誤魔化してるけど、多分俺は天狼なんだな。正直な所、助かったよクラピカ。

「本当に申し訳ない。この本を読んでいたらロウの特徴とよく似ていたからついな」

「非現実的なこと聞くなよぉ。聞いてて俺までドキドキしたぜ」

レオリオはぐたっと力が抜けた様にベッドに横になる。クラピカがマジで言ってたのか、ふざけて言っていたのは謎ということか。

「……いや、ちょっと待て!その天狼は怪盗ルミナと何か関係あるのか!?」

怪盗ルミナの情報を天狼の生き残りに渡すと人類の未来に関わるとすれば、確実に関わりがあるはずだ。

「あぁ、あれは都市伝説の類で信憑性はないが、怪盗ルミナ闘った跡地から偶然に天狼と思われる体毛が落ちていたと記録されているからな。もしかしたら怪盗ルミナが天狼かもしれないという事だけさ」

クラピカはそういうと、読んでいた本を手に取り再び読み始めた。だが、これでハッキリした。怪盗ルミナは確実に天狼だな。

クラピカから大量に自分の情報を得れた俺は、今の事を忘れない様にメモ帳に書き留めておく。

クラピカは周りに気を利かせて俺が天狼である事を誤魔化したのかも知れないとメモしている時に気がついた。

なぜ、あのタイミングで、天狼のページを読んでいたからかだ。
存在自体は初めから知っていて、俺の存在に似ていたから確認するべく、天狼の情報を調べていた。

だとするならば、クラピカは俺が人間で無い事に気がついてしまったのだろうか。まぁ、いっか。こいつ等ならば受け入れてくれそうだし。それに、俺もクラピカの事をあの話の中で推測出来たしな。

「……さて、寝るか」

メモ帳を閉じて周りをみてみれば、全員が眠りについていた。そういえば、30分くらい前にゴンから声掛けられたっけな。

「あはぁ〜……ゴン寝てる。これで二度目だけど……寝顔もすっげぇ可愛いな」

このすべすべすほっぺを指で突きたい衝動に駆られる。間違いなく、今の俺ニヤニヤしてるだろうな。

流石に慣れない事すると疲れちゃうもんだな俺も。ベッド空いてるしゴンの隣りで眠って良いよね?
俺はそっとベッドに潜ればゴンの隣りに横になる。布団に温もりが伝わっており暖かいな。それに寝息が鮮明に聞こえて心拍数が上がる。

こんな感情はゴンにしか抱かない。それは、俺にとってゴンは本当に特別な存在と言う事なんだろう。

ゴンと向かい合うようになり、ピトッとゴンの鼻先に自分の鼻先をくっ付ける。ゴンの息がかかり、なんだかいけないことをしている気持ちになってくる。

このままでは妙な感情に飲まれそうになったため、少しだけ顔を離して俺は眼を閉じて静かに眠りに入ろうとする。気持ちが収まっていくのと比例して意識が遠退いていった。

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