悩み×目的×存在意義
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波音と共に俺はジーッとゴンの釣竿に何かが掛かるのを待っているが見ているだけというのも退屈だ。まぁ、夕食にするから良いんだけど。
「どうだ〜?釣れそうか?」
カモメの鳴き声を聞きながら待つのも退屈なので、現状をゴンに聞いてみる。そうすると、タイミングよく竿に肴が掛かったようでゴンの体は反射する。
「きたぁ!んっ、にぃっ!」
力むゴンを俺は笑顔で見つめる。そんな俺にキルアはやや引き気味であるが、そんなことは気にしちゃいけない。
釣り上げた魚は水面から姿を現すと、勢い余って俺の方に飛んでくる。手にとってみれば力強く撥ねようとする。
「おぉ、結構大きいな。」
「ほら、ロウもやってみる?」
「おお、やるやる。前から興味あったんだよね。どれどれ……」
まぁ、だから事前に伝えておいたけど、割とワクワクする。俺はゴンから釣竿を受け取るとゴンの座ってた所に座りゴンが餌を取り出した。
「はい、まず餌をつけるんだ」
「これで釣れるのか」
これが釣りで用いるイソメって言うやつかな?前にいた世界の本で読んだな。暇つぶし程度に読んでたから内容はあまり覚えていないんだが。
「うえっ、よく掴めるな!そんなの!」
一般的には気持ち悪いものなのか。人間とはよくわからない。釣り竿に餌を付けて実際に釣りをしてみる。幻海さんの家にあった本でしか釣りの事は調べてないから、実際の感覚がきになる。
「魚を誘うんだ」
「誘う……?」
「いかにも美味しそうに見せるんだ。ちょんちょんって」
こんな感じかな……?取り敢えず生きが良く見えるようにしたらいいんだろ。それを数十秒繰り返してると、ウキが沈んだ。つまり魚が食いついたという事なんだな。
「おっ!よし!」
「餌を飲み込むまで間合いを取って」
感覚が手に伝わると「今だ!」とゴンの合図が同時にきた。思いっきり引いてみると、妙な魚が釣れた。
「すごいや!一発で会得しちゃうなんてさ!そうだ!キルアもやろうよ!」
「えっ?いいのか?」
おれと同じ手順でキルアも釣り竿を握ると、ゴンの指示通りに釣りを進める。正直、一流のコーチになる才能があると思う。
その後も釣りを続けていたが、日が暮れる頃には餌がなくなり、釣った魚を食べるために焼いている。
「見たことない魚だけど美味いのか?」
「とっても美味しいよ。この魚はねアカヒレシイラって言ってね焼いても美味しいけどムニエルにするとね、とっても美味しいんだよ。脂乗ってるから刺身にしても美味しいし人気の魚なんだ!」
やっぱり、釣り経験が長いと魚の名称から美味しい食べ方まで知ってるのか。こうやって、自分の好きな分野に関して説明するのは憧れるな。
「そうか〜今度ムニエルってやつ作ってみたいな」
そういや、結局魚さばいてねぇ。まぁ、美味い飯に辿り着けるなら十分だけど。そもそも、試験が終わった後も、ゴンと一緒に居られるかな……?
用もないのにゴンに付いて行ったら邪魔者になりかねないしよ。この試験中だけがゴンと居られる時間なのかもしれない。ゴンがハンターになれば父親を探すためにゴンは頑張るんだ。だから、俺はそれを妨げちゃ駄目だな。
「話変わるけど、俺と相部屋になったこと後悔するんじゃないかな……」
「なんでー?」
「実は……俺すごーく寝相悪いらしいんだ」
まぁ、なんとなく想像はつく。ベッドから落ちてそうなイメージが簡単についたしな。
「心配ないぜ。実は俺もだ」
「キルアも!?な〜んだ、じゃお互い様だね」
「お前ら2人して寝相悪いとか、俺の安眠を妨げるなよ」
焼けそうな魚を眺めつつ言えば、ゴンからは苦笑いのような声が聞こえてきた。
「あはははは」
「ロウなら別の意味で寝れねーんじゃねーの?」
「そこまで破廉恥じゃねぇぞコラ!」
「あはは冗談だって。本当に破廉恥ならトリックタワーの時に事が起きてるもんな」
こいつ、どこでそういう知識を身につけてるんだ。というか俺がゴンをどういった目で見てるのかバレてたのか!?いや、鎌をかけられただけか?
「え!?どういうこと!?話の意味が良くわからないよ!?」
「ゴンはわからんでいいぞ。というか、わかっちゃダメなんだ」
この年齢の子供が、そんな破廉恥な知識を持っていたら何かとアレだろう。というかゴンには汚れて貰いたくない。
「お!そろそろ食べれそうじゃないかゴン?」
話題を逸らすために魚を指差して言うと「いい焼け具合だね」とゴンは言う。
「ロウ、はい!」
串刺しになっている焼き魚を俺に手渡す。この匂いが食欲を掻き立てるよな。肉じゃないものを食べるとしたら魚くらいだし。
「どうも」
俺はゴンから焼き魚を受け取ると、ゴンはもう1尾をキルアに手渡す。
「サンキュー。……うっ!」
「どうかしたの?」
「めっ目が……。」
こいつなんで魚の目を凝視してるんだ…?ゴンも疑問そうに魚の角度を変えて見せた。その瞬間にキルアは飛び上がり距離をとった。
「……は?」
「こっち見たぜぇ!?そいつ生きてる!気持ち悪りぃ〜……!」
「キルアってば本当に殺し屋だったのかなぁ……」
確かに殺し屋に見えないな。両親が殺し屋という事はキルアもそうだろうとは思ってるけど……。
「さっさと食べようぜ。船内も探索したいだろ?」
「ロウから言うなんて珍しいな。てっきり、またゴンがロウを引っ張り出すのかと思ったぜ」
「キルアってば人聞きの悪い言い方しないでよー」
実はその一連のやりとりが少し楽しいと思ってたんだけどな。どうにもゴンは俺を求めてるみたいで俺の欲求が満たされるんだよな。
釣り上げた魚を食べ終わった俺たちは、この船内に入り探検する。辿り着いた先は操縦室で当たり前だが操縦に関する様々な設備が整っていた。
「こいつ動くぜ。エンジンは生きてるんだ!発電か何かに使ってんだな」
なるほど。ホテル名乗るくらいだから動力源は必要なのか。キルアは試しに適当なスイッチを押してみれば汽笛合図が鳴り響き、辺りで休んでいた海鳥達は一斉に羽ばたいていく。
「うるせーぞキルア!!」
「止めろったって、どうやってだよ!」
まったく俺の素晴らしい耳が可笑しくなりそうだ。
「しっかし、何にもねぇな」
音が鳴り止めばキルアはつまんなそうに感想を述べる。俺的には目新しいものが数多く見れたんだけどな。
「じゃあ部屋戻るか。とりあえず、俺はシャワーでも浴びたいぞ」
「確かに、海にも入って身体中ベトベトだもんね」
身体中ベトベトのゴン……それはそれで良いと思うんだ。じゃない、じゃない…本当は風呂にでも入りたいなぁ、なんて思ったりしてね。
部屋に戻ると俺は一足先にシャワールームに入る。とりあえず、体洗い流さないとな。
「……」
思い返せば色々あったな。最初は知らない町に一人でいて、コエンマ経由で蔵馬と会い3週間ほど修行したんだっけか。それからは、ハンター試験に受験しろとか言われて今はここにいるけども、それも長いもんだな。ゴンと会ってからは自分で言うのはアレだけども生き生きしている気がする。生きる目的を掴もうとしていると言う事なのか。
「……この楽しい時間も、いつかは終わる」
釣りをしている時から何度も思う。ゴンがハンターになってしまったら俺は何をするべきかと。
「……居場所が欲しいんだな」
恐れてるんだ俺は。今の俺は群れからはぐれて一匹狼に過ぎない。一人で生き抜く力もない癖して。だから、ゴンに縋ってるんだ。
「このままじゃ駄目なんだな」
この試験中に俺の目的を見つけなければ。俺が妖怪として転生した理由……それさえ分かれば大分楽になるのによ。
「なっげぇぞシャワー!ぶつぶつ喋ってないで早く出てこいよ〜」
「おぉ、わりぃ」
俺はシャワーのノズルを締めるとタオルで体を拭き服を着て出る。シャワールームから出ると俺はベットにダイブした。
「じゃ、俺はシャワー浴びてるからな」
キルアは、そういうとシャワールームに入っていった。猫っ毛だから海なんか入ったら髪質がツラそうだよな。
「ふぅ〜。今日はぐっすり眠れそうだ」
「ねぇ、ロウ」
「なんだ?」
俺はゴロッと転がりゴンの方を向く。この時のゴンは真面目な表情をしていて俺に話があるのだと悟る。
「ロウはハンターになったら何をするの?」
「……まだ決まってないな」
自分自身が誰なのかも把握していないから、目標なんてさっぱり思い浮かばないんだ。でも、一度死んだのに蘇った理由。
「……俺が生きてる理由を辿っていけば必ず俺にとって重要な事をやらなければならない時が来る……。って少し抽象的だったかな?」
「……いや、オレ未だにロウの事って分からないことばかりだけど、何となく分かるよ」
よかった理解してくれて。はたから見れば、こんな言葉は誰も理解してくれないと思う。きっとゴンも俺に対して多くの疑念を抱いてる。それでも、心から俺を信頼してくれてる。こんな奴はゴンしかいない。
「なぁ、ゴン。その目的を思い出すまで、お前の元に居ていいか……?」
「えへへ、もちろん」
「……お前は不思議な奴だな」
「えーっなんで?だって俺ロウと一緒にいたら楽しいよ」
とりあえず目的を思い出すまではゴンを外敵から守ろう。誰にも手は出させない。何故だか分からないが何かを失う事はもう二度としたくない。誰も失いたくないんだ。
全員がシャワーを浴び終え俺たちは、暫く会話した後、電気を消して眠ることにした。やっぱり、こういった所で眠るのが一番だよな。つい、こないだもトリックタワーでベッドを支給してもらったけども。
なにより、隣でゴンが眠ってるのが良い。これは寝込みを襲って良いということかな……?二人ともグッスリ眠ってるみたいだし、ちょっとだけ手を出してもバレないと思うんだよね。
「うへへへ……」
遠くの方から何かの音が聞こえてくるな。この音は俺がハンター試験を受け始めてから、よく聞き覚えのある音だ。
「……飛行船の音か?」
待てよ、なんでこんな時間に飛行船の音がするんだ。まさか、俺たちをここに置き去りにするのつもりなのか?
「おい!ゴン、キルア起きるんだ!!」
「……んん、……どうしたの…?」
「飛行船が飛び立とうとしてるんだ!!」
「……なんだって!?」
飛び起きるキルアに目を開くゴン。俺たちは急いで飛行船の元まで駆けつける。しかし、すでに遅く飛行船は既に飛び立っていた。次第に他の受験生もぞろぞろと駆けつけてくる。
「困ったなぁ」
腹いせに飛行船墜落させようかな?こんな孤島に残されたら死ぬだろ。
「……あぁ、なんかもう面倒い。疲れたから寝るな」
もう、何も考えたくない。一回眠って、頭の働きを整えないと辛い。
「お前よくこのタイミングで寝直そうなんて思うな」
「寝直すじゃない。まだ寝てないんだよ」
俺は伸びをして自分の部屋に戻る。妖怪の特権なのか知らないけど1時間も寝たら俺は充分に回復するからな。戻る
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