葛藤×心配×過保護な世話
◆◇◆◇◆◇◆◇




俺はプレートを6点分集めた後、ゴンを探すが気配が感じられない。そのせいか数日の間は何処を探してもゴンを見つけられなかった。

「おかしいな。たしかに、あの野性的な面を見てたら気配を絶つのは上手いだろうけど……」

まいったな。まさか死んでしまっただなんて事になったら俺はこの世界を滅ぼす事を心から決意する事になるし。

「げほっ、げほっ……」

「……ん?」

木の中から具合の悪そうな声が聞こえる。まさか、ゴンか!?この声はゴンに違いないけど何故に苦しそうなんだ!?待ってろ俺が助けてやる!!死んでない以上は俺にだって助けられる!!

「……っ」

いや……駄目だ。軍艦島の時も俺がゴンを助けてしまったばかりに、それが原因で落ち込ませてしまったんだ。あの時、俺の名前を呼んでいた時、明らかに悲しそうな顔をしていた。もしかしたら今回も俺が助けたら更にゴンは思いつめてしまうのではないだろうか……?

「でも、仕方ないじゃないか……っ」

今のゴンを放っておけない。もし命に関わるレベルの何かがゴンに起こってたらなら俺は助けなかったことを後悔するだろう。ならば、手は一つだけ。俺だとバレなきゃいいんだ。

「ぁっぁああっ」

まずい、急がないとゴンが辛そうだ。症状がわからない以上にはどうしようもない。取り敢えず、フォルムチェンジしかない。狼の姿ならゼビル島の野生動物にも見えるし疑われたなら野生動物として強引に通す。

俺は狼の姿にフォルムチェンジした。思い返せば、この姿になるのは久しぶりだ。割と使い時の悩む形態だからな。俺は忍足でゴンがいると思われる樹木の隙間に入っていく。そこで見た光景は予想を超えていた。これは大丈夫なのかと……。

(まさか、立てないのか?)

(だっ、誰だろう……)

俺はゆっくりとゴンに近づく。ゴンは俺を一目見ると驚いた表情を見せる。だが、これで分かった。表情のつくりが不自然だ。筋肉の弛緩を施す毒を盛られた。それが一番有力だろう。

(しかし、一体誰が……)

見つけ次第、抹殺しておきたい。いや、ゴンの命までは奪わなかったんだから見逃すか。俺は赤く腫れたゴンの頬をひと舐めすると、ここから離れる。

少し離れた場所で俺は蔵馬から貰った樹木の種を植えた。食べられる物くらいないと大変だよね。この木からなる果実は栄養素が高く、免疫を高める効果が期待されてるからな。

(こっ、これはヒソカのプレート?)

俺は草の上に落ちているゴンとヒソカのプレートを目にして言う。驚いたけど知恵を振り絞ったんだろう。並大抵の発想や技術では奪うのは不可能だからな。

考え事をしていれば樹木が成長する。果実をならすと、3つほど採りゴンの元に持っていく。

(……そうか食べられないのか)

身体に力が入らなくて寝返りうつのも精一杯なんだもんな。ゴンなら拒否はしない筈。俺は持ってきた果実を口に含むと軽く噛み食べやすいサイズにしてゴンの口に近づける。

(これさえ食べてくれれば体調はマシになると思うんだが)

俺はゴンの頬を鼻で突けば、気づいてくれたのか俺の方を見る。俺は自分の鼻で半強制的にゴンの口を開けて、口に含んだ果実を口移しする。飲み込む力もなかったら困るところだったが何とか飲み込んでくれた。

一通り食べさせると俺はゴンの横で眠る。筋肉が弛緩しているだけあって体温が冷たい…。俺が温めてあげないとな。ゴンには1秒でも早く治って欲しいんだ。眠るゴンを見ると、その頬には涙が伝っていた。

「いや、ゴンだけじゃないか……」



俺が目を覚ます頃には先にゴンが起きていたらしいく座っていた。木の麓には他の動物達が気を使ってくれたのか様々な木の実が置いてある。ゴンは動物に好かれやすいんだな。


更に数日が経過した。ゴンの体調は大分マシになり立ち上がれるようになっていた。だけども、ゴンの表情は変わらない。まるで光が見えなかった。

(こんな時、俺に出来ることは何か……)

俺は知っている。何もしてあげないことだと。今は1人で考えさせていた方が良いんだ。俺が精神面まで介入することは許されない。俺がして良いのは、そばに居てあげること。たった、それだけなんだ。


夜になり星々が夜空で輝いている。俺はゴンが何処にいるのかを確認する。そこは虫達の鳴き声がよく聞こえる場所でゴンは下を向いて座っている。俺はその隣で伏せをした。

「そうだよな……ヒソカにも助けられちゃったんだよな……」

小さな声で、俺の知らない時の出来事をゴンは呟いた。だが、ヒソカに助けられたと言うのはどういう事だろう。それに、ゴンはヒソカのプレートを持っていた。

「俺、今まで何してきたんだろ……。みんなに助けられてばかりでさ。そのくせ、全てやってきたと思い込んで……っ。たった一人じゃ何も出来ないじゃないかっ……」

そんなことない!そう思わせた俺に責任がある。それに俺はゴンがいたからこそ頑張れてる。そんな奴は俺以外にもいるはずだ。

「今までだってそう……。迷惑しかかけてこなかったんじゃないかな……。このままじゃプレートを手にたって、また……」

ゴンは俯いたまま考え続けている。俺はゴンについて誤解していたのかもしれない。

「……君、ずっと俺の事心配してくれてたんだよね」

やっぱり俺が助ける助けないなんて関係なくて、誰かが助ける助けないが問題だったのかな。たとえ、俺が狼の姿だろうとゴンを悩ませている原因は俺にあるんだ……。

「……君と良く似た狼を知ってるんだ。もしかして、あの時の狼なのかなって何度も思っちゃって」

(…………?)

天狼の実物を見たことがあるのか?でも、天狼は100年前に殆どが滅びた筈だ。良く似た狼でもいるのだろうか。

「俺が助けた狼は酷い怪我で……一時は目を覚ましてくれて容態も安定してたんだけど……」

結局は死んでしまったのか。俺と良く似た狼か。一目で良いから会ってみたかったな。

「……時々、ロウを見てても思うんだ。あの狼の生まれ変わりなんじゃないかって」

不思議な話だ。生まれ変わりならゴンより若いだろうよ。でも、なんだか運命的だな。もしかして、ゴンが俺と一緒に居たいのは、その狼と重ねているからかもな。

それから日が明けるとゴンは水辺で顔を洗っていた。俺も水辺により水分補給する。

「狼さん今まで俺の事みてくれてありがとう」

(そういや、残りも24時間程か)

ゴンは俺の頭を撫ぜるとリュックサックを背負い、誰かを探すようにこの場所から離れていった。恐らくは誰かの役に立ちたいんだろう。お前は十分に人の役に立ってるのによ。

「さて、そろそろ元の姿に戻るか」

久しぶりの人間の姿に違和感を感じるな。うまく化れてたら良いけども。と言うか俺に付けてきた試験官どうなったんだろ。撒いてから狼の姿になってたから見つけれてないよな。




「まさか本当にお前が受験者だったとはな」

俺が振り返れば、青い服をきた金髪の男が立っていた。手には不思議なロッドを握っている。こいつ、そこそこ強いな。

「じーちゃんがお前の居場所を示してくれたんだ。俺のターゲットのプレートをお前が持ってるってな」

という事は俺が適当に狩った二人のどちらかのプレートが欲しいわけか。俺のプレートは俺のターゲットだしさ。


「……それで?」

「お前が365番のプレートを俺に渡さなければ、悪いがデュエルしてもらうぜ」

確かに俺は365番のプレートを持っている。だが、この俺と闘い勝つ自信があるとはな。

「なぁ、お前からして1点分にしかならないプレートとの交換ならばしても良い」

俺は全てのプレートが2点となっている。だから、交換しようが俺の持ち点は変わらない。それで、こいつが6点に達すれば無駄な争いはしなくて済むしな。

「……なるほど、トレードと言うことか。いいぜ、この142番のプレートで良いな?」

俺はポケットから365番のプレートを取り出す。それを見せお互いのプレートを見渡し確認を済ませ交換をする。

俺は相手にプレートを投げ飛ばし相手も俺にプレートを投げ渡してきた。それを受け取り俺は交換を済ます。

「じゃ、もう俺には用はないな」

「あぁ助かったぜ」

礼を言われると金髪の男は俺の元から去っていった。全く、不思議な奴だった。導かれたというのは奴の能力か何かだろうか。

一夜が明け、ハンター協会の飛行船からの連絡が入ってくる。スタート地点に戻るように促され俺は走って向かった。
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