試合×決戦×対戦相手
◆◇◆◇◆◇◆◇
応接室でジイさんとの面接も終わり外を見てみれば陽は落ちすっかり夜となっていた。試験は3日後だから結構な時間、暇を持て余すんだな。これまでの間、何するかだが。
「肉くいてぇ……。肉くいてぇよ……」
ゼビル島にいる間、蔵馬から貰った怪しげな樹木の果実だけで過ごしたからなぁ。栄養価だけしか取り柄がないしよ。
俺は食堂に向かい、ステーキ定食と焼き鳥にレバーに唐揚げを一皿注文する。焼き石で焼いて肉の焼ける音を聞きながら食べたい。その光景を想像するだけで、よだれが出てくる。
「どうぞ、ステーキ定食と焼き鳥とレバーと唐揚げになります」
注文したメニューが届くと俺は直ぐにがっつく。久しぶりの肉だ。
(脂が口でとろけてジューシーだぁぁぁ)
肉は美味しいし、そもそもゼビル島にいたせいで碌な飯にありつけてなかったから、めっちゃくちゃ美味しく感じる。主食は肉じゃないとね。
「あぁ!また肉ばっかり食べてる!」
後ろから声が聞こえるとゴンのすがたがあった。やばい、また俺の偏食について注意される。誰もいないと思ってたのが油断だったか。
「悪いかよ」
「そんな肉ばっかり食べてロウって本当は狼だったりしない?」
「ち、ちげーよ、失礼だな。俺は肉だけ食べてたら栄養をまかなえるんだよ」
自分でも意味のわからんこと言ってる自覚はある。俺そのうち脂質異常症とかが原因で死んでたりして。妖怪だから多分ないと信じてるけど。
「ほら、ゴンも食べろよ」
俺は焼き鳥手に持つとゴンの口の中に放り込む。ゴンは驚いたが、仕方なくそれを食べる。
「んむっ!?」
「ジューシーやわらかで美味いだろ!」
「う、うん!」
可愛いよなやっぱり。肉なんかよりゴンを食べてしまいたいくらいだよ。多分マジで殴られるからやらないけど。
「ゴンも注文しろよ」
「そうだね」
そういや、ゴンの顔つき前と比べて明るくなったな。悩み事が解消されたなら良いな。
なんだかんだ言ってゴンと一緒に居る間が俺にとって幸せを感じれる時間なんだ。やっぱり、ゴンが居ないと生きてくには詰まらない。ゴンとなら永遠を過ごせる気がする。
夕飯を食べ終えた俺とゴンは飛行船内のシャワーを浴びることにした。正直、一週間の間もゼビル島でサバイバルやってたんだから汗が染み付いていて気持ちが悪い。
「えへへへへへゴンちゃん、俺がお前の体の隅々を洗ってやろうか?」
「え?自分で洗えるよ?それに」
「……それに?」
「キルアがロウには気をつけろって言ってた」
良かった。一瞬ゴンが実際にはやらないが大人の世界の事を知っているのかと思ってしまった。だけど、キルアにはお仕置きが必要だな。
しっかし……うん、ゴンの体をこうやってみると良い体してるな。適度に焼けていて、程よく肉が付いている。本当は触ってみたいけどやめとこう。
「でも、そこまで言うなら背中お願いしようかな。その代わり俺もロウの背中洗うけどね」
「…え?じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」
なんだろうな、少し前から気づいてはいたけど俺がゴンに対して抱いている感情は友情的なものではなく、もう禍々しい何かなんだよ。
「お前の背中綺麗だよな」
「そうかな?」
特に腰の方がとてもセクシーだと思う。かぶり付きたいけど、確実に嫌われるしヒソカレベルの変態だと思われる。ここは紳士なイメージを持って頑張ろう。
「よし、シャワーで流すな」
シャワーを手にしてゴンの背中にお湯を当てる。そして、空いている手で泡が流れるように摩る。触り心地も抜群だなぁ。
「ありがとう、じゃあ次は名前の番だね!」
今度は俺の背中をゴンが洗ってくれるため、俺はゴンに向けて背を向ける。
「わぁ、ロウの背中傷一つないね」
そりゃ、妖怪の治癒力ありゃ傷跡が残ることなんて稀だしな。流石に致命傷食らったら痕が残るとは思うけど。
「ん〜、そこそこ……」
「ロウお爺さんみたい」
「俺だって多分若いと信じてるんだ。」
「ごめんごめん」
記憶がないから実年齢も不明だしな。何から何まで自分について知らない。ただ、俺は天狼だろうという事くらいだ。
風呂から出ると俺は当たり前のようにタオルでゴンの体を拭く。
「あはは!くすぐったいよ!」
「ほらほらジッとしてて」
「もう、そのくらいできるのに!うっ、ははは」
やばい、これじゃあ俺が変態みたいじゃないか。いや、あながち間違ってはいない気がするけど、ほらちゃんと拭いた方が良いしね……?
その後、服を着てドライヤーで髪も乾かした後は、時間も良い頃になっていて眠ることにした。こんな日々が続けば楽しいのにな。試験が終わるまであと2日だけか。
「おやすみゴン」
「うん、おやすみ」
先が見えない。ハンター試験が終わってゴンと共に旅に出ても、いつかは別れがくる。出会いがあれば別れも必然なのだ。俺の悪い癖はすぐに感傷的になることだろうか。たぶん、心の何処かで怯えているんだ。もう誰も失いたくないと。
それからというもの3時間経っても眠れなかった。いつもなら直ぐに眠れると言うのにな。周りを見渡せば、全員寝ている。そうだよな時刻はもう深夜と遅い。
きっと1秒でも良いから俺はゴンを感じていたいんだ。離したくないんだ。ゴンから離れろって言われない限りは俺はゴンの隣に居続けることを選んでしまう。
「これは多分……ゴンを愛したいんだな」
誰かを愛したい。その対象になっているのがゴンで俺は試行錯誤しているんだ。愛することとは何かについて想いを馳せている。つまり、俺はゴンが好きなんだ。ただ、自然じゃありえない気持ちだろう。
気がついた時には眠っていたらしく、目が覚めたら外は明るくっていた。その夜、あのあと実は不思議な夢を見ていたと思い返す。それは、俺に対して何かを暗示するような……。
《……お前には未来を見て欲しい》
こいつは誰だろう。言葉も抽象的というか断片的過ぎて意味が理解できない。もしも、俺の過去にまつわる事ならば、俺の存在に意味する事なのだろうか。
この夢を見てから2日が経ち、ハンター協会の飛行船は目的地のホテルに到着した。実に有意義な3日間であった。これから行われるのは最終試験。ホテル内の広場に集められると、そこにはネテロのジイさんが待っていた。その隣には布で覆いかぶさったホワイトボードの様なものが見える。筆記試験の座席表だろうか?
「最終試験は一対一のトーナメントで行う」
「ト、トーナメント!?」
「筆記試験じゃないのかよ!?」
あのジイさんとの面談で受験者と闘うのは予測できただろうに。事実、闘いたくない相手とか聞かれた訳だし。
「筆記?誰じゃそんなデマを流したのは?」
そのジイさん言葉を聞いたハンゾー達三人は一斉にボドロを睨みつける。それに気がついたボドロは適当に鼻歌を歌っていた。
(あいつら本気でずっと勉強してたのかよ)
「では、トーナメントの組み合わせを発表する〜」
ジイさんはホワイトボードに覆っている布を取り外すとトーナメントの対戦表が露わになった。すっげぇ不公平なトーナメントだ。これって合格者は一人なのか……?
いや、それよりも俺には誰よりも大きな問題がありやがる。あのジイさんやってくれたな。
「どうかね?中々趣のある組み合わせじゃろうて、ほうっほうっほっ」
ならば、この場でゴン以外の奴を蹴散らして俺は失格して残りをゴンだけにすれば必然的にゴンはハンターになれる。
いや、ヒソカとカタカタ野郎に今の俺では勝てる見込みはないんだよな。オーラの量だけなら互角くらいだとは思うけど。
「勘違いしないように。最終試験のクリア条件は、たった一勝で合格である」
「……ほぅ」
ならトーナメント表の頂点に行った者が最終試験の不合格者となる訳だな。
「つまりトーナメントは勝ったものが次々抜けていき、負けたものが上に登っていくシステム。この頂点は不合格を意味する訳じゃ」
「要するに不合格はたった一人という訳か」
「左様、しかも誰にでも二回以上の勝つチャンスが与えられている」
しかしだな、問題が一つだけある。俺の初戦についてなんだが……通りで胸騒ぎがすると思った訳だ。あのジイさんも簡単に写真くれやがったし既に企んでやがったな。
「第一試合!405番ゴン様対!406番ロウ様!」
非常に困った。俺が降参してもゴンの性格を考えれば納得はしてくれないし関係が悪くなる。だからと言って一方的に俺が勝ってもゴンの自尊心を傷つける可能性がある。
仮に俺が勝ってしまえば次にゴンが闘うのはハンゾーという忍者だ。あいつは、オーラを使わない者の中ではキルアより強い可能性がある。
マーメンさんが一通りトーナメントを読み上げると「質問のある方はどうぞ」と聞く。
「組み合わせが公平でない理由は?」
「ふむ、当然の疑問じゃな。この取り組みは今まで行われた試験の成績を基に決められている。簡単に言えば成績の良いものにチャンスが多く与えられている事じゃ」
「それって納得できないな。もっと詳しく点の付け方とか教えてよ」
ネテロの評価に対してキルアは不満げにジイさんに突っかかって行くが「駄目じゃ」とジイさんは一言言う。
「なんでだよ!?」
「採点内容は極秘事項でな全てを言う訳にはいかん。うむ、まぁやり方くらいは教えてやろう」
みんなピリピリしてるなぁ。まぁ、俺がこんなに才能があったとは。みんな嫉妬しちゃってるのかな〜?
「まず、審査基準これは大きく三つ。身体能力値、精神能力値、そして印象値。これから成る」
身体能力値は自信あるが、精神能力値はあんまり自信ないな。印象値に関しては特別視されてるだろうし、トーナメント表の位置がここなのは当たり前と言えば当たり前か。
「身体能力値は敏捷性・柔軟性・耐久力・他の能力等の総合値を示し、精神能力値は耐久性・柔軟性・判断力・想像力等の総合値を示す」
なるほど、確かにゴンの身体能力値は高いし常識を崩す想像力を持っているな。確かに、それは大きく評価できると言える。
「だか、これはあくまで参考程度。最終試験まで残ったのだから何をか言わんかじゃ。重要なのは印象値!これは即ち今までに挙げた値では測ることの出来ない何かじゃ。言うなればハンターとしての資質評価と言った所か?」
ハンターとしての資質が。それならばゴンと比べた時の俺は素質が無いかもな。目的なんて殆ど無いに等しい訳だし。
「それと諸君らの生の声とを吟味した結果こうなった。以上じゃ!」
なるほど、あのジイさんワザと俺とゴンを対戦するように組みやがったな。俺が写真欲しいだなんて言わなきゃ、こうならなかっただろうに。
俺はゴンを見つめてみれば、同時にゴンも俺を見て目が合ってしまった。俺はどうしたら良いのだろうか。
普通に降参すればゴンの自尊心を傷つけ、一方的にゴンを倒してもゴンの自尊心を傷つける。だからと言って手を抜くような真似をしてもゴンの自尊心を傷つける。碌な結果が得られない。俺は何をすべきなのか。戻る
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