苦戦?×圧勝?×力半分
◆◇◆◇◆◇◆◇
第一試合で俺はゴンに負けて、次の相手ハンゾーと闘うことになる。明らさまに警戒する様子を見せている。あんな超人スペックを見せつけたから仕方ないと言えば仕方ないか。
「さてと、勝負方法は組手でいいか?」
「いいぜ」
何だ、その一瞬の躊躇いは。事実、俺の身体能力は壊れてるから普通は躊躇うか。でも、ハンゾーは俺に欠けている物を知ってるから了承した。それは経験不足。いかに肉体が強くても知識あるものには負かされる。だけど、俺はこの闘いで新しい戦闘知識を蓄えておきたい。
「第二試合!294番ハンゾー様対!406番ロウ様!レディ……ファイッ!」
靴のつま先でも地面をトントンとつついて足の感覚を確かめる。ハンゾーには隙がないため、今から攻めるか。
「いくぞ」
「おう」
俺は地面を蹴るように走って一直線でハンゾーの首を狙いに向かう。その動作を読めたのか、俺よりも数段遅い筈のハンゾーはガードして俺への攻撃へと繋げる。
「っ!?」
俺は直ぐに距離を取る。こいつは予想以上に強い。持ってる物は遥かに俺が上回ってる筈なのにな。例えるなら格ゲーは弱いが強キャラを使う奴と、格ゲーが強いが弱い部類のキャラを使って前者を倒すといったところか。
「生憎だが本気で行くからな」
戦闘においての頭脳線は蔵馬以外の奴とはやった事無いから少しワクワクする。攻撃パターンの誘発とか色々教わったからな。
「へへっ、上等だ」
ハンゾーの返事を聞くと俺は下半身だけを狼へのフォルムへと戻す。下半身だけならば服で見える事はまずない。
「いくぜっ!!」
地面を叩き割るように蹴り飛ばし俺は一瞬の内にハンゾーの後ろへ回る。数倍も早くなった俺の動きにハンゾーは反応できず、俺が入れた蹴りを背中からモロに受ける。
「ぐふっ!!?」
蹴りはハンゾーにクリーンヒットしたが、直ぐさまハンゾーは受け身をとってダメージを最小限に抑えた。だが、それでもダメージは深いはず。
(こいつ、今までと比べて桁違いに速くなりやがったぞ……っ)
(人間の動体視力じゃ、俺を抑えきるのは難しいだろうな)
俺は靴のつま先をトントンと叩いて慣らすと、もう一度ハンゾーに向かう。今度は先ほどよりも更にスピードを上げてみた。
「っ!?」
俺はハンゾーの真上に移動し、天井を蹴り飛ばして上空からかかと落としを入れるが、ハンゾーは最小限の動きで俺に仕込み刀を振った。
「……危ねぇ」
「てめぇ、まだ本気出してないだろ?」
そらそうよ。本気出したらどうしても正体がバレてしまう。あくまで、さっき言った本気は見せられる限りの本気だ。正体がバレる事だけ意地でも避ける。
「何のことかな?」
「しらばくれるつもりか」
俺はハンゾーに一直線で向かう。ハンゾーはそれを感覚的に感じ取って刀を俺に突き刺す。
「甘いぞ!」
「それはどうかな?」
俺は妖気を足に集中させ刀を蹴り飛ばす。ハンゾーが俺の言葉を聞いた時には、離れた場所で金属音がしていただろう。
「お、折りやがった……だと……っ?」
「無駄だ。闘えば闘うだけ俺はお前の動きを把握しているつもりだ」
蔵馬から教えられた。戦闘を行う際、いかに相手の癖や攻撃パターンを早く覚えられるかが重要だと言われた。恐らくハンゾーも行ってはいるが、俺のスピードが早すぎて読み込めてないのだろう。
ハンゾーとの試合は短かったけど十分楽しめた。一気に方を付けさせて貰おうか。
「さて、降参しろ」
俺は今までに出したことのないトップスピードで動きハンゾーの背後へ回り心臓の真後ろに手を突き当てた。動けば殺すという暗示だけど、人間殺しは霊界から追われることになる可能性があるから人は殺さないけどな。
まあ、終われなくてもハンゾーのような優秀な人間は害がない限りは殺めるつもりは毛頭ないけど。
「参った。俺の負けだ」
ハンゾーの言葉を聞くと同時に手を引いて、下半身を人間の姿へと戻していく。正直言って想像以上に強くて驚いたのが感想だ。
「第二試合!勝者406番ロウ様!」
「ふぅ、やっと合格だ」
俺はハンゾーから離れて一礼をする。これはいい経験になった。思った以上に技量の差が明確になった。こいつ極めたら相当強くなる。今の俺よりは全然強くなる気がする。
「ありがとうな、参考になった」
「へへ、最後の最後まで本気のお前は見れなかったみたいだぜ」
やっぱバレてたか。けど、ここで正体を明かすわけにはいかないから、ハンゾーが幾ら強くても本気は見せられなかったけどね。
「クラピカ、ゴンの所に行ってくる」
「あぁ、そうか。全ての試験が終われば伝えに行く」
ゴンの奴、大丈夫だといいが。俺は広間から退出すると妖気を広げてゴンの居場所を特定する。おっと、部屋は結構近いな。
「……お邪魔します」
部屋に入れば、ベッドにゴンが眠っていた。普通に眠ってるみたいだな。恐らくは急激な酸素不足が原因だろう。言わば貧血みたいなもんだな。
「……しっかし、いい寝顔だな」
随分と柔らかそうな唇。本で読んだが人間は愛するもの同士で唇を合わせるらしい。もし、俺から合わせたらゴンは喜ぶだろうか……?
「眠ってるし良いよな……?」
顔を近づければ、今までにないくらいに心拍数が上がっていく。意味が篭ると、こんなにも緊張するもんなんだな。
「……やっぱ、やめよう」
こう言うのは本人に承諾を得ないとダメな事な気がする。あれはノーカンだ。ゼビル島の口移しは仕方ないと言うことで。
「……ん」
目を開けば部屋にはサトツさんが椅子に座っていた。そうか眠ってしまったのか。
「起きたのですか」
「あぁ、うん」
流石に疲れてたんだな。肉体よりも脳への疲労が溜まってたんだろう。あと妖力を使ったせいか?
「これから、ハンター合格者の講習会が開かれます。起きたのですし参加していってはどうでしょう?」
「そうなのか。そうだな受けるか。……そう言えば不合格者は誰なんだ?」
ふと気になって聞けば、サトツさんは少し間を置いて話し始める。なんだが話の空気がおもたい。レオリオ辺りが落ちたのか?そうなのか?
「不合格者はキルア氏です」
「……へ?」
どこに落ちる要素があったんだ?暗算対決とか馬鹿な決闘したんじゃねーだろうな。これは詳細を聞かないと理由がわからないな。まさかの降参とかならあり得そうだけども。
「反則による失格です」
「あー……誰か殺ったのか」
「しかし、本人の意図でないという抗議もあります」
「……?」
話が読めないな。これは何やら俺の知らない何かが起きてしまったらしいな。
「キルア氏の初戦はポックル氏でしたが、キルア氏は辞退してしまいました」
「確かに、闘ってもつまんなそうだしな」
だけど、一回降参してもキルアには数回チャンスあったはず。その中の誰かを加減ミスって殺してしまったってところだろうか?
「次のキルア氏の相手が、キルア氏のお兄さんだったのです」
「……え嘘だろ?それっぽいやつがいたか?」
「本人は変装をしていた様で、あなたが知っていると名前で言うとギタラクル氏です」
あー、あのカタカタ野郎か。確かにあいつの実力は周りより遥かに高い。言えばヒソカクラスだ。
「なるほどなぁ……。困ったな……」
「ゴン君の事ですか?」
よくわかったな。キルアが失格した以上、ゴンは何らかの反応を起こす。しかも、本人の意思じゃ無い説も出てるから荒れるかもな。
「とりあえず、今やってる講義に俺も出るわ。ゴンのこと頼みます」
妙な能力に関しては俺も多少は知識あるし、もしもその事についても議論するならば講義に出ておこうか。戻る
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