稽古×特訓×対等な立場
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あの男の名はゼブロと言うらしい。話を聞けば、試しの門と呼ばれるあの門はゾルディック家の私有地に入る事が許される線引きのような物。あれを開けられない以上は入る資格が無いとのこと。

では、試しの門以外の所から入ればどうだろうと言う決断を下したらどうなるのか。その場合はゼブロいわくミケと呼ばれる番犬に食い殺されるそうだ。

再び外に出てみれば、もう一度試しの門の前に立ってみる。レオリオは俺がやったように門に両手をついて力一杯押すが門はピクリとも開かなかった。

「んぎ……ぎがが……!!はっ……はっ……。押しても引いても開かねーぞ!!」

「単純に力が足りないんですよ」

ゼブロさんはレオリオにそう言う。クラピカは俺の方をジロジロと見つめる。

「どうしたクラピカ?」

「いや、ロウは試験を受ける1ヶ月ほど前から修行を始めたと言っていたな」

「あぁ、正確に言うと20日前だけどね」

それを言うとクラピカは少し驚いていたが本題を切り出してきた。

「どんな修行をしていたのだ?」

「えぇ!?いや、長くなる……。でも基本は組手と走り込みだったな」

妖気の解放もあったけど、そんなこと言っても信じてもらえんだろうし。

「……やはり種族の違いというものか」

「まぁ、俺って天才だし?」

そう言って見せればクラピカからジト目で睨まれる。軽い挑発のつもりだったんだがな。

「ちなみに1の扉は片方2トンの重さがあります」

「……1の扉はだと?」

ゼブロの説明にレオリオは思わず突っ込む。俺の開けた5の扉の重さはどんなもんなんだろうか?

「ごらんなさい7まで扉があるでしょう?一つ数が増える毎に重さが倍になってるんですよ」

「倍!じゃあロウは……」

まるで化物を見るようにレオリオは俺を見る。悪かったな化物で。別に化物だっていう自覚はしてるんだぜ?

「キルア坊ちゃんが戻ってきた時は3の扉まで開きましたよ」

「3……ってことは12トン!!」

「いや違うぞゴン!18トンだぞ!!」

「お前ら二人とも違う!!16トンだ16トン!!」

あり、計算間違ってしまったか。まぁ、算数とか数学とか全然、勉強してる暇なかったし仕方ない……よね?

「じゃ、じゃあロウは……えっと……」

「64トンの扉を開けた。という事だろ?」

クラピカは俺を見ていう。その言葉にゴンも思わず「えぇ!」という声を出す。

でも、あんまり数値を扱って物を見てなかったから64トンがどの位凄いものなのか実は分からなかったりする。俺に必要なのは勉学かもしれん。修行ばかりで全然頭脳の事を考えてなかったからな。これじゃあ論理的思考に欠ける。

「あなたは住む世界が一緒かもしれませんが」

「俺、上の者からの命令で人を殺す事が許されてませんので!!」

「す、すいません。そう言う意味じゃなくて対等に渡り合えるかという意味ですよ」

そう言う事か。てっきり闇の住民という認定をくらったのかと思ったよ。俺は一応は謙虚に過ごしてるから人は殺さないし、寧ろ死にそうな奴がいたら助ける方だからな。

「でも、気に入らないなぁ……。友達に会いに来ただけなのに試されてるなんて真っ平だよ」

「……ゴンはそれで良いのか?」

ゴンの正面に立って俺は言う。また俺の第六感が伝えてくるんだが、ゴンにはこの扉くらい開けられるようになってくれないと後々困りそうだと言う。

「どうして?俺は友達に会いに来ただけなんだ。こんな形で試されるなんておかしい」

「確かに……そうかもしれない。でも、もしゴンがキルアと"対等"な友達としているならば、せめて1の扉くらいは開けないと不味いんじゃないか?」

これからの旅は危険が伴うかもしれない。だから、守られてばかりの友達じゃ対等とは言えない。

「……」

俺がそう言うとゴンは俯いてしまう。俺の言ってる事は確かだけど、この場面で試されるのか解せないんだろう。俺もゴンの立場ならそう思う。

「ここはゾルディックの敷地。ここのルールに従わなきゃいけないんだ。それに、無理難題って訳でもないさ」

「……わかった」

ゴンは顔を上げると決意を抱きた表情をしていて俺にそう答えてくれた。ゴンには悪いと思ってるけど俺の第六感は当たる。

「じゃあ、俺が稽古付けてやるよ」

「ホント!?」

「あぁ!」

正直、ゴンの才能は素晴らしいと思っている。もし、俺がその才能を最大限に発揮させられるなら俺が稽古を付けてやりたい。

「それでは、私についてきてください。稽古をするならば良いところがあるんですよ」

ゼブロさんの言う言葉を受けて俺たちは、後をついて行く。ゼブロさんが試しの門を開けると、そこには先ほどゼブロさんが言っていたミケという番犬がいた。

「目に感情がない……な。ゴンもそう思うだろう?」

「う、うん。まるで機械みたいだ」

まぁ、こんか機械みたいになっていても本当の主人の前では本性を見せたりする。それは動物だから当たり前の事だ。言えば、このミケというのは動物である時と機械である時のケジメがしっかりついた番犬。かなり優秀だと言える。

「すぐ近くに私ら使用人の家があります。まぁ、泊まって行きなさい」

木造の家があると、その前に俺たちは立つ。見た目は普通の家だが。

「ちょっと開けてみてください。押して入るドアですよ」

ゼブロさんがそう言うとゴンはドアに手をついて押してみる。そして、何かに気づいたのかゼブロさんの顔を見ていた。

「これって」

「片方200キロあります。常に鍛えとかないといけませんからね」

ギクッ……そういや最近まともな修行を俺はしてないんだよな。ゴンに稽古付けるとか言ったけど俺で大丈夫かなぁ。

俺は余裕綽々としてドアを開ける。確かに64トンと比べると只のドアだ。あんなの開けたばかりに感覚が狂った。

俺たち全員が入ると玄関にはスリッパが用意されている。

「スリッパどうぞ。片方20キロありますが」

そんな調子で、この家では一般家庭にあるものが有り得ない重さで造られている。一体どんな材料で作っているんだ。ここまでくると不思議でならんな。

そしてゼブロに渡された上下で50キロの服を着る。やはり感覚が狂ってるのかあまり重くは感じない。いや、そもそも蔵馬の修行が可笑しかったんだ。感謝はしてるけどさ。



完全に日が暮れ空には月が浮かんで月光が辺りを照らす。やはり狼であるからか月というのは人一倍美しく見える。

「ねぇ!ロウ!」

俺が外で月を眺めていれば、家の中からゴンが出てきて俺を呼ぶ。目的は稽古だろう。ゴンはそれを言わなくても俺には分かる。俺は構えるとゴンも構える。

「よし、やるか!」

「うん、手加減しないでね」

息を大きく吸うゴンを見て俺は身体中をリラックスさせた。手加減は勿論するに決まってるけど。

「行くぞゴン!」

一気に間合いを詰めてみれば、地面を蹴り土埃を上げて視覚を封じる。

「さて、まずは視覚が使えなくなった時の対処方だ」

ゴンは冷静に俺の位置を捉えて蹴りを入れる。勿論ガードするが、良い耳をしている。僅かな俺の足音や服が擦れる音を元に居場所を割り出したに違いないだろう。

「ふふん、やるじゃんか」

俺はゴンから距離を取ると、近くの石ころ4つ程を手にしてゴンに一つ投げる。ゴンはそれを交わすが、二つ目の石を投げて同時にゴンとの間合いを縮める。

「石を交わせば俺の拳が当たり、俺の拳を意識すれば石が当たるぞ!」

ゴンは飛んできた石を交わさず受け取り俺に投げ返す。俺はそれを避けると、その間にゴンは俺の背後に回り込みパンチを入れる。

「甘い!」

残っていた二つの石を足元に投げると地割れが起き、足元が不安定になりゴンは俺から距離を取った。

「隙が出来たからと言って、万全な体制の相手に近づくのは危険だ。そいつが動かなくても攻撃できる手段を隠していた時、致命的ダメージを受ける」

これも蔵馬が植物を使っての戦闘を行ってたから言える話だ。隙の出来たと思われる蔵馬に近づけば、魔界の植物が地面から表れ俺に攻撃を入れたからな。

「さぁ、続けろゴン」



ゴンとの組手が終わればゴンはへとへとで倒れそうだった。何気に上下で50キロの服を着ての組手だからしんどいだろう。

「さ、流石ロウだね。俺じゃ全然敵わないや」

「俺も師匠には全然敵わないけどな」

未だに俺がまともな攻撃を入れれた事がない。全て見切られていて俺の攻撃が何一つ通用しないんだよ。

「いいセンスあるよ」

「ホント?」

「こんな嘘はつかない。慢心しちゃ駄目だけど自信は持って良い」

まぁ、ゴンも多彩なことを仕掛けてくるから俺の勉強にもなる。蔵馬と修行してた頃の感覚も戻ってきたし本調子に戻れそうだな。
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