戦術×未熟×その理由
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ゴンが大怪我を負ってから5日が経ち、俺は200クラスで合計5勝を得た。念という物は奥が深く一つ一つの戦闘が勉強になる。
今まで、俺の能力で攻撃技と言えば有滅爆輪しかなかった。この能力は相手との駆け引きをする上で力を発揮できるが複数個相手に付着させなければ決定打として働かない。相手が強化系ならば尚のこと。
格下相手に使用すれば身体を破壊するのは簡単だが、俺が人間の姿で闘う間は放出オーラ量も最大10%と限られるから頭脳を使わないといけない。
「新しい能力か……」
特質開花の操作系で、相手に致命傷を入れられる技……。まぁ、まだ新しい能力を考えるのは早いか。今持ってる能力を最大限に活かせるように努力するのが俺にとって重要な事だ。
それに天狼として生きてた頃の記憶も戻れば、当時の俺が使ってた能力も新しく使えるようになれるかもしれない。それまでの辛抱だな。
「……何だかずっと難しい顔してるね。」
「ん?あぁ……。ちょっと考え事してた。念についての事だから言わねーぞ」
「う、うん」
そういやゴンって何系の能力者なんだろうな。聞いたところ強化系がバランス取れてるらしいけど。極めればパンチ一発が凶器だしな。操作系の俺の骨なんてボキボキに折られるし。
ゴンの怪我から一ヶ月経つと、恐ろしい事に全治4カ月と言われたはずのゴンの骨折は物の見事に完治していた。
「……マジで治ったの?」
「うん!」
ジャンプしたり走ったり逆立ちしてみたりと色々な事をしている。数日前から、痛そうな素振りが無かったから怪しいなとは思ってたが。
俺が呆気に取られていると、ゴンの部屋にキルアも入ってきた。
「あ!キルア!今そっち行こうかと思ってたとこなんだ」
「おいゴン。おま……怪我はもう良いのか?」
「うん!ほら!」
俺に見せたように身体を動かしてみせるとキルアも呆気に取られてしまった。やっぱり幾ら何でも治るの早過ぎるよな。
「ったくどーゆー身体してんだよ!お前 変!」
「キルアに言われたくないね!」
まぁ、二人とも可笑しいとは思うけどな。それを俺が言うのは最も馬鹿らしくて言えないが。
「んで、キルアは何か用事あんのか?」
「おう、これこれ」
特に期待もせずに聞いてみればキルアはチケットが3枚見せてきた。一体何のチケットだろうか。
「ヒソカが戦うチケットだぜ」
「ま、マジかよ」
「200階クラスの闘志って事で優先券が取れたんだ。でも、せこいよなー金はしっかり取るんだぜ。ヒソカ戦大人気でさ、すげー行列が出来てダフ屋までいたくらいだ。
そいつから色々聞いてきた。やっぱあいつ只者じゃないぞ。11戦して8勝3敗6KO。KO数イコール死人の数なんだってよ。3敗は全部不戦敗。戦闘準備期間がなくなったから登録だけして試合には出ないってことらしいな」
「つまり……闘えば負けなしって事だな」
出来れば俺は闘いたくない相手だ。恐らく残り1勝はゴンと闘うのに残しておくはず。それで今日の試合も勝つ予定で、晴れてフロアマスターという訳か。
「その上に11戦して相手に取られたポイントは僅か4ポイント。ダウン一回、クリーンヒット3回のみ。実力はもう間違いなくマスタークラスだってよ」
「うわーまいったなー」
ゴンはそう言ってるけど、むしろワクワクしてるだろ。ゴンの顔がそう言ってる。俺はヒソカとはなるべく闘いたくはないんだけどな。俺が天空闘技場で闘ってきた奴とヒソカを比較したら、ヒソカの実力がヤバイのがわかる。妖狼の姿でも勝てるか不安なのによ。
「で、対戦相手はカストロってんだけど、唯一ヒソカからダウン奪ってる男だ。ヒソカが敵に与えた4ポイントのうち3ポイントがカストロによってだとよ」
というと相手のカストロもカナリの実力者であるのは間違いないんだな。ちょっと闘ってみたかったけど、人間の姿で闘うのは無理そうだ。
「まぁ、ヒソカの研究には丁度いいかもな。俺も奴の事は警戒してるし視察はしておきたい」
「んー……でも良いのかなぁ。ウイングさんとの約束が」
「ああ!大丈夫に決まってるだろ!ただ試合を見るだけなんだからさ!」
キルアが力強く言ったところで背後からウイングの声がドデカク響いた。
「ダメです!!」
いつからいたんだよ。俺に気がつかれないレベルで気配絶ってたとかとんでもねーぞ。
「試合観戦も調べる行為に相当します。ゴン君、君はあと一カ月治療のみに専念なさい」
「うん、わかった」
ゴンが返事すればウイングは帰って行った。まさか、これだけ言いに来たんじゃないよな。まぁ、一応約束は二ヶ月だったし仕方ないか。
キルアと二人でヒソカの試合を見に行った。見た感想はレベルが違う。見ていた時は開いた口が塞がって無かったと思う。
カストロの能力はダブル。自身の分身を作り出しヒソカを翻弄していた。しかし、ダブルの種がヒソカにバレた瞬間にみるみる手玉に取られていた。
俺もシルバと初めて闘った時、俺の能力の種がバレ瞬間に猛反撃を喰らったから、あの恐ろしさは身に染みてる。
それにヒソカが試合と合間で何度か見せた高等技術。隠でヒソカは不思議なオーラを隠していたけど、俺の眼では捉えれた。あのガムとゴムの様に伸びるオーラ。それで千切られた腕を元通りにしていたが傷口までもが消えた。
なんだか、あいつと闘いたいと思うゴンの気持ちが少し分からなくなってきた。まさか、殺さないとは思うけど恐ろしい。
「お、おま顔色悪いけど大丈夫か!?」
「あ、あぁ。ゴンが心配になってきて…」
「やっぱりロウから見てもヒソカはヤバイのか?」
「俺が妖狼の姿で挑んでも負ける気がする」
そう言えばキルアも難しい顔になる。こればかりは戦闘キャリアが物を言う。ここに来て修行を積んだ俺は、オーラの絶対量でヒソカに勝ってるかもしれないけど、それでも勝てる気がしない。
「いや……元の力さえ取り戻せば……」
「元の力?」
「あ、俺の憶測の話なんだ。ここじゃ、あれだし別の所で話したい」
人気のない通路に行けば、ポツンと設置されているベンチに腰をかける。
「で、なんだよ元の力って」
「確実ではないんだけど、俺って天狼らしいじゃん。現に命も狙われたし確実だと思ってる」
「まぁ、そうだな。記憶が無いんだっけ」
コクリと俺は頷く。俺は天狼時代の事を何一つ覚えてない。
「だから確実じゃねーんだけどよ、俺が妖怪として目覚めた時は一般人レベルの力しかなかった」
「……つまりは天狼だった時の力が失われてたって事か?」
「その可能性は高いと思ってる。天狼は異常過ぎる戦闘力が原因で駆除の対象になったからな」
大地をも揺るがす個体もいたと聞く。小さな島を丸々消し飛ばしたり出来るという伝説も残っている。どれも信じがたいものだが俺の成長速度を見れば十分にあり得る話だ。
「ふ〜ん、なら修行より記憶取り戻した方が良いんじゃねーの?」
「でも、それをどうするか……。ネテロの爺さんはヴェルムケーヴを探し出せば良いって言ってるけど、そのヴェルムケーヴ自体が曖昧な存在らしいし」
天空闘技場に来てから、ハンター証を使ってハンター専用サイトで調べたけど、有力な情報は出ないし都市伝説みたいな扱いされてる。
「手掛かりが無いのか。確かにそれじゃ探しようもないのか」
「俺の記憶を刺激するものでもあれば、望み薄だけど可能性はありそう」
「でも、昔のお前が何をしてたか分からないから、その手掛かりも掴めないんだろ?」
全くその通り過ぎて困る。もしかしたらDASの組織の人物に有力な手掛かりを持ってる奴がいるかもしれねぇが、突入しに行くのは自殺行為だし。
「だから、俺はゴンが親父を探す旅に付き添っていれば、俺も何か思い出せるかなって。
それにゴンの親父は凄い人らしいから天狼についても知ってる事があるかもしれない」
「まぁ、一人で手掛かり探すよりは理にかなってると思うぜ」
本音ぶっちゃければゴンと居たいだけ何だけど、建前としては今俺が述べた理由にしておこう。それでも、ゴンの親父のジンって奴なら知ってそうだと第六感が伝えてきている。
「さて、俺はゴンの所に戻るけどキルアも行くか?」
「あぁ、特に用事もねーしな」
ベンチから腰をあげると、俺たちはゴンの元に戻る事にした。出来れば早くヒソカ戦の事を伝えたいから早く一ヶ月が経ってほしいものだ。
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