情緒×安定×特別な存在
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目覚めれば天空闘技場で俺の割当てられてる部屋で眠っていた。俺の眠るベッドの足元では途中で寝落ちしてしまったのだと思えるにゴンが上半身をベッドに預けて眠っている。

カーテンが閉まってる事から夜中なのだろう。時計を見てみれば案の定、夜中の3時で中途半端な時間に目が覚めたと思う。

「不思議な夢だったな……」

仮面をつけた王はもちろん、あの世界で出会った一人一人の人物を俺は知っている気がする。ただの夢じゃないな……。

「しかし、俺まで汗でびっしょりだ」

あの王じゃあるまいし。別に恐怖なんて抱く夢でもねーのに不思議だな。取り敢えずシャワー浴びるか。身体中ベタベタになる前にな。

脱衣所で着ていた服を脱ぎ捨ててバスルームに入る。シャワーの蛇口を捻れば頭からお湯を浴びる。

「……夢とは言え、光景がハッキリしすぎてるな」

あの風景に登場人物の顔に声。それにあの世界に入る前に聞こえた謎の声と言い、俺の身に何かが起き始めてるのかもしれない。

バスルームから出るとバスローブを着て、部屋に戻る。相変わらずゴンは眠っている。

ゆっくりとゴンの体を持ち上げると、俺が眠っていたベッドに体を下ろした。上から体が冷えない様に布団をかけた。

「……可愛い寝顔だな」

感じられる念が強くなってるから、既に念の修行が始まったらしいな。という事は俺は何日間眠っていたんだ?

キッチンに立てばポットに水を入れる。水が沸く間にマグカップを手にとってインスタントコーヒーの粉を入れた。

「……もしかしたら、俺の記憶の手かがりなのだろうか」

この答えに辿り着いたのには、あの世界であった全ての人の顔が、とても初見だとは思えなかったのだ。前に何処かであった事のある様な胸の騒めき。その感覚は確かなものだと思う。

ポットに入れた水が沸くと、先ほど用意したマグカップに湯を注ぐ。スプーンで軽く混ぜると一口だけ口の中に含みコーヒーの味を充満させた。

「……記憶が戻って、今の俺が消えてしまったら……」

この悩みは前にハンゾーに打ち明けたけど、ハンゾーを困らせてしまったからな。この答えは自分で出さないといけない。

「…………」

特別、誰かを怖いと思わないのは自分自身が最も恐れてる存在だからかもしれねぇ。自分以上に怖いと思える存在がねぇ。

ゴンと居る間はそれを忘れられるさ。ゴンを守るという自分の存在を肯定できるから……。もしかしたら無意識で、そういう風に考えていたのかもしれない……。

結局は、自分の都合で俺はゴンに付きまとってるに違いないねぇのか。

「何、悲観的になってんるんだ俺は」

ゴンは俺の友達なんだ。だから一緒に居る意味が無くても良いじゃないか。ゴンならそう言うはずだ。

俺は自分で思ってる以上に弱い。だから、俺よりも心が強いゴンに頼ろう。もし、ゴンが俺を拒むなら……その時は……。

飲み終えた空のマグカップをテーブルに置けば、ゴンの眠るベッドに近寄る。規則正しい綺麗な寝息。その音色を耳に届けるだけで心が安らぐ。



気がつけばカーテン越しに光が漏れ、朝になったのだと気がつく。あれから一眠りもせずに、ただゴンを見つめていた。不安定だった俺の心が信じられないくらいに落ち着くのだ。

「……あれ、俺……いつの間に」

「おはよう、ゴン」

目が覚めたゴンに優しく言う。ゴンは眠そうな声で「おはよう」と返す。お前の顔を見ているだけで悩みは晴れるな。

「そうだ!ロウは大丈夫なの!?」

急に思い出したかの様に声を広げて俺を2度見した。この様子だと長い間眠っていたんだそうだな。

「まぁ、最近は試合で頑張ってたし疲れてたんだと思う。それで聞くけどさ、何日間寝てたか分かるか?」

「えっとね、3日間寝てたんだよ!お医者さんは大丈夫って言ってたけど不安で」

3日間も眠っていたのか。夢の中じゃ数時間程度の実感しか無かったんだがな……。

「心配かけたな。そうだ、もう念の修行してんだろ?時間が空いたら組手でもするか?」

「え、いいの?って、そんなことより体は大丈夫なの?」

「あぁ、沢山寝たから回復した。多分、今までの試合で自分の治癒力を酷使しすぎたからツケが回ってきたんだろ」

多分、疲労感の一つも無かったから違う気がするけどゴンを納得させるには、こんな具体的な理由を付けなければな。

「ふ〜ん、そうなんだ。それなら良いけど」

「じゃ、朝ごはん食べようか」

「うん」

俺にとってゴンは大切な存在なんだな。いつも、ゴンが俺の側から居なくなれば、俺の心は不安定になるけど、ゴンと会話した瞬間に安定する。俺にはゴンが必要なんだ。
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