感情×対象×伝わらない
◆◇◆◇◆◇◆◇
俺が目覚めてから10日ほど経ち、その間で俺は合計10勝を果たしフロアマスターへの挑戦権を得た。ここは念を正しく覚えなかった輩が多いのか自分の系統と合わない事をしている奴が多い。だから、俺も人間の姿のまま勝ち進めたが、ここからが本番だ。
トントンと部屋のドアにノック音がなると俺はドアを開けに行く。もう夜も眠れ老けているのに誰だろうか。
「誰だ?」
「お、おれ」
用心深くドアを開け開けて、ノックした人物を見るとゴンの姿があった。こんな時間に来るなんて珍しいな。
「どした?」
「あはは……ごめんね。急に会いたくなっちゃって」
「……」
危ない危ない……一瞬頭の中が真っ白になっちまった。別にそう言う、意味深な捉え方しちゃうあたり、俺はもう重症なんだな。
「ご、ごめん!迷惑ならオレ帰るよ」
「いや、待て待て!別に用が無くてもゴンならいつでもウェルカムさ!」
沈黙する俺にゴンは気を落としてしまったのか帰ろうとしたが、ゴンの肩に手を伸ばして帰るのを止める。
「俺の我儘に付き合わせてゴメンね」
「別に嫌じゃねーから謝る必要はないぞ」
部屋に入れるとソファに座らして、俺は冷蔵庫からジュースを取り出しコップに注いでテーブルに置いた。
俺はゴンの隣に座って黙った。特に話題を用意していた訳でもないし、一緒に入れる時間が心地よい。
「そのさ、ロウって好きな人いる?」
「……え?」
コップに注いだジュースが半分くらいになった頃、ゴンの口から耳を疑いたくなる言葉が出てきた。
いきなりそんな事を言われて、ゴンを二度見してしまう。
「そんな事、聞いてどうするよ」
ここで、お前の名前なんて呼んだらゴン……お前はどうするんだ?拒絶はしないだろうけど、妙な壁が出来るかもしれない。
たとえゴンから俺に向けての壁は無くても、俺からゴンに向けての壁が出来てしまう気がして簡単に言える事じゃない。
「お、俺、多分なんだけど好きな人が出来ちゃってさ……。それで、ロウはどうなんだろうって気になっちゃった」
「…………」
おいおい何それ初耳だぞ!誰だよそいつは……。俺の恋は叶わないと知ってはいたけどゴンから好きな人がいるって言われると心が重たくなる。
「へ、へぇ。良かったじゃんか!好きな奴がいるのは悪い事じゃないしな!」
そうは言うけど、今の俺の声が微妙に震えていて、自分の中のショックが大きいと痛感させられる。
そうだよな、男は女を好きになるもんだし、端から俺の恋は異常で叶わないんだ。ならば、ゴンの恋愛が成就するように手助けするのが俺の役目だ。
「俺も好きな奴いるけど、きっと駄目だったから……アドバイスとか求められても力になれるかは」
たった今振られたのも同然だしな。嘘はついてないと思う。それに、この短い記憶の中で好きな奴がいたか分からねぇし。
「ロウにもいたんだ。ごめんね、こんな事聞いて!」
多分、聞いちゃいけない事だと思ったからゴンは謝ったんだろう。
「いや、だからゴンは振られんなよ?お前なら、相手の奴だって気持ちを受け取ってくれるさ」
前向きになれるように言ってみたつもりだけどゴンの表情は心なしか沈んでいた。もしかして墓穴でも掘ってしまったのか?
「本当にゴメンね急にこんな事聞きに来ちゃって」
「いや、別に」
「じゃあ、もう夜も遅いし俺帰るね!」
「あ、ちょっ……っ!」
明らかに無理して笑っているゴンは、俺の言葉を振り切って部屋から出て行ってしまった。もしかして、もう振られてたのか?
「……はぁ。」
思わず溜息を吐いてしまう。間接的に俺は振られるわ、ゴンも元気無くすしで俺はどうしたら良かったんだ……。
半分残ったジュースを片付けると俺はベッドに身を投げる様に倒れた。視界には豪華とも言えよう模様入り天井が広がり、考える事が疲れた俺は意味も無くそれをジッと眺めた。
「俺なら……幸せにさせられるのに……」
今日最後に呟いた言葉はこれだろう。この言葉を最後に俺は眠りについた。
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