判断×責任×命の危険
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久々に訪れた霊界は、いつものごとく鬼達が仕事に追われている。亡くなった人を、どうするか判決を下す仕事をしているだけ、忙しさを感じさせている。

いつもコエンマがいるデスクの方に向かえば、案の定にコエンマは仕事をしている。

「よお!コエンマ!」

「おぉ!ロウ来たのか。しかし急に何の様だ?」

声をかければ、すぐに気がついた様子だけども、今やってる仕事をすぐに済ませてから返事を返してくれた。


「あぁ……あの世界で生きてて俺の命が狙われてるらしいんだ」

「それは本当か?」

「あぁ、この身で実感した」

「……ちょっと、席を外すぞ」

コエンマは俺の言葉を聞くと、驚いた表情を見せ、近くにいる鬼に席を外すと伝え、俺を静かな場所まで案内した。



迎え入れられた部屋のソファに座ると、それに対面する席にコエンマは腰を下ろす。

「まさか、お前の口からそんな言葉が出てくるとはな」

「そんなに、意外だったのか?」

恐らく、蔵馬にあんなに修行させられて十分強くなった俺が命を狙われているという事態にコエンマは何か危機感を持っているのだろう。

「その、お前の命を狙ってる連中は、お前に勝てるだけのチカラはあるのか?」

「前に戦った時は、一方的にやられた。心臓も潰されたし、間違いなく息の根を止めに来た。妖怪じゃなければ間違いなく死んでたな」

事実をありのまま伝えれば、コエンマの表情は更に険しくなった。なんだかんだ言っても、俺はコエンマ達の仲間として、仮にもここに所属している訳だから、自分の判断ミスで死なせられないという思いに責任を感じているのだろうか。

「ロウすまんな、ワシの判断ミスだな。お主の世界をよく知りもしないで軽率な判断だった」

やはり、コエンマは責任を感じているらしい。確かに、俺は殺されかけた事は事実だが、死んじゃいない。

ただ、俺は少し意外だった。まさか、コエンマが俺の事をここまで考えていてくれた事に。そのコエンマの感情が俺にも伝わっているのか、俺にも緊張感が走り始めた。余計に死ぬことが許されなくなってしまったという事に。

「……無理に元の世界に戻らなくても良いぞ」

「いや、それは駄目だ」

そう返せばコエンマは俺がそう返すと知っていた様な表情を見せた。

「俺はあの世界に少ないけど仲間を作っちまった」

「……だろうな。さしずめ、お主がここにきた理由は、もう一度、修行をしたいのだろう?」

「まぁな、奴らを圧倒できるだけのチカラがありゃ、死ぬ事はないだろうしな」

コエンマは取り返しのつかない事をしてしまったと言う面持ちで席を立った。

「……よし、わかった。蔵馬が来られるかの連絡をする。ここで待っとれ」

この部屋からコエンマが立ち去った。コエンマも立場上、いろいろ考えてるだろうから、今蔵馬を呼ぶことが正しいことなのだろうかとも疑ってる筈だ。

少し、俺も周りの者の事を考えるべきだったな。俺は大いに能天気すぎたのだ。

数分後にコエンマが戻って来ると、部屋の入り口で俺をジッと見つめていた。

「蔵馬は来られる様だが…お主に聞きたいとこがある」

「…なんだ?」

「……もしも、お前が妖怪になる前の記憶を取り戻した時、どうする?」

何を意図した質問なのだろうか…?確かに、その事は俺の悩みの種でもある。俺が俺で無くなるのではないかと言う恐怖。

「わからない。今の俺ならば、余程の事じゃ無い限りは人間に危害を加えるつもりはない」

「……だろうな」

「もし、俺が殺人狂になったら俺の事を俺と思わないで消してほしい」

自分でもコエンマに負担の掛かることを言っているのは十分承知している。だが、こんな相談できるのはコエンマくらいだ。

「やはり、ワシはお主を……」

「それ以上は言うんじゃねぇ!俺はもともとあの世界で生まれたんだ。元の世界に戻るのは、普通であって、コエンマの責任じゃねぇ!」

聞きたくない言葉を口ずさみ始めたコエンマの声をかき消す様に言い切った。

コエンマの様子を見ると、過去に仲間だった者が凶変してしまった事がある様な心配の仕方だ。

「それに、俺は記憶が戻っても、俺で居られる気がする。根拠はねーけど、第六感がそう言ってる。俺の第六感は百発百中だからな」

「うむ。わかった。ワシは過去のお主も信じる。些細なことでもいい。何でも相談しに来るんだぞ」

「あぁ、約束する」

そう返せば、コエンマは俺を連れて魔界へと瞬間移動した。そこには蔵馬がすでに立っていて、ホッとした表情をしていた。

「蔵馬、頼むぞ」

コエンマはそれだけ告げれば、霊界へ帰って行った。俺は思った以上にコエンマに大事に思われていたらしい。

「前にあった時よりも逞しくなったな」

「まぁな、一応は実戦でも経験も多少は重ねたつもりではいるからな」

「俺に修行を申し込んだのは、さしずめ相手がいなくなったと言う事かな?」

この少ない情報で俺の状況を見抜くとは、どんな頭脳してるんだ。前々から、俺の考えてる事が、いつも把握しているようでゾッとする。

「んで、一ヶ月くらい修行したくてさ」

「あぁ、そのくらいの期間ならスケジュール的にもどうにかなる。それだけの期間があれば、更に十分な力を扱えるはずだ」

良かった……。ジェイドくらいは軽くあしらえる程度の力にならないと安全とは言えないからな。

「それに、今回はとっておきの食事も用意している」

「とっておきの……食事?」

「あぁ、楽しみにしてくれ」

あんま期待したくないなぁ。第六感が危険信号を出してるから可能なら食べたくない。だが、第六感はあくまで、味に関してヤバイと伝えるだけで食べるなと伝えてるわけじゃないから、危険なものではないのだろう。

「さて、早速始めるか」

「あぁ、蔵馬頼むぜ!」
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