修行×修了×ハンター試験
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過酷な日々が続き、3日後には俺の妖力値が100を超えていた。流石は俺だな。妖力値の上がり幅よりも、あの無茶苦茶な修行に耐えられたなんて。

日に日に過酷になるメニューに俺は日が過ぎていく度に修行する事が恐怖になってる。
早く解放されたい、そんな思いが脳裏によぎるも、その反面で妖気のコントロールがかなり出来るようになり、これが癖になって案外楽しい。

そのおかげで妖気の使い方も少しずつ体に染みてきて、ようやく人間にも化けられるようになった。

獣人状態と同じように、皆が知る普通の狼の姿も違和感なく過ごせる。計3つのフォルムがあれば、何かあっても事足りそうだ。



俺が妖気の扱いに慣れてくると共に、実戦も交えた修行になった。ここに来て7日で俺の妖力値は300近くまで上がった。つまりは目標の妖力値なんだ。少しだけ俺って天才なんじゃないか?と思い始めた。

だが、調子に乗っていたのが仇となって、蔵馬も乗り気になって来たのか、この修行を楽しみ始め、内容は過酷なものとなった。

それでも、適度な食事や睡眠があったから結構、満足してたりするけどな。
食事のなかに物凄く不味い薬草を入れてくるのは勘弁だけど。

結果、修行を始めて15日が立った頃には妖力値が800まで上昇したと言う。それから、人間界での修行が困難になってきた。

蔵馬曰く、もう少し規模のでかい事をしたいから安全なところでやりたいとの事だ。確かに俺の扱える力も大きくなった以上は頷ける。

「よし、これからは魔界で修行しようか」

「……は?」

頷けるとは思ったけど蔵馬は何を言っているんだ?そんな所が存在するのか、と思ったが考えてみれば霊界が存在してる以上、別におかしくないのか。



蔵馬に無理やり連れてかれた魔界と言うのが、これまた恐ろしいところだ。頻繁にどこかで雷が鳴り響き、遠い場所だが不気味なオーラが沢山放たれる世界。そいつらは俺からかなりの距離があるのにも関わらず、ここからでも認識できる。

これは俺も今以上に修行しないとな…。戦闘する時がこの先出てくるのかわからないが、強いなら誰にもビビる事なく生きていけるだろう。

「これが魔界さ。気分はどうだい?」

「うん…ぞくぞくする。…俺ここで死なないよな?」

「あはは、油断しなきゃ流石に死にはしないよ」

冗談交じりで言った俺も俺だけど、こいつ冗談抜きで言ってるのか?この世界で俺が生きていけるとは思えないんだが…。そもそも油断しなきゃってなんだよ。

くそ、他人事ひとごとだと思ってふざけたこと言いやがって。威勢は張ってるけど立っているだけでも精一杯なんだ。

遠くにある妖力といえど威圧感が凄いんだよ。今でも押しつぶされそうなくらいにさ。

「じゃあ、ここからは俺と組手だ」

「……はい?」

俺から精一杯、気を保っている中で御構い無しに組手をしようとする蔵馬に俺は聞き返してしまった。確かに、修行しに来たわけだけど。

「単純に妖力値だけを高めても戦術が駄目では全て無意味なんだ。戦術も磨かなきゃ、それは強さとは言えない。ましては、格上の妖気にビビっていては闘いすらできない」

俺の今の状況を見抜いていたのか蔵馬は真剣な目つきで言う。これは本気の目だ。
「この修行って死ぬかもしれないのか?」

「修行なんだ、安心すればいいさ」

あぁ、死にはしないのか。と思いたいけど妙に含みのある言い方をするせいで、より一層と俺の中の警戒心は強まった気がする。つまり、遠回しに安心できないと言うことを伝えられたようにも思える。これは、いつも以上に気合入れなければ大怪我はするかもな。

「さぁ、始めよう」

蔵馬は俺から少し距離をとれば構える。俺も構えてみて気づいた。今組手する相手が本当の格上だと無性に血が騒ぐ。全身の妖気が、俺の感情の昂ぶり表しているように溢れ出てくるんだ。

「今さ、凄く血が騒いでるんだ」

魔界に来てから5日経って俺は単純に妖力値というものが、遥かに上がったと思う。計測器によると1500を記録した。

蔵馬の修行は……というよりも組手は、実戦に役立つようなことが多い。蔵馬の技が多用で考えさせられ対応の仕方などを学んだ。単に腕っ節の強さが全てでない事も深く理解できた。

そんなこんなで、色々学びつつ打倒蔵馬の勢いで頑張っている。まぁ、根本的に力の差がありすぎて、いつの日になるかわからないけど。



蔵馬いわく、そこそこ天才的な才能があるらしい。そんな俺の事を、もう暫らく鍛えたかったらしいが、期限を超えて修行するにはコエンマに申し訳ないとの事で修行は終わった。正直、それを聞いた時は物足りなかった。

「これで修行は終わりだ。よく付いて来てくれたね。俺も途中からは、かなり楽しくやらせてもらったよ」

「いや、俺も相当強くなったみたいだからな。あんたのおかげで」

礼を言うと、蔵馬は少し照れ臭そうに言う。かなりの鬼コーチだったが終わってみれば、俺も楽しかったのかもしれない。途中からは本当に俺を殺す気で組手していたんじゃないか疑っていたけど。

「それで、いつも考えていた事なんだが、名前について伝えたい」

「……名前?俺の?」

「あぁ」

蔵馬が俺の為にそんなこと考えてくれてたのか。確かに名がなかったら、これから先に不便だとは考えていたが、まさか蔵馬が俺の名前を考えてくれてたなんて嬉しいな。

「それでロウって考えたんだけど……どうかな?」

「おぉ!なんだか良さそうだ!」

ただの直感で良いと思った。なにより、蔵馬はこう言う場面では決してふざけたりはしないから良い名前何だろう。それに、自分で自分の名前を考えるのも気が引けてたし、結構嬉しい。これで、他人に名乗れる。

「よかった、気に入ってくれて。それじゃあコエンマの所に戻るか」

「おうコエンマのやつ、俺がここまで強くなった事にビビるだろうな」



霊界に行いけば待ってたかの様にコエンマはこちらに歩みよってきた。いや、オーラでコエンマだと判断したものの、俺が前に見たコエンマとは姿が違いすぎる。

俺の知ってるコエンマはスラッとした体型で、割と爽やかな雰囲気を醸し出していて、俗に言うイケメンという奴だ。

だが、今のコエンマは2.5頭身位のちびっ子だ。確かにおしゃぶりを咥えているんなら、今のちびっ子の姿の方が違和感はないけど。

「おいコエンマ。一か月ぶりなのか知らないけど、お前、縮んだんじゃないか?」

「ち、縮んだ?あぁ、あれは人間界ようの姿だったからな」

つまり、今の姿が本来の姿だったという訳か?どんどん閻魔様のイメージが崩れていくんだが。こんな男児くらいの見た目で閻魔というのが務まっているのが怖い。

「しかし、蔵馬に頼んで正解だったな。予定の20日間で目標の300を大幅に超えて1500の妖力値になるとは。想像を超えていたわい」

へへへ、驚いてやがる。だが、こんなに強くなっても蔵馬には勝てないんだよな。闘っててわかったけど、根本的に桁が違うんだよな。

まぁ、晴れて自由の身になれるわけで元の世界に戻ったら何をしようかな。やっぱり人間達の生活には狼の俺からしても興味深い。

「そうだ、言い忘れておった。ロウには元の世界に戻ったらハンター試験というものに受けてもらうぞ」

「ハンター試験……?」

そんな事、今まで聞いてないが…。いや言い忘れたと言っているから初耳なのは当たり前の事か。

「ロウに代わって手続きは、こっちで済ませておいた」

しれっと言うけど、勝手に手続きだけ済ませたのかよ。試験というから知力テスト。……ん?ちょっと待て。試験どうのこうのより、なんでコエンマが俺の名前知ってるだ。

だって俺の名前は、ついさっき蔵馬が名付けてくれた名前なわけだから、本来なら俺と蔵馬以外は知らないはず。蔵馬もここでは一回も俺の名前をここで読んでねーしよ。

「なんで名前しってる?」

どやしつける様に言えば、コエンマの表情が少しだけ申し訳なさそうな笑顔になる。

「いやぁ、ハンター試験を受ける手続きしてたら当然の如く名前を聞かれて、ぼたんや蔵馬と考えてたんだ。」

「じゃあ、もし気に入らない名前だったとしても、はじめから俺に拒否権はなかったという事か……?」

流石にイラっとしてコエンマを睨みつけた。蔵馬が名前なんか考えるとは思わなかったが、そんな事情が隠れていた訳か。なんか納得した。

それに俺には何もかもの拒否権が存在していないんだ。なんちゅーところだは。

「わ、悪いとは思っとる。でも名前なくては不便だろう!ハンター試験を合格すれば身分証明書にもなるんじゃし!」

確かに名前があれば便利。身分証明書もあれば生活にも困らない。だけど、俺の意思を無視して全て独断で決めるのよしてくれよ。

「ハンター試験のことを最後に伝えておく。ザバン市と言う所の飯所ご飯という定食屋でステーキ定食を注文し、焼き加減は"弱火でじっくり"と言うことで、ハンター試験会場に着く」

「……まぁ、暇潰し程度にやっとく」

会場に行くまでも試験なのか。結構めんどくさいんだな。まぁ、修行の成果を実感したいから力を試せる場面があれば良いけど。

「じゃあ、又いつか会おう。」

蔵馬は微笑んでそう言う。名前の事についてはモヤモヤするが、なんだかんだ言って蔵馬は俺にとっての師匠だ。

「あぁ、またいつか組手しような」

そう言い残して、オレはコエンマのワープで元の世界に戻ってきた。この世界で俺の新しい人生が始まることになる。

コエンマに連れてかれた場所は人間が集まる街の様な所だ。比較的、大きな建物が多く試験会場も周辺にあるのだろう。

「ここは既にザバン市だ。あそこの定食屋が試験会場に繋がってる」

「おぉ、どうも。それじゃ」

「あぁ、待たんか!」

すぐに定食屋に向かおうとすれば、コエンマに呼び止められた。まだ、俺に何か用があるのか。

「餞別だ、受け取れ」

コエンマを見てみれば、ポケットから何かを取り出して怪しい物体を俺に手渡した。嬉しいと言いたい気持ちは山々だが、めっちゃめっちゃセンス無い瓶だ。

「……これは?」

「封魔の瓶だ。もし、この先に暴れる妖怪が現れたら、これに入れて持ってきてくれ」

確かに妖怪の事はよく知らないが、何らかの事情で危険な妖怪もいるかも可能性もあるのか。まぁ"暴れる"妖怪がいたら使うとしよう。

「わかった。じゃ、何かあったら連絡するなー」

コエンマと別れてから、俺は早速ハンター試験会場に繋がっているという定食屋に向かった。

定食屋さんに入ると店主が「いらっしぇーい」と言う。室内はステーキ肉がたくさん焼かれていたのか肉の臭いがすごい。

「焼肉定食を頼む。あと、え〜と弱火でじっくり焼いてくれ」

そう言うと店主の眉はピクッと動き女性店員が現れて奥の部屋に誘導された。コエンマの言うとおりなら、これで試験会場にたどり着くはずだ。

俺は椅子に座って一息つけば、個室は揺れ始め移動をはじめた。どうやら、この個室はエレベーターのようになっているらしい。一応、蔵馬から人間界についても勉強させてもらったから、これしきでは驚かないぞ。

「とりあえず、目の前にある肉だ。本当は生でも良いけど、熟成させた肉を焼いて食うのもも上手いんだよな」

マジで旨そうだ。やっぱ狼だからかな?肉みると無性に腹が空いてくるなぁ。フォークを手に肉を口に運ぶ。意外にもジューシーだな。これなら幾らでも食べれそうだ。

食べ終わると、丁度良くエレベーターは止まり扉が開いた。肉を平らげた俺はエレベーターから出ると豆みたいな奴に406と書かれたプレートを渡された。

「えっと、406番か。」

辺りを見渡してみて、二人ほど脅威だと思える人物がいる。その二人は危険だと察知するが、それだけを危険視するのは誤りだ。俺が人間に化けている間は妖力が通常の1割程度しかだせないため、弱いと思ってる格下にだって負かされる可能性も十分にあるって訳だ。

とりあえず危険と思える人物がいる以上は悪目立ちしないように心掛けるか。厄介ごとには関わりたくはないし。

壁にもたれかかって時間が来るのを待機していれば小太りのおっさんが近づいて来る。目を開いてやれば、この男は口を開いた。

「俺はトンパ。よろしく」

当然の如く握手を求める男に俺は握手を交わした。何だか怪しい眼差しをしているが、握手も断れば感じが悪いからな。

なぜ、怪しいと勘付いたか?それは、記憶がなくとも野生動物やってると本能で顔つきや眼球の動きで何と無く怪しさくらい見抜ける。

「ところで、新顔だね君」

「なんで分かるんだ?」

普通を装って返事したけど、こいつ怪しいぞ。本当は危険だと判断してるから離れたい所だが流石にそれは失礼だよな。

蔵馬から、ある程度の一般常識は学んだ。あくまで常識だから目上の人との付き合い方とか不安は残るけども。

「まーね!なにしろ10歳から35回もテストを受けてるから」

胸を張って自慢する様に言ってるが、まったく自慢出来る事じゃない。それに、何か本意を隠してる気がする。合格するために受験しているとは考えられない。それとも、この試験は本当に過酷な物なのだろうか?

俺が考え事をしていれば、トンパはポケットから缶ジュースを取り出して俺に渡してきた。信用していない人の飲み物が喉を通るとは思えない。

「…いらん」

「ど、どうしてだい?」

「そのジュースの原料に俺のアレルギーがあるから飲めないんだ」

蔵馬から教えてもらった、どうしても食べられないものがあった時の切り抜け方を使わせてもらった。
普通に断れば相手が気を悪くするかもしれないから、あくまで自分の非を前提として断る。
すれば、相手も勧めてこなくなるし気も悪くならないらしい。現にトンパの機嫌も損ねてはいないようだ。

「じゃ、少し仮眠とるから」

「あぁ。次は君が飲めるジュースを持ってくるよ」

いらんいらん…。二度もアレルギーを理由に断れる物なのだろうか?蔵馬に会う機会があれば聞いてみよう。
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