ハンター×試験×志望動機
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ジリジリとベルの様な音が鳴り響いた。音の鳴る根源に視線を向ければスーツを着た男が立っていた。
髭が特徴的で、スーツを着こなしたダンディな雰囲気の男。そして、強者特有のオーラを纏っている。
蔵馬から聞いた話だが人間は妖気ではなく霊気を使うらしい。この世界での呼ばれ方知らないが、恐らく彼は"それ"を使える人間なんだろう。
あの男が自己紹介をすれば、ハンター試験関係者でサトツと言う事がわかった。
サトツは後について来いと指示した。表情がさほど変化しないせいか何を考えているか全く分からない。
それから暫くして二次試験会場に案内すると言ったということは、これが一次試験という意味で取っていいんだな。
徐々に上がっていく歩行スピード。歩くだけでは追いつかないスピードになっていき、受験者みんなが走り始めた。
(スピードが上がってきたな)
体力面での持久力を測っているのはわかるが、どこまで続くかわからないという精神的苦痛を与えてくる。
修行してた時に蔵馬の事を思い出す。走ってこいって言われて走ってたけど、いつまで走るのかが分からずに一日中走った時はキツかった。しかも、組手の後で俺がぐったりしてる時に指示しやがったからな。
あれから、80km程走って ようやく一人の脱落者が出た。なんだかんだ言って、この試験って人間にとっては結構なレベルだ。
更に進めばサトツが階段を前にペースを上げると言い出して、これから脱落者が続出する雲行きが見えはじめた。
それも階段を走るのだから今まで以上に疲れるぞコレ。
「ねぇ!お兄さん!」
先頭目指して走っていれば後ろから声を掛けられた。特別と言って目立つことはしてない筈だから声を掛けられたのが意外だった。
呼ばれたので振り返ってみれば多分10歳程の少年が俺に何かを突き出していた。
「これ、落としたよ」
「……あぁ、まじ?」
少年の手にあったのはコエンマから貰った封魔の瓶だった。
こんな趣味の悪い瓶を持ってるのは俺だけだし間違いないよな。
多分、階段を上がってる途中に振動でポケットから落ちてしまったのだろうな。
「どうも。わざわざありがとな」
「えへへ、どういたしまして」
俺が礼を言えば笑顔で返してくれる。何だか魅力的な笑顔だ。男なのが惜しいけど、こう言う可愛らしい男ってのが意外にモテそうだな。
「にしても、気持ちわりーデザインの瓶だよな」
隣にいる銀髪の子は瓶の柄を見ながら言った。事実、俺も受け取った時に同じ事思った。やはり、誰が見ても気持ち悪いよな。
緑色の壺で大きさは錠剤が入ってそうな大きさの瓶。ニターッと笑っているような顔が瓶に描かれていて、落としたまんまでも良かったと思ってる。
「同意意見だ」
「あはは、でもこれアンタのじゃねーの?」
なんか俺の趣味で持ってることになってねぇか?全くもって、それは誤解だ。あのコエンマとか言う可笑しな奴から無理やり受け取らされた使い道があるのがわからない瓶だ。
「これ貰い物だから俺の趣味じゃねーからな」
「てっきりあんたの趣味かと思ってた。何度見てもセンスねーしな。俺でも、もうすこしマシなの作れるぜ」
「キルアそんなに言っちゃ駄目だよ!」
小さな声で言うが俺の耳にはバッチリ聞こえてるぞ。あくまでダサいデザインなのはお前も否定しないんだな。俺も肯定してばっかだけど。
少し話していて楽しかった。人間の暖かみってやつか?いや、それとは違う気もする。
「ねぇ、お兄さん名前は?俺はゴン!」
そんな事を考えていれば、ゴンと名乗る黒髪の方の少年から名前を聞かれる。
名前を聞いたのは少し話していて意気が合いそうだと思ったからだろう。俺も二人の目を見た時、信用に値できる人物になるって直感が伝わってきた。
「俺の名はロウ。で、そっちの君は?」
「あぁ、俺?キルア」
あー、この二人は相性良さそうだな。でも、俺の第六感がキルアとも仲良くなれると伝えてるけど、ゴンとは最高の関係を築けるだろうって俺に伝えている。
なんだろう…友達以上の?という事は親友だな。なんだか俺の勘は良く当たるし。
「ねぇ、ロウは何でハンターになりたいの?」
ゴンは俺の顔を見るとハンターへの志望理由を聞いてきた。碌な理由じゃないから話すのが少し気がひけるけど。まぁ、適当な事を言うよりは本当の事を言った方が良いだろう。
「成り行きかな?上の者に受けろって言われて仕方なく。勝手に手続き済まされてたし」
俺が苦い顔をして言えば、ゴンは期待してた答えからかけ離れすぎていたのか困ったように笑みをこぼした。多分、夢と希望に溢れた回答を期待してたんだろうなぁ。
「キルアは何で?」
ゴンが気を取り直してキルアにも聞くと、キルアは素っ気ない表情で答えた。
「別にハンターになんか、なりたくないよ」
キルアにも何か事情があるのかな?碌でない理由で受験してるのが俺だけじゃないみたいで何か安心するな。俺と同類みたいで安心するな。
「ものすごい難関だって言われてるから面白そうだと思っただけさ」
前言撤回。全く俺と同類じゃなかった。やっぱり他者によって強制で受けさせられるのって俺くらいか。
というか興味本位で受験するってスゲーな。でも、それを言うだけの事はあるのはわかる。キルアは未だに一つの汗も出てないし余裕の表情だ。
「で、この話題を持ち出したゴンの志望理由にはどんな夢の詰まった話があるのか?」
「そ、そんな夢の詰まったとか言われても…」
若干、ハードルを上げるように言えばゴンは困った様に返事する。だけど、その表情だと満更でもないみたいだ。
「俺の親父がハンターをやってるんだ。それで、親父みたいなハンターになるのが目標なんだ」
ゴンが尊敬しているハンターと言うことか。それも自分の父で憧れて今回のハンター試験に受験したのか。俺とキルアと違って立派だな。
「どんなハンター?親父って」
「わかんない!」
キルアが少し興味ありげにゴンの父親について聞いてみたがゴンはキッパリとわからんと言う。立派とか言ったけど撤回したい。
「おいおい、なんで知らねえんだよ」
ツッコむように言ったけど、よくよく考えれば俺は自分が何者なのかも知らないからゴン以上にヤバイ気がするけどな。
「俺、生まれてすぐに、おばさんの家育てられたから親父は写真でしか知らないんだ。でも何年か前、カイトっていう人と出会って親父のこと色々教えてもらえた」
ルルカ文明遺跡の発見や二首オオカミの繁殖方の確立などゴンの父がやってきた功績をゴンは続けて語った。
「それって凄いことなの?」
「うーん、分かんないや。ただ、カイトは自分のことみたく自慢気にとても嬉しそうに話してくれた。それを見て思ったんだ。俺も親父みたいなハンターになりたいって」
ゴンは少しだけ輝かせたような瞳で言っていた。やっぱりゴンは立派だったみたいだ。根本的に俺とは違うな。
「見ろ!出口だ!」
キルアの言葉に視線を上げてみれば僅かな光が、俺たちの走る通路の先に漏れていた。案外、距離としては短かったが、この試験だけでも結構の脱落者は出たんじゃないのかな。
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