焚火×星空×個々の想い
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昼過ぎになると再び森の中に探検しに行くことになった。昨日とは違う場所を歩き回り食べられる木の実とかをゴンに採ってもらった。

「ゴンって詳しいよな」

「え、なにが?」

今さっきゴンから手渡しで貰った木の実を食べながら言えば、ゴンは不思議そうに聞き返す。森の事に詳しいって自覚ないんだな。

「いや、何でもねぇや」

澄んだ空気を吸いながら食べると言うのは、これはまた格別で、少しだけ懐かしい気持ちになっていく。まるで、俺が昔どこかの森で飯を食べていたかのようだ。


「にしても、この木の実おいしいな」

「あぁ〜、やっぱロウも喜んでくれると思ってたよ。その木の実はね、トリュフベリーって言うんだ」

確かに見た目はトリュフに似てたな。見た目は焦げ茶色だったけど中身が白かった。それでいてイチゴとは微かに違うけど、それに近い味だった。

「これね、ガルが一番好きだった木の実なんだ。やっぱりロウってガルと似てるから……ちょっと食べさせてみたくって」

「…………」

少なからずガルは俺自身に関わってることには間違いなさそうだな。だが、俺が死んだのは恐らく100年前の争いで……いや俺が100年前に死んだ証拠がない。ま、まさか……な?


「ごめん、やっぱ嫌だったかな?」

「あ、違う違う!ちょっと考え事しててだな……そのガルって奴が俺と無関係とは思えなくてな」

俺が思わずそう口にしたらゴンはポカーンとした表情で俺を見ていた。

「無関係には思えないってどういう事…?」

「い、いや……」

まだ、確信に迫った訳じゃないしゴンを期待させるような発言はこれ以上出来ない。

「いや、特に深い意味はねぇよ。ただ、ゴンの言うガルって奴が、そこまで俺と似てるなら俺の血族とかなのかなって」

「そっか、じゃあ食べたら次はあっちに行ってみよう?」

この会話から俺はどうしてもガルの正体ばかりが気になってしまい、ゴンもキルアも心配そうな顔で俺を見ていた。

「……なぁ、お前自身がガルって可能性はないのか?」

唐突にキルアから告げられた言葉にギクリと身体が硬直してしまう。確信した訳じゃないが可能性としては十分にありえたからだ。

「まさか、そんな訳ねぇよ」

「ま、そうだよな。」

思いつきで言ったのかキルアはあっさり引き下がってくれた。だが、何のために言ったのかが検討もつかない。



夜になると薪を集めて小さな焚火を焚いた。三人揃って仰向けに横になれば、星空を眺めていた。

「お、見えるな」

星空を眺めて言えばゴンとキルアは何かを見つけた俺に反応する。

「何見つけたんだ?」

視線は星空に向けたままのキルアが俺に聞いてくる。それにゴンも「俺にも教えてー?」と続けて俺に言った。

「あー……大したことじゃないけど、あの大きく光り輝いている星見えるか?」

「あの星がどうかしたの?」

「ん、いやな。あの星がシリウスなんだ。おおいぬ座で最も明るい星だな」

ちょっとした解説も交えて言う。シリウスという言葉にゴンもキルアも反応したようでマジマジと見ていた。

「ロウはあの星で?」

「いや、あの星の近くの星だ。シリウスはこの星で言う太陽の光の部類で言わば恒星だ。俺が生まれたとされた星はシリウスを中心に公転してるんだ」

もう少しだけ詳しい説明を交えて言えば、二人とも軽い相槌を返した。それもそうだろうな。俺もよく知らないし2人もよく知らない。

「……もし、俺が記憶を戻した時。俺をどう扱う?」

俺が一番気になっていること。俺が天狼だと知り更に妖怪だとも知った二人が、記憶を取り戻した俺とどう接するのかが気になった。人格が変わるのかは定かじゃねぇけど。

「ロウはどうして欲しいの?」

「……出来れば今のままでいたいさ。でも、人格が変わっちまえばそうはいかない」

そう言えばゴンは黙ってしまった。ゴンも同様に出来れば俺と一緒にいただろう。自分で言うのもアレだが正直、ゴンからは厚い信頼に置かれてるからな。

「ねぇ、もしかして手かがりでも見つけたの?」

「………え?」

唐突に放たれたゴンの言葉は、少なからず無意識の内に焦燥する俺の心境を把握し、そこから今までの会話から考えた言葉だったのだと思った。つまり、俺の様子からゴンは、俺が記憶の手がかりを見つけた事を察したんだ。

「だって今朝からロウおかしいよ。心ここに在らずって感じで…今すぐじゃないけど俺達と……」

そこまで言うとゴンは黙ってしまった。『すぐじゃないけど俺達と別れるみたいで』とでも言おうとしたのだろうな。俺も、そんな気がしていた。

だから俺はゴンに武術を教えてたのかもしれない。俺がゴンを守れなくなる時がいつか来ると心のどこかで感じているから。

「お前にこんな事言うのは間違いかも知れないけどさ、その記憶って絶対思い出さないと駄目なのか?」

「……あ、いや別に絶対って訳じゃないさ。でもいきなり記憶が戻るのも恐ろしいし。出来れば好きな時に記憶を戻したいな」

ものすごく都合のいい事を言う俺にゴンもキルアも今までの緊張した表情が一気に緩んで息を吐いていた。

俺は横になっていた上半身を起き上がらせると座ってゴンを見つめた。

「……何故かは知らないけど思い出さないといけない気がするんだ。根拠はねーけどな」

「それも……ロウの第六感が伝えてきてるの?」

ゴンの問いかけに俺はコクリと肯定の意を込めて頷いた。俺の第六感が、そう伝える、または促すから俺にとって必要な事なんだ。

「なら俺の事は気にしなくても良いよ。ロウはロウだから。俺さ、ロウも信じてるけどロウの第六感も信じてるんだ」

「……なんじゃそれ」

思わずゴンにツッコミを入れてしまった。ゴンは笑ってるけど、俺はちっとも笑えない。でも、ゴンがこうやって笑ってくれるとどこか安心できる。

「だってロウの第六感って、まるでもう一人のロウみたいじゃん」

「……言われてみれば、そうかもな」

自分でも気がつかなかったけど、ゴンにそうやって言われて初めて気がついた。確かに、俺の第六感って俺とは別の意思を持っている誰かのようだな。

「もしかしたら俺の父さんなら、ロウの記憶の手掛かりについてわかるかもしれないしさ」

「お前の親父すげー奴なんだもんな。あはは、じゃあ俺の目的もゴンの親父探しに転向しようかな?」

「じゃあ、これからも俺と一緒だね」

微笑んで優しい言葉を口にするゴンに暖かみを感じた。手掛かりがガルにあるかもしれないなんて言ったらゴンは驚くだろうな。


「でも、良いよなーお前ら。」

俺とゴンのやり取りを目にキルアは少し意味深な事を口にした。

「え、何が?」

ゴンは疑問のままにキルアに聞き返せば、キルアも上半身を起こし俺とゴンを見た。

「俺って無いんだよなー、やりたい事って」

なるほど……目的があるか無いかという事か。確かに、俺も記憶を取り戻すっていう目的がある訳だしな。ゴンは親父を探す目的で。

「俺さ、やりたくない事なら結構あるんだ。家にずっといる事とか、家を継ぐ事」

まるで今まで心の中で悩んでいたことをスッと言葉として出すキルアに聞き入ってしまう。

「なんか羨ましいよお前らが」

「俺、キルアといると楽しいよ」

遠くを見て言うキルアに、ゴンはキルアを見つめて意図の読めない言葉をキルアにかけた。

「なんだよ急に……」

「この島、出稼ぎの漁師が長期滞在する為の島だから子供が少なくてさ。勉強も自宅で通信スクールだったし……だから同い年の友達はキルアが初めてだったんだ」

確かに、この島を歩いてたけど子供なんて一人も見なかったな。そうするとゴンにとってのキルアってのは特別な存在だよな。

「俺だってそうだよ。家から出させることは多かったけど、それも全て人殺しの技術を磨くための訓練でさ、幼気な俺には命懸けだったしゴンが初めてだよ」

そっか、当たり前の事だけど殺し屋としての技術は努力して付けないといけないもんな。確かに、あのシルバが親だと大変だったろうな。

「キルアは俺といて楽しい?」

「え、そりゃあー……まぁな」

今こうしてゴンとキルアの会話を聞いてると、今のキルアが先程の俺と重なって見えている気がした。

「じゃあ、これからも一緒に居よう!一緒に色んな所へ行って、一緒に色んな物を見ようよ。俺は父さんを、ロウは記憶の手掛かりを、キルアはやりたい事を探す旅。きっと楽しいよ!」

キルアに行っている筈の言葉なのに俺まで心を打たれてしまった。俺が、ゴンのどこに魅力を感じているのかが今日、わかった気がする。

言葉では表し辛いけども…話せば話すほど俺たちはゴンに救われているんだ。何だろうな……もし俺が記憶を取り戻して人格が変わろうとも、ゴンが居れば元通りに戻れる気がするんだ。

「そうだな」

「でしょ?」

キルアが少しだけ微笑んで返事すれば、ゴンは笑った。キルアも……ゴンのそう言った見えない力に惹かれたんだな。

「よーし、やりたい事がみつかるまで、お前の親父探しに付きやってやるか!ん、そういやお前のお袋さんって何してんの?」

何かに気がついたキルアはふとした表情でゴンの母親の事を聞いていた。そのことは俺も気にはなっていたが聞きづらかった。

「父さんのこと以上に聞き辛いんだよね。母親の事って。ミトさんがずっと親代りで俺を育ててくれた訳だから。そう言うの聞くのって何か悪い気がしてさ」

そっか、ゴンにとっての母親はミトさんだもんな。俺にはわかんない事だけどさ。親の事なんて。

「父さんの事もカイトに会わなきゃ無理に知ろうとは思わなかったし」

「でも、ゴンならどの道ハンターにはなってたと思うけどな」

俺がそういえばキルアも同じ事を思ったのかコクリと同意見だと頷いていた。

「二人とも交通事故で死んだって聞いてて、でも父さんは生きてるってわかった時、何となく母親の方は死んだんだろーなって勝手に納得しちゃってさ」

「何という……」

あまりにも酷な内容で思わず心の声が漏れてしまう。でも、育ての親がミトさんで良かったなと俺は思うな。何となくだけど。

「俺にとって母親はミトさんだから。他にいないんだ。だから聞く事もないし」

多分だけど……ゴンが歳以上に相手の気遣いが出来るのは、そう言った環境で育ったからだと思う。きっと小さい時からミトさんのことは悲しませたくなったと思ってるし、今もゴンは変わらない。
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