想い人×愛情×過ごした時間
◆◇◆◇◆◇◆◇
まだゴンとキルアが眠っている中、俺一人が規定の時間に目が覚める。ミトさん曰くガルが目を覚ます時間らしい。
二人の寝顔だけを見ていたらハンターの上に念能力者だと言う風にはとても見えないな。
「……いつみてもゴンの寝顔は変わらない」
洗面所に足を運ぶと軽く顔を洗って歯を磨く。ボーッとしつつも昨晩、キルアが何かに気がついていた事が気になっていた。
あいつ……自分の口からは言えないって何に気がついたんだ?でも、ゴンの口から聞くべきだって言ってたし。
んじゃあ、ゴンは知ってるのか?でも、どうやってゴンに聞けば良いのか分からないしな。キルアが何に気がついたのかも俺には分からないのに。
「おはようロウ」
「ん?あぁゴンも起きたのか。おはよう」
振り返れば目覚めたばかりのゴンが立っていて、まだ少し眠そうな様子だった。今は5時だし、昨日はしばらくゴンが寝室に来なかったから夜更かししたんだろうな。
「なぁ、ゴンが前に言っていた好きな奴って俺も知ってる奴か?」
「っえ!?」
そんな飛び跳ねそうになるほど驚くことねーだろ。
「いきなりすまんな。ちょっと気になってだな……」
今更過ぎるし、ゴンもまさかこのタイミングで聞かれるの思わなかったのか顔を赤くし取り乱していた。
「あの時の事だね。その……さ?」
何かを言葉を出そうとしている様だけど、少し俯いてるゴンの顔がどんどん赤くなる一方で何も進まない。
「いや、恥ずいなら無理して言わなくても良い。ただ単に興味本位で聞いてるだけだし」
「その……ロウの知ってる人だよ?こんな言い方も変なのかも知れないけど……間違いなく……」
お、俺の知ってるやつだと!?いや、それって結構限られた人だと思うけど……。ま、まさかあいつじゃ無いだろうな……?
「ヒ……ヒソカか……?そんな、もじもじするくらいヒソカのことが好きなのかぁ!!?」
「っ!?そ、そんな訳ないじゃん!どーしてヒソカになるんだよ!」
「あはは、ごめんごめんよ」
ふざけた事を言えば、本当にふざけた事でゴンも驚いていた。これで頷かれたらどうしようかと思ったよ。
んでも、俺の知ってる限りの人だと女性って……クラピカは恐らく男だと思ってるし……。ミトさんは多分ないと思うし……。
「あれ……思いつかねぇぞ?」
「ほら、もうこの話は終わり!」
「お、おう。」
必死に止められて俺は口にするのはやめた。頭の中では考えではいるけど……。第一、天空闘技場に滞在してる時に相談を受けたから闘技場のファイターか?
それなら女性も何人かはいたしな。でも、ゴンって一目惚れとかするのかな……?恋とか疎そうだから、気づくまでに時間かかりそうだし。そもそも、俺の知ってる人物って言ってたからファイターは無いか。
そういやキルアが自分の口からは言えないって言ってたな。もしかして…ゴンとキルアが裏で付き合っていて、キルアは俺がゴンが好きなのを知っているから言えなかった、とか……。
「……ま、まさかキルアか!?」
「っ!?違うよ!キルアは友達!これ以上は言えないよ!俺だって恥ずかしいし!」
「あははごめんごめん。俺の知ってる人ってのも限られるから気になっちゃって」
一応謝るけど、ゴンはわざとらしくムスッとした様子を見せる。そんなゴンも可愛いと思ってしまった俺は再度、手遅れだと認識した。
「ロウの方こそ失恋したって言ってたし、その人こそ誰なのさ?」
「あぁ、とっても可愛いやつだな」
「……ふ〜ん。でもロウって昔の記憶はないから最近の事なんだよね。それって俺も知ってる人?」
鋭いところを突いてくるゴンに俺は苦笑いを浮かべる。その相手が目の前にいるって言えば、どんな反応を見せるんだろうか。
前は壁が出来るかもって思ってたけど、今ならゴンは受け入れてくれる気もする。
「ある意味ゴンも知ってるやつになるのかな?あ、キルアじゃないぞ?」
あいつは友達だからな。最近はより仲良くなった気がする。
ゴンもゴンで俺の失恋した相手を考えているが、それらしい答えには辿り着けないでいるみたいだ。それもそうだろうな。そこで自分だって思っても、少しの謙虚さがあれば選択肢から外すだろうし。
「ねぇ!ロウは……俺とキルアとクラピカとレオリオの誰か一人を恋人にするなら誰を選ぶ……?」
いやいや選択肢全て男ってのがおかしいだろ。たまたま身近な人を選択肢にしたんだろうけど女が一人もいねぇ。いや、男のゴンが好きな時点で俺は十分に常識から外れてはいるけどさ。
「そりゃ、お前だろ。ゴンはどうなんだ?」
「俺なら……ロウかな?えへへ」
バシッと言ってやればゴンは一瞬、目を見開いて驚いた様子を見せたが、逆に問いかけられた俺の質問にゴンもスッと答えた。照れくさいのか少し笑いながらだったけども。
「ゴンにそう言われると嬉しいな」
「俺だって嬉しいよ」
あれ、俺たちまるで両思いみたいな雰囲気だな。本当にそんなの雰囲気が醸し出されていて自分でも少し驚いてる。
それでもゴンの好きな奴は俺じゃないだろうし……もしかしたら告白すれば本当に受け入れてくれるのかも知れない。
歯磨きをしていたが完全に手が止まっていて、俺は再び手を動かして磨き始める。その間の沈黙がどうも気まずい。勢いに任せて行ってしまった感があり、俺もゴンも顔を合わせられなかった。
十分に磨けたと判断して蛇口に手を伸ばすとゴンも磨き終えたのか、それは恋愛ドラマのようなシュチュエーションでゴンの手と重なった。
「あ……」
二人して思わずのことで声を漏らして、手が下になっていたゴンが蛇口を捻った。少々、顔が赤くなっているのは、先ほどの会話から続いて、こんな流れになったからだろう。俺も少しだけ顔に熱が帯びている気がする。
「先に洗っていいよ?」
「ん、いや俺は後で」
「そう?」
譲ってくれるゴンに俺が遠慮すると、譲り合いになるのを避けてゴンはすんなりと受け入れて歯ブラシを水で洗った。それが終われば、俺も歯ブラシを洗って元の場所に歯ブラシを立てた。
「少し……外に出ないか?」
俺がそう言うとゴンは「え?」と声を漏らしたがすぐに頷いた。実は自分でも、どうしてこんな提案をしたのかが分からなかった。
朝の空気は透き通っていて、気温もちょうど良くスーッと息を吸って少し溜めてから息を吐いた。
「やっぱり、いい空気だな」
「うん、くじら島は殆ど森に囲まれてるから新鮮な空気だからね」
確かに樹木は人間が吸うとリラックス出来る成分を放つと言うから、森が広がるくじら島の空気は綺麗なんだな。
お互いにそれ以上は何も言わずに続く道を歩いていく。自然の多いところに出れば一軒家の敷地くらいの大きさの池がある所に着いた。
鳥達のさえずりが良く聞こえる場所で、ここに来て浅いと思うが俺のお気に入りだ。
横に倒れていた倒木に二人して座れば、その池を眺める。透き通った水で、魚達が泳いでいるのが目でもわかるくらいだ。
「ねぇ、ロウの好きな人の事…教えてくれないかな……?」
さっきまでの冗談交じりの表情とは違い、今のゴンの表情は優しげで、どこか悲しげなものだった。でも、それは不愉快なものではなく抱きしめたくなるような母性を奮い立たせる表情。
「退屈かもしれんぞ?」
「それでも」
俺は視線を池に戻せば、ゴンとの旅の歩みを思い出すかのように言葉に馳せることにした。
これから話すのは全部お前の事なんだぜ?
「そいつはな、俺の生き方を大きく変えたと思ってる」
何もゴンは言わないが、しっかりと聞いているのが何となく分かった。だからこそ、口を挟まなかった。
「正直、人間界に降り立った俺としては、だれを頼りにして良いかなんて分からなかった。俺さ人の目をみれば、そいつの本質が何となく掴めるんだよね」
何か企んでいれば、それは目にあわられるものだ。だから、俺に何か仕掛けようならば目を見て警戒すべき人物を把握できる。でも、そんな事ばかりにつかってる訳じゃない。
「そいつの目……とても綺麗なんだ。色がとかじゃなくてさ。瞳ってのは心の表れで、澄んだ瞳のあいつに俺は心が惹かれた」
瞳は、その人の心を表すものだと俺は思う。だから、瞳が綺麗な奴は好きなんだ。
「最初は信用できそうな奴だな程度だった。でも、共に過ごすうちに内に秘める想いに気がついたんだよ。これは相手を愛したい気持ちなんだって」
最初は良く分からなかったけど、今思えば本当に惹かれてたんだと自覚している。
だからこそ俺は言えなかった。そんな瞳をしている奴に、好きだなんて。ましては、同性の友達から言われたらショックを受けるだろう。
「言葉にすると難しいけど、徐々に愛着ってのがわいてきたのかな?時が経てば経つにつれて好きになっていくんだ」
「俺もロウと似てる」
え?ゴンも?微笑むゴンは、俺の目をじっと見ながら言う。そんな顔で言われても照れるんだけど……。
「俺もね、好きな人と一緒に居るうちに、本当に愛したいって思い始めたんだ。こんな気持ち、最初は変だって思って……気がつかないフリをしてたけど……気持ちが膨らむに連れて隠しきれないのかなって」
そいつ、ゴンにそこまで想われてて幸せなんだろうな。もしも、俺がゴンの好きな人だったなら愛を交わす事が出来るのに。
「もうそろそろ戻ろうか。ミトさんが朝ごはん作ってくれてるから」
倒木に預けていた腰を上げたゴンにすっきりとした表情で俺に言った。
「そうだな、遅れなら煩そーだし」
「でも、帰りもゆっくり帰りたいな」
「あぁ、俺もそう思ってたところだ」
別にゴンと一緒に居られれば言葉を交わさずとも幸せを感じるんだ。共にいるだけで信じられない心が安らぐ。
いつか、俺の想いを打ち明けないとな。ずっと隠し通してるのもゴンに悪い気がする。今日で、なんとなく決心がついた気がするんだ。
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