現役×正体×昔の名
◆◇◆◇◆◇◆◇




「ありがとうゼパイルさん。もう少しで騙し取られる所だった」

ゴンは笑顔でお礼をするとは「礼には及ばねーよ」と言いつつ指を二本立てていた。
これは何を意味してるんだ……?

「二割でいいよ。その木像が売れた時の俺の取り分。」

それにキルアは「ぼったくる気かよ!」と抗議するが、騙し取られずに済んだんだから二割くらいいいと思うんだがな。


「悪いゴン、俺ちょっと調べ物しなくちゃならなくなった。」

キルアがゼパイルに猛抗議を仕掛けてる間にここを抜けるとゴンに伝える。

「さっきの指輪のこと?」

「あぁ…悪いがこれは売れない。」


ゴンは分かってくれていたみたいで頑張ってとエールを送ってくれた。記憶がいつ戻るかはわからないし、俺からの行動じゃ記憶は戻らないってジェロニモは言ってたけど。

記憶がいつ戻るのかくらいは知っておける筈だ。せめて、その時を知る事さえできれば俺も気が楽なんだけどな。



いつものネカフェに入れば、ハンター証を使ってハンター専用サイトで調べ物をする。

「旧アムリタ王国っと…。」

情報に300万掛かると言われたが支払いを済ませて情報を読むことにした。
必要なのはカーラ王子と天狼についての項目。


「うわ、カーラ王子の情報は別途で3000万も必要なのか…。」

仕方ないと思いつつ支払いは済ませて情報を得ることにした。全ては読むと丸一日かかりそうだから今は必要なのは項目だけ読むことにする。


えっと…カーラ王子には天狼が護衛についており、その天狼はジェロニモと呼ばれていた。つまり、あの指輪の名前を彫ったのはカーラ王子本人である可能性が高いのか。

ジェロニモの写真も添付されており開けば、カーラ王子と天狼が一緒に写っている写真が表示され、ジェロニモの尻尾には今俺が手にする指輪と同じものが嵌められていた。


続きの内容を読めば、天狼が第一級隔離指定種に認定された後のことも載せられていた。
カーラ王子の父ホーマ王は、この政策の下にジェロニモの殺害を試みたと言われる。

炎の灯った剣でひと突きされたと言われるが、そこに乗ったていたのはジェロニモの血痕だけで遺体は消えたと言う。

その同時刻に、旧アムリタ王国の天狼の全ての行方が不明になった。

これはあくまで当時言われていた仮説だが、カーラ王子は特質系年能力者で時を司る能力を持っていたと言われた事から、天狼を過去か未来の時間軸に飛ばしたのではと言われていた。

「……なるほどな。今まで、なぜ俺が天狼が滅びてたから100年が経過した今に現れたのか、この王子の能力って訳か。」


でも、なんで俺の心の中にジェロニモがいたんだ…?いや、そんなこと分かりきっている。もはや、ジェロニモはただの他人だとは思えなくなった。つまり…昔の、てんろうとして全うしていた時の、俺の名前がジェロニモなのだ。


「俺の名はジェロニモ…。」

だから、確実ではないけど…つまり、ロウ=ガル=ジェロニモって事で良いのか?

もしそうならば、ヴェルムケーヴで今の俺を含む3人が必要になるのも合点がいく。つまり、この3人で持っている記憶が違うんだと思う。

ジェロニモは100年前の旧アムリタ王国で天狼として仕えていた頃の記憶。

ガルは100年後にタイムスリップした後、ゴン達と暮らした時の記憶。

ロウつまり俺が妖怪として目覚めた後の記憶。


記憶が分かれた意図が、何なのかが分からない。けど、ここまで話が合ってしまえば、記憶が俺の名前ごとに分かれてると言うのは確かな気がするんだ。

でも、こうやって自分の正体が着々とわかってくると安心する。もし、昔の俺が戦争に使われた天狼で、大勢の人々を殺めたとなってたら責任なんか取れないしな。



「ふはぁー…疲れた。」

パソコンの電源を落とすと一息ついて身体を伸ばす。そろそろゴンの所に戻らないとな。



プルルルル…プルルルル…

席を立ったと同時に俺の携帯が鳴る。レオリオからの電話だ。受け取ればさらに息を飲む事を言われた。


「旅団を見つけた。」

そう伝えられ現地を聞いて、すぐにそこに向かう事になった。ゴンとキルアも今向かってるらしく、そこで合流するらしい。

ちなみに相手は2人らしい。1人なら何とかなるかと思ってたが2人は手厳しいものがあるな。手を出せるかの判断は近くに行ってから付けるとしよう。





現地のファミレスまで足を運べばゴンにキルア、そしてレオリオの姿を確認した。
3人も俺に気付いたのかゴンが「こっちこっち」と手で招く。

「んで、どうするの?……2人とか無理なんだが。」

俺の第一声がこれでレオリオとゴンが「え?」と唸る。俺にそこで期待を持たれてても困るんだがな。


「殺して良いならようろうの姿になれば可能性はある。けど、変身は人前でやったらDASにバレるし。
そもそも霊界から殺しだけはするなって告げられてるから厳しいしさ。」


「ほら、ロウなら気絶させたりとか出来ねーのかよ!」

殺す前提の俺の言葉にレオリオは別のやり方を俺に提案する。俺も始めから、そのつもりではいたけど2人の気配を察知して無理だと判断した。


「1人ならタイマンでも生け捕りは何とか出来そうだけど、2人を生け捕りにするのは戦闘経験の差が大きくすぎてリスクがデカい。」


まだ納得してくれないレオリオに俺は今の説明を補足するような事を言う。

「つまりは、生け捕りを狙う優しい攻撃なんてしてたら、俺が逆に仕留められちまう。腕っ節なら勝てるけど技術力や経験の差で返り討ちにあう可能性が高いからな。」

そもそも殺せるかも怪しいのに生け捕りは絶対に無理だ。せめて、あの2人をバラけさせられれば俺も手が出せるんだけどなぁ。


「……ロウでも難しいって、あの2人をそんなに強いのか?」

レオリオは冷や汗を流しながら聞けばキルアが物凄く分かりやすい説明をしてくれた。


「あそこにヒソカが2人座ってると考えたら少しわかるか?」


それを聞いたゴンとレオリオは事の難しさをようやく理解してくれたようだ。ヒソカと比べたら、まだ幾つかマシかもしれないけど結局は言ってる事は同じだ。


「なぜ、あいつら広場にいると思う?」

「そりゃデートだろ当然。」
「えっ、そうなの?」
「俺もゴンとデートしたい…。」

「違う!それにロウ、どさくさに紛れて何言ってんだよ!」

そんな凄い勢いでツッコミをいれるとは思わなかった。キルアのツッコミって切れ切れになってきてるよね。


「あいつら後ろのカップルにもちゃんと気づいてたぜ。」

「カップル…?」

何のことだ?そんな反応が分かりやすかったのかキルアが説明してくれた。

「あの2人の情報提供者さ。さりげなく周囲の様子や動きに細心の注意を払ってる。
俺たちもこれ以上近づくとあいつらの警戒網に引っかかるから間違っても視線は送るなよ。」

んでも、何故わざわざ人目につく広場になんているんだ?競売で狙われてる立場だから、面倒くさい連中がたくさん引っかかりそうだけど。


「人目につく広場になんかいるって事は奴らは追われてる自覚なんてない。奴ら、見つかるのを待ってる。獲物が引っかかるのを待ってるんさ。」

「狩る気満々という訳だな。」

だとしたら誰か特定の人物が引っかかるの待っているのか?奴らの事情は知らないから深くは考えないでおくけど。


しばらくドリンクを飲みながら様子を見ていれば凍りつくような空気が奴らから流れてきた。もしかして仲間割れか…?

「明らかに空気が変わったな。」

「すごいヤな感じでビリビリしてくる。」

「まさかバレたか?」

「いや大丈夫だろ、気づかれたらコッチに殺気でも飛ばしてくるだろうし。」

緊張で冷や汗を額に垂らすゴンに俺は手を伸ばして手を握った。本当は触れたかっただけ何だけど、今なら視線に見えるだろう。


「大丈夫さ、俺がここにいたら3人が逃げられるだけの時間は稼げる。」

3人が十分に逃げられれば俺だけ霊界リングを使って霊界に逃げれば良いだけの事だしな。このリングはこういう使い方しないとダメだよね。


「動いたぜ、どうする?」

「俺からもう一度言うけど二人相手は無理だ。でも、油断してくれたらワンチャンはある。最終判断はゴンに任せる。」

どうするゴン…奴らを近くに感じて立ち向かえるか?少なからず俺は嫌だぜ。でも、ゴンがここで退くような事を言ってもゴンらしくないんだよな。


「黙って帰る訳にはいかないから…追う。」

ゴンならそう言うよな。安心したけど、やっぱり俺が嫌だな。キルアも決心が付いた様子で、尾行する気満々といった顔だ。
参った、これは俺も行かなきゃな。



キルアが尾行の際に定めたルールは奴らに姿を見られない事。そして絶を使う。
もし、姿を見られたら尾行は中止で速やかに場を離れる事。それ以外にもキルアが追跡不可能と判断しても退くこと。

中止の合図はコール一回。通常の連絡はコール二回目で出ること。携帯を取り出しバイブ設定に変更する。奴ら2人がバラけたら女の方を追うと言うルールをキルアは俺とゴンに定めた。


「お前、尾行の経験なんてないよな?」

「えっとねハンター試験の時ヒソカを丸一日くっ付いてたかな?」

嘘だろお前…。あいつに気付かれずに一日中尾行とか…絶対やりたくないな。


「ロウは?」

「俺は師匠の修行の一環で、合格点は貰ったから自信はあるぞ。」

俺もゴンも十分資質があると判断したキルアは「よし十分だな」と言った。
まぁ、俺の師匠と言うだけで化け物じみてるからな。そいつから合格点は貰ったとなると大丈夫だと誰でも思うよな。それも、尾行の技術をガッチガチに叩き込まれたからなぁ…。
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