尾行×尾行×二重尾行
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ゴンの安全第一。ゴンの安全第一。ゴンの安全第一。何故だか呪文のように唱えないと落ち着かないんだ。もちろん、尾行中だから心の中で唱えてるんだけどさ。
尾行を暫くの間、続けているが団員の2人が一通りのない道を選んでいて誘われているのではと思う。
「大丈夫なのかキルア?」
グループ通話でゴンとキルアに繋がっていて、キルアに問題ないのかの判断を聞く。
《絶さえ使ってれば滅多な事じゃ見つからないよ》
確かにそうだけど逃げられそうにもない場所に誘導されるのも御免だぞ。
最悪はゴンに霊界リングを渡してゴンだけでも逃げてもらう。
それから暫く尾行を続ければ団員の2人は建物に囲まれる場所で立ち止まった。
《どう?キルア》
ゴンの声が通話で聞こえてるとキルアは少し間を開けて返事を返した。
《待ち合わせか、俺たちを誘ってるかのどっちかだな》
「俺たちを?まさか尾行がバレてんの?」
「少なからず位置はばれてない。と、思う」
《どうする?》
ゴンがそう聞けばキルアは悩んでいるのか返答一つ一つに時間をかけている。確かに、奴らが待ち合わせか誘いなのかの判断は今の所つかないからな。
《動かずに様子を見よう》
「俺もそれに賛成」
そうして団員2人の様子に警戒していれば、長髪の男の方の携帯電話が鳴った。待ち合わせの仲間からか?
《ゴン、ロウ。一度電話を切るぞ。注意して見てろ!奴らの顔や仕草に違和感を感じたらすぐに逃げるぞ。
俺が携帯 鳴らしたらソッコー脱出だ。いいな!》
キルアは俺たちにそう伝えるとグループ電話切った。男の仕草に注意を払っていれば、電話で話をしていた男はキルアのいる部屋を睨んだ。
これは脱出だ!!
そう思い敵の動きを把握するために円を広げて見せれば、数多くの人が近くにいるのが判明した。
まさか……二重尾行!!?
俺の部屋の周りには誰も居なかったが、このままゴンを置いていくわけにはいかない。
すぐにゴンのいる場所へ向かえば、先ほどまで俺達が追っていた女とは別の高身長の女もいた。なによりも、問題なのは、追っていた女の方にゴンが捕らえられてしまっている事だ。
「あら、わざわざ来てくれのね。数が足りなかったからあなた一人は見逃すつもりだったけど丁度良かったわ 」
高身長の女は俺に近づいてくる。ゴンが人質に取られてる以上は下手な事は出来ない……。
「妙な真似はしない方がいいよ。この子、あんたの仲間なんでしょ?」
ゴンを捕らえる女は俺が妙な真似をしないように釘を刺す。もう少し早く駆けつけられたら……。
「坊やにも聞くわ。鎖野郎って知ってる?嘘ついたら、その子の命はないわ」
「記憶にないな」
少なからず俺の知り合いには居ないはず。そもそも念能力者の知り合い自体が少ない。
「鎖を使う念能力者の事よ。アタシ達、探してるの」
ゴンを捕らえる女が補足するように言うが知らないものは知らない。
「……やはり覚えがないな」
そう言うと長身の女の方は俺を拘束すると、ゴンを捕らえている女の方を見て首を横に振った。こいつ……俺に今何かしたのか?
嘘を見破る能力か?いや、わからないが触れた後に首を横に振ったという事は条件は対象者に触れる事……か?
長身の女の携帯が鳴ると、恐らくキルアを捕らえた誰かと連絡を取っていたのか「お友達は大人しく捕まったわよ」と教えてくれた。
キルアの命に問題がなければ俺はそれでいい。だが、この大人数の敵を相手にどうやって3人で脱出すれば良いんだ。
旅団の団員たちは俺たちを車に乗せると、別のどこかへ俺達を連れて行くつもりだ。いったい何が目的だ?
殺すならさっさと殺すだろうし、拷問でもして吐かせるつもりか?いや、憶測だが女の能力は嘘を見抜けるものだ。ならば、嘘をついてない俺達を拷問にかける必要性はない。
車が停まった先には廃墟のようか建物があり、その中から数名の実力者の気配を感じ取る。もしかしたらだけど……ここは幻影旅団のアジトなのかもしれない。
「さぁ、入ってちょうだい」
俺を拘束してた女は俺たちの後ろに立って言う。この人数だ……下手な事は出来ないな。
無言で進んでいけば建物のロビーと思われる空間に入っていった。そこには、条件競売で貰った顔写真に載っていた団員もいる。
というよりも何故ヒソカがここに?いや、これは吉だな。奴は、ある意味で俺と同志だからゴンを助けてくれるはず。
取り敢えずは知らんぷりと……。
「あっ!」
ゴン阿保!流石に今のはフォロー出来ねーぞこらぁ!
「なんだ?知り合いでもいるか?」
長髪の男はゴンにそう聞くが、キルアが咄嗟にフォローに入った。
「あ〜〜いや……あ!腕相撲の女!」
キルアはゴンと腕相撲をした眼鏡をかけた女を指差して言う。しかし、当の彼女は忘れてるみたいで、代わりに小柄な男が覚えていてくれた。
不意にシャルナークの方に俺は視線を向ければ、向こうも俺の事を見ていたのか目が合ってしまう。
あの時とは違って仇を見るような視線だった。もしかして……こいつらの仲間の誰かが殺されてしまったのか?
お互いに視線を外さないでいると、知らないうちにゴンと長髪の男が腕相撲する事になっていて、それに釘付けになってしまう。
「よし、俺と勝負だ」
結果は分かりきっていてゴンの手の甲から血が出るくらい何度も叩きつけられていた。あいつ……いつか半殺しにしないとな。
「もう一度。レディ……ゴッ!」
その数秒後にダンっとゴンの手がテーブルに叩きつけられて血が流れている。
こいつ調子に乗りやがって……。
「なぁ、オレァ旅団の中で腕相撲 何番目に強いかね?」
「7〜8番ってとこじゃねーか?」
フランケンシュタインを象徴するような大柄の男がそう答えると、ゴンを捕らえていた女が「弱くもないけど強くもないよね」と言う。
そんな事はどうでも良い……この男がゴンに傷を付けた事が何より許せねぇ。
「でよ、一番強ェのがウボォーギンって男だったんだが、こいつが鎖野郎にやられたらしくてな」
男がそう言うとキルアも相当頭にきていたのか「そんな奴知らないって言ってるだろ!」と言うが、それと同時にゴンの手をテーブルに叩き落として言う。
「おいガキ。次に許可なく喋ったら、ぶっ殺すぞ」
ギラギラとした殺気を飛ばす。この男の首を飛ばすくらい妖狼の姿になれば訳ない。殺さずとも脊髄を破壊すれば良い。
「あいつが戦って負けるわけがねぇ!汚ねぇ罠にかけられたに決まってる!!絶対に許さねえ……何人ぶっ殺すしてでも探し出す……っ」
こいつ……なぜ仲間が殺されたのかが、まるで理解してないようだ。こういう奴は……ゴンが一番嫌いなタイプなんだよ。
「鎖野郎は俺たちに強い恨みを持っている。最近、マフィアのノストラード組に雇われた人物だ。噂で聞いてたりしてねーか、よく思い出せ!」
やっぱり怒ってるよね。ゴンのオーラが少しずつ荒々しくなっていく。もはや戦闘は回避できないか。
「知らないね、例え知っていてもお前らなんかに教えるもんか」
「あ?」
長髪の男は仲間の死が余程悔しいのか涙まで流している。でも、それがゴンの逆鱗に触れた。
「仲間のために泣けるんだね。血も涙もない連中だと思ってた。……だったらなんで、その気持ちを…ほんの少し…。
ほんの少しだけで良いからっ、お前らが殺した人達に…なんで分けてやれなかったんだぁ!!!!」
怒りのままに怒鳴るゴンは腕相撲で組んでいた男の手をデカイ音を立てて逆に叩きつけてた。
この瞬間にゴンに向けられる殺気を感じ取り、ゴンの元へ即座に移動する小柄な男と対面するように俺は全速力で移動した。
「そこを退くネ。お前も殺すヨ」
今まで浴びた事のないレベルの殺気を俺に飛ばしてきているが、ここで退く訳にはいかない。一つ息を吐いて俺も今までより強い殺気を放つ。その瞬間に、この空間の空気がより一層張り詰めた。
「ゴンに手出しはさせやしない。もし、お前が手出しすれば……悪いが俺も本気でやらせてもらうぞ」
自分でも信じられない程の殺気が出ていると思う。いや、記憶にある中じゃ初めてだ。そもそもここまで怒りが込み上がること自体今までにない。
「もうやめろよ」
俺たちの方へシャルナークは歩み寄ってくる。一瞬、俺の方をみたシャルナークの表情は少し申し訳なさそうで、俺が発していた殺気も思わず止まってしまう。
「それに3人とも鎖野郎のこと本当に知らないんだろパクノダ?」
「えぇ、来る途中に調べたけど本当に心当たりはないわね」
パクノダと呼ばれた長身の女がそう答えれば、ようやく殺伐とした雰囲気は収まった。まさか、シャルナークに助け舟を出されるとは思わなかったけど。
「鎖野郎と関係ねーなら帰して良いんじゃねーか?」
大柄の男がシャルナークにそう言えば「置いといてもしょうがないしね」と逃がしてくれる方向に話を進めてくれている。
「いや、関係ないとは言いきれない。後ろで糸を引いてる人物がいる筈だ。この3人が鎖野郎を鎖野郎と認識してないだけかもしれないだろう?
解放するのは黒幕を吐かせてからの方が良いんじゃないか?」
眉なしオールバックの男がいかにもな事を言うが、シャルナークが、それに対して返答する。
もはや、安全にここから脱出するにはシャルナークしか頼みがいないからな。マジで頑張ってくれ。
「黒幕がいたとしても、そいつは鎖野郎じゃないよ。奴は単独で行動してるはずだから。
わざわざ子供を使わなくてもノストラード組を通じて情報は幾らでも入ってくる。一応、鎖野郎は組に所属してる訳だからね。
俺達の標的は鎖野郎だけだ。それ以外は放っとけばいい」
このシャルナークの意見には全員が納得してくれたようで、やっと肩を下ろせた。
「いやだめだ。そいつは帰さねぇ。坊主、旅団に入れよ」
こいつら頭がイカれてるのか?シャルナークの方をみたらお手上げと言った軽いジェスチャーを送られた。
「やだ、お前らの仲間になるくらいなら死んだほうがましだ!」
「くくくく……随分と嫌われたなぁ。おいてめぇ強化系だろ?」
「……だったら何だ?」
ゴンの返答を聞くや男は一人で爆笑し始めてシャルナークに視線を移したら「あとは頑張って」と言った様子で部屋から出て行ってしまった。
「よぉ……団長が戻るまで、こいつらここに置いとくぜ。入団を推薦する」
「本気かよ!?」
オールバックの男は若干呆れた様子で反応するが、結果は見えてると言った表情だった。
「まぁ良いけど、そいつらが逃げてもアタシらは知らないよ」
「見張りはお前が一人でやれよ」
他の団員にそう言われると、長髪の男は俺たち3人を連れて狭い部屋に入れた。
狭いと言っても戦闘できる十分なスペースが確保されており、闘えと言ってるのか?
サシなら勝てるだろう。だが、ゴンとキルアの安全が果たして確保できるかが不明だ。
これは待つしかないな。多分、旅団の団長も断ると思うし、その時まで待とう。
そう思った矢先に殺気だったキルアが立ち上がった。男を見る目はギラギラとしているが自信はなさそうな。
「おっかねぇなぁ……。殺る気満々って面だぜ?」
男は居合切りの構えを取ると間合いに入ったら切ると警告した。それに加えて嘘じゃないと言う力強いオーラ。
「キルア!」
ゴンが呼び止めればこちらに向かっている戻ってくる。相当、精神的に参ってるようで見ているのが辛いとさえ感じる。
大丈夫だと伝えたい。お前達二人は確実に帰れるから、こういう時こそ俺を頼ってほしい。
出口は男の後ろにしかないし窓もない。ゴン達を無事に脱出させられる自信がイマイチないんだよな。
「キルア……大丈夫だ。俺がいるのを忘れるなよ」
「あぁ」
本当に分かってるのかな。とりあえず、気分転換に軽い会話で交わしておこうかな?
「なぁ、ゴン。あの木像の中身はどうなったんだ?」
「ゼパイルさんが出来るだけ高く売ってくれるってさ」
何気ない会話を、この状況で始めていることが信じられないと言った表情でキルアは俺たちを見ている。
俺は余裕だから気が楽だし、ゴンは事のヤバさに気がついてないから気が楽だし、キルアが一番辛いのは知ってる。でも、ここは平常心を保たなきゃ早死にしちまう。
「ゼパイルさんが木造蔵の細工にはヤキヅケとヒラキと……ヨコヌキがあるって」
ゴンはまるで何かを考えついたかの様な表情で俺に言う。こいつの意図が何一つ読み取れないんだけど。
「ヨコヌキだよキルア!」
ゴンの言葉にキルアの表情も明るくなった。まさか、ここからの脱出する策が思いついたのか?でも、俺だけ除け者にされてるみたいで悲しいな。
「何だか知らねーが俺はお前達を信じていいのか?」
明るい表情の二人を見ればゴンはウンと頷く。結果、俺は男に向かって戦闘態勢をとった瞬間にゴンとキルアは部屋の壁をぶち破って脱出した。
なるほどなヨコヌキってそう言う意味か!
「馬鹿がぁ!!」
男は俺に向かって居合切りをするが、それと同時に俺は妖狼への姿を変化させた。
パワー・スピードじゃ負けない。俺の容姿の変化に男は驚いていたが、居合切りは俺の首を確実に狙っており、身体を反らすように交わした。
「テメェ……まさか天狼かっ!」
「ゴンに傷を負わせたお前のこと許してないんだわ。覚悟するんだな」
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