「ローズさん、大変だ!」
「こら! 今、軍のお偉いさんが来てるんだ。 大人しくおしよ!」
村人に連行された先は、村長の家のようで、そこには先客がいたらしく、村長は咎める。
しかし、村人の剣幕は村長の咎めをものともしない勢いで、
「大人しくなんてしてられねぇ!食料泥棒を捕まえたんだ!」
「違うって言ってるだろーが!」
「ローズさん!こいつ、漆黒の翼かもしれねぇ!」
「きっと、このところ頻繁に続いてる食料泥棒も、こいつの仕業だ!」
と、口々に言う。
「俺は泥棒なんかじゃねぇっつってんだろ!食いモンに困るような生活は送ってねーからな!」
すかさずルークが反論したところで、村長のローズは、全員を諭す。
「おやおや、威勢が良い坊やだねぇ。とにかく皆落ち着いとくれ。」
「そうですよ、皆さん。」
「大佐・・・・・・。」
急に聞こえた第三者の声に、ルークは尋ねる。
「何だよ、あんた。」
「私はマルクト帝国軍第三師団所属ジェイド・カーティス大佐です。貴方は?」
「ルークだ。ルーク・フォン「ルーク!」
ルークが名前を名乗ろうとすると、ティアが途中で止める。
「な、何だよ・・・・・・。」
「忘れたの? ここは敵国なのよ。あなたのお父様、ファブレ公爵はマルクトにとって最大の仇の一人。迂闊に名乗らないで。」
「へ、そうなのか?」
「そうよ。 あなたの父親に家族を殺された人達が、ここには大勢いる。無駄な争いは避けるべきでしょう?」
「どうかしましたか?」
自己紹介を遮って、裏でこそこそと話し始めたルークとティアに、大佐は問いかける。
「失礼しました、大佐。彼はルーク、私はティア、そして彼女はセリーヌ。ケセドニアへ行く途中でしたが、辻馬車を乗り間違えて、ここまで来ました。」
ティアは、苗字を隠して三人の自己紹介を済ませた。
「おや、ではあなたも、漆黒の翼だと疑われている彼の仲間ですか?」
『私達は漆黒の翼ではありません。本物の漆黒の翼は、マルクト軍がローテルロー橋の向こうへ追い詰めていたと思いますが・・・・・・。』
「ああ・・・・・・、なるほど。先ほどの辻馬車に、あなたたちも乗っていたんですね。」
「どう言う事ですか、大佐。」
今の話を聞いていたローズが、大佐に尋ねる
「いえ。セリーヌさんが仰った通り、漆黒の翼らしき盗賊は、キムラスカ王国の方へ逃走しました。彼らは、漆黒の翼ではないと思いますよ。私が保証します。」
「ただの食料泥棒でもなさそうですね。」
少しだけ疑いが晴れたところで、また第三者の声がした。
「イオン様。」
背丈がルークよりも少し低いくらいの、やさしい雰囲気を持った少年だが、その正体は宗教自治区ダアトの最高指導者である
「少し気になったので、食料庫を調べさせて頂きました。
部屋の隅に、こんなものが落ちていましたよ。」
イオンは、白いふわふわの毛をローズに手渡す
「こいつは・・・・・・、聖獣チーグルの抜け毛だねぇ。」
「ええ。恐らく、チーグルが食料庫を荒らしたのでしょう。」
この判断で、ルーク達が食糧泥棒ではないことが、ようやく確定したようだ。
「ほら見ろ! だから、泥棒じゃねぇっつったんだよ!」
「でも、お金を払う前に、リンゴを食べたのは事実よ。疑われる行動を取った事を反省するべきだわ。」
「仕方ねぇだろ。金払うなんて知らなかったんだから。」
『ルーク様、次回から気を付ければ大丈夫ですよ。ティアさんもそのくらいにしてあげて下さい。』
「どうやら、一件落着のようだね。
あんた達、この坊や達に言う事があるんじゃないのかい?」
ローズに説得されて、今まで犯人扱いしてきていた村人達は、謝罪の言葉を口にした
「・・・すまない。このところ盗難騒ぎが続いて気が立っててな。」
「疑って悪かった。」
「騒ぎを大きくした事は謝るよ。」
「坊や達も、それで許してくれるかい?」
ローズがルークに尋ねるも、
「俺は坊やじゃない。」
と言ってむくれてしまったので、ローズは言い直して再び尋ねた
「ああ、ごめんよルークさん。
どうだい、水に流してくれるかねぇ」
「……別にどうでもいいさ。」
「そいつは良かった。さて、あたしは大佐と話がある。チーグルの事は、何らかの防衛手段を考えてみるから、今日の所は皆帰っとくれ。」
とりあえず疑いは晴らす事が出来たので、ローズの家を後にした。
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