ドアを開けて入って来たのは、茶色いお下げ髪と黒ぶち眼鏡が特徴的で、黒っぽいメイド服を着た侍女。

彼女は少し苦笑しながら言う。

『もう、他の人が呼びに来たらどうするつもりだったんですか?』

「悪い悪い。」

ガイもまた苦笑しながら返した。

 そして、セリーヌは真面目な顔に戻ると、ルークの方に向き直り、
『ルーク様、旦那様がお呼びです。応接室へお願い致します。』
と伝えると、ルークは
「わかった。」
と返し、一呼吸おいてから、
「・・・前も言ったけど、俺だけの時は"様"も敬語も要らねぇから。」
と少し照れくさそうに言った。

 本当はセリーヌやガイにとってルークは敬うべき存在なのだが、友人でもある為、普通に話しても問題は無い。
・・・・・・のだが、セリーヌは"様"付けや敬語はいつものクセみたいなものらしく、なかなか直らないのだった。

「よし、じゃあ行くか。」

ルークが応接室に向かうので、セリーヌとガイはルークの部屋を後にした。


 ルークが応接室に行っている間、仕事が一段落ついたセリーヌとガイは中庭で雑談をしていると、しばらくして、薄茶色の髪を後ろに一つくくりにした男性が中庭へとやって来た。

彼はヴァン・グランツといって、ダアトという宗教自治区の騎士団の一人で、師団をまとめる総長を務めており、ルークの剣技の師匠で唯一ルークが"ヴァン師匠"と慕う人物である。

ヴァン謡将はガイを見かけると、声をかけ、そのまま話し込みはじめた。

聞くのも気が引けるので、セリーヌはそっとガイから離れて近くのベンチに腰を下ろした。

ふと周りを見渡せば、庭師のぺールが美しく咲き誇っている花達に水を上げていた。

 少しの間見とれていると、ルークが嬉しそうに木刀を持って中庭にやって来た。

どうやら剣術の稽古をするようだ。

ルークはヴァンと話しているガイに気付き声をかける。

「何してんだ、ガイ」

「ヴァン謡将は剣の達人ですからね。少しばかりご教授願おうかと思って。」

「ホントかよ? そんな感じには見えなかったぜ。・・・・・・ん?」

ガイと喋っていると、ルークはどこからか妙な気配を感じた。

「(・・・・・・何だ? 何かが来る?)」


「・・・・・・ク、ルーク! 聞こえないのか!」

「へ? あ、はい!」

 しばらくぼうっとしてしまっていたようで、ヴァンから声をかけられるまで気が付かなかった。

『(・・・どうしたんでしょう?)』

セリーヌはルークの様子が気になり、少し近くで眺める事にした。

「準備は良いのか?」

「大丈夫です!」

「それじゃあ俺は見学させてもらおうかな。頑張れよ、ルーク。」

「へいへい。」

ガイは近くのベンチに座り、ルークは木刀を構えた。

 ヴァンに基本の動きから、攻撃・防御・術技を一通り教えてもらっていると、どこからか歌が聞こえてきた。

「何だ?」

「この声は・・・・・・!?」

ルークは訳が分からず、ヴァンは少し心当たりがあるようだった。

その歌は特別な力があるようで、
「体が、動かない・・・・・・!」
と更に訳が分からなくなっていた。

それを見ていたぺールはこの現象を知っていたらしく、
「これは譜歌じゃ! お屋敷に第七音素士が入り込んだか?!」
と叫んだ。

そして、少し離れていたガイも被害にあっていた。

「くそ・・・・・・、眠気が襲って来る。何をやってるんだ、警備兵達は!」

『ものすごく・・・眠たい・・・!』

勿論、セリーヌも例外ではなく強烈な眠気に襲われていた。

 その間にこの現象を引き起こした犯人が姿を現した。

ヴァンと同じような色で、腰まである長い髪を持つ女性だった。

「・・・・・・ようやく見つけたわ。裏切り者ヴァンデスデルカ!・・・・・・覚悟!」

その女性は武器である杖を片手にヴァンに向かって来た。

「やはりお前か、ティア!」

ヴァンも剣でその攻撃を受け止め、軽く後ろに下がる。

突然現れた謎の人物にルークは無理矢理体を動かしてヴァンに続き、加勢しようとした。

「何なんだよ、お前はぁっ!」

「いかん! やめろ!」

ヴァンはルークの身を案じてか、叫んで制止しようとした。

『ルーク様、ダメっ!』

眠気を無理矢理飛ばして、セリーヌも叫びながらルークの方へ向かっていった。

 すると、

《響け・・・・・・。
ローレライの意志よ届け・・・・・・。
開くのだ!》

とまた声が聞こえたと思ったらルークと女性の中心が光りだした。

「これは・・・・・・第七音素?!」
と、女性が驚きの声を上げる。

セリーヌがルークの側に着いた時には光は大きくなって――――

「うわあぁぁぁぁぁ!?」
「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
『きゃあぁぁぁぁぁ!?』

そこにいた三人は消えた―――。




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