002. 夜の渓谷


第2話 夜の渓谷



「・・・・・・ク・・・・・・起・・・・・・
・・・・・・起きて、ルーク!」

「ん・・・・・・きみは・・・・・・?」

 ルークは揺り起こされて目を覚ますが、まだよく頭が働かなかったようだった。

「良かった・・・・・・。無事みたいね。」

ルークの無事を確認すると、彼女は側に倒れているセリーヌも同じように揺り起こす。

『ん・・・・・・。ここは・・・・・・?』

セリーヌもすぐには頭が働かなかった。

「さぁ・・・・・・。かなりの勢いで飛ばされたけど・・・・・・。」

それを聞いてルークは思い出したのか、
「そうだ! お前、師匠を・・・・・・。いてて・・・・・・!」
と言って慌てて起き上がる。

セリーヌもようやく思い出し、女性に対して警戒した。

だが、彼女は攻撃する訳ではないようで、
「待って、急に動かないで。・・・・・・怪我は? どこか痛む所は?」
と、むしろ二人の怪我の心配をしてくれた。

ルークは少し照れた後、はぐらかすように質問した。

「だ、大丈夫だよ。それより一体何が起きたんだ。」

続けてセリーヌも質問する。

『貴女は一体・・・・・・?』

「私はティア。どうやら私とルークの間で長振動が起きたようね。」

「ちょうしんどう? 何だそりゃ。」

ルークは聞き慣れない単語に首を傾げる。

「同位体による共鳴現象よ。貴方も第七音譜術士だったのね。迂闊だったわ。だから王家によって匿われていたのね。」

ティアは説明してくれているが、ルークにとってはまた更に分からない単語が出てきた為それが苛ついたらしく怒鳴る。

「だーっ、うるせーっつーの。ちょっと黙れ!お前が何言ってんのか、こっちはさっぱりだ!」

『ルーク様、落ち着いて・・・・・・。』

「・・・・・・・・・・・・・。」

セリーヌはルークを宥め、ティアは無表情でルークを見つめていた。

「何とか言え!」

沈黙に耐えられなかったのか、ルークは命令口調でそう言うとティアは溜め息混じりに呆れながら言った。

「黙れって言ったかと思えば何とか言え、とはね。話は追々にしましょう。貴方は何も知らないみたいだから、ここで話をするのは時間の無駄だと思うわ。」

「じゃあこの後どうすんだよ。」

「貴方達をバチカルの屋敷まで送って行くわ。」

「どうやって!ここが何処かも分からないくせに!」

「向こうに海が見えるでしょう。」
と言ってティアはその方向を指差す。

しかし、生まれてから一歩も屋敷の外を歩く事すら許されてないルークに、海がどんななのか分かるはずもなく、
「あれが・・・・・・海なのか。」
ポツリと呟くだけだった。

「とりあえず、この渓谷を抜けて海岸線を目指しましょう。街道に出られれば辻馬車もあるだろうし、帰る方法も見つかるはずだわ。」

「抜けるったってどうすれば街に出られるんだ。」

「耳を澄ませて。水音がするわ。川があるのよ。川沿いを下って行けば、海に出られるはずよ。」

「・・・・・・へぇ、そういうモンなのか。」

『かなり詳しいんですね。』

ルークとセリーヌはティアの豊富なサバイバル知識に感心していた。

「えぇ、まぁ・・・・・・。さぁ、行きましょう。」

「ああ。」

『はい。』





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