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「やっぱり、コウ先輩たちが聞いた人たちの他にも、何人か"神様アプリ"の後に事故に遭ってるみたいですね。しかも、"神様アプリ"のバグがあった日に」


手元の書類を見ながら、サクヤはつらつと述べた。
それは一体どこから入手した情報なのか。少し聞いてみたい気もしたが、なんとなく聞くのをためらってしまう。


「ーーー3人とも、最後に生徒会室に寄ってみない?」


アスカのこの提案で、四人は大きく進展することになる。




* * * * *





「こんにちは、柊さん。ふふ、まさか貴女から訪ねてきてくれるなんて」
「……どうも」


生徒会室でサクヤたちを迎え入れたのは、生徒会長である北都美月。《北都グループ》現会長の孫で、ミツキ自身も《北都グループ》の仕事をいくつか任されているらしい。
そのうえ美人で、生徒会どころか全校生徒からの信頼も厚い。まさに、パーフェクトな人間だ、が。


「……目の前に広がる女同士の冷戦に卯月はどうしたらいいんですかね……?」


なんて言えるはずもなく、心の中にだけ留めておく。アスカとミツキには、何か因縁があるのだろうか。
特にアスカが、いつもよりそっけない気がする。


「ーーー干渉は無用です。今日は聞きたいことがあって訪ねさせていただきました」
「なんでしょう? 力になれるといいんですけど」
「ーーー校内で流行している占いアプリ《神様の言うとおり》、そして学園内にその開発者がいるという、一部に流れる噂。それらについて、何か情報をお持ちではありませんか?」
「ねえ、ソラさん。アスカ先輩、やっぱりいつもと違う気が……」


サクヤが隣にいたソラに小声で話しかけるが、前にいたコウに小突かれる。多分、やめておけという意味。しぶしぶだが、サクヤは引き下がった。
ソラが隣で苦笑いをしている。


「例の"神様アプリ"ーーーあれについての噂ですか。学園内に流れている噂は一通り把握するようにしていますが……そうですね。確かに、あのアプリの開発者はこの学園に在籍しています」
「……その根拠は?」
「あのアプリは《北都導力》の提供しているサーバーを利用して配信されているんです。噂を確かめるために、少し前に配信者を調べてみたのですが……開発者は杜宮学園の生徒ーーー間違いないでしょう」
「きゃー、生徒会長様が悪いことしてるぅー」
「ふふ、それは貴女もだと思うのですが? 《卯月ーーー」
「ス、ストップ! そ、それは言わなくてもいいじゃないですか!」


危ない。この人は危険だ。いや、良い人だというのはわかるのだけれど、いつ手のひらのうえで踊らされるかわからない。そこが怖い。
コウ先輩がなんだコイツみたいな顔で見てるけど、そんなことは関係ない。
卯月は、卯月の身が一番優先なんです。


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