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「何度見ても不思議な場所ですね……綺麗なのに、ゾッとするような不気味さもあるというか……」
「ホラーゲームとはまた違う恐怖ですね……卯月、ホラーゲームはほぼやりませんが」
「四宮の姉ちゃんはこの奥か?」
「そのはずよ。急ぎましょう――3人とも、くれぐれも気をつけて!」
* * * * *
「……で? 卯月の兄さんが、僕に何の用? ハッキングの件についてだったら、後にしてよ。今はそれどころじゃないんでね」
「ハッ、クソガキが言うじゃねえか。最初から、ハッキングについてとやかく言うつもりはねえよ。今はそれよりも……」
レイヤの視線が、先程《門》が出現した場所に向く。ユウキからすれば、先程四人が消えた場所だ。
「おい、クソガキ」
「クソガキって、なんなの? 僕には四宮祐騎っていう名前があるんだけど」
「テメーはクソガキで十分だ。あいつら……サクヤたちは、そこに消えたのか?」
「! なんでそれを……」
「あー……やっぱり、あいつがそうだったか。めんどくせえなあ」
レイヤが怠そうに右手を目元にあてる。「まあいい」と踵を返し、貸しスペースを出ようとする、が。
「ちょっと待ってよ」
ユウキに制止によって、それは止められた。
「"あいつ"って、卯月……卯月桜夜のこと? アンタ、実の妹が消えたっていうのに、何とも思わないわけ?」
「ああ、思わねえな。むしろ、このまま消えてくれればいいと思ってる」
正直、面食らった。
兄弟姉妹というのは、お互いが好きかと聞かれれば、"嫌い"と答える場合が多いだろう。
だが、たった今レイヤは、「どうでもいい」と言った。何とも思わない、と。
「あいつなんか、ほんとどうでもいいんだよ」
* * * * *
「スターリフィーロ!」
コウの背後で、《怪異》が散った。
《怪異》に突き刺さっていたであろう《ソウルデヴァイス》は、ワイヤーから剣の形へと戻る。
《ソウルデヴァイス》、アルトゥート・スパーダの持ち主であるサクヤは、強気に笑っていた。
「サクヤも、《ソウルデヴァイス》を使いこなしてきたじゃねえか」
「もちろんです! まあ、アスカ先輩やコウ先輩には及びませんが……」
「それでも、すごいよ! サクヤちゃん、わたしと使い始めたのは同じくらいなのに……」
「……あ、ありがとう、ございます」
「……でも、サクヤちゃん、《怪異》を見つけたら気付かれないうちにサイフォンで写真をとってるけど、なんで?」
「それは、内緒です」
軽い会話をしながら、四人は《異界》を進む。
最奥にいたアオイを無事救出したのは、それから三十分後のことだった。