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シオが目を覚ましてから聞いた、シオの過去。《BLAZE》結成の秘密や、シオとアキヒロが慕う"カズマ"という男についてのこと。色んな話を聞いた。


「どんな"力"を持っていようが、お呼びじゃねえんだよ、お前たちは」


今の《BLAZE》を止めるのは、自分の役目。元リーダーとしての、自分の責務。
"力"というのは、《異界》や《ソウルデヴァイス》に関することだろう。


「高幡――いや、シオ先輩。アンタ、ちょっと頭が固すぎるんじゃねえか?」


自分だけで全てを背負うことは、驕りにすぎない。
シオは《BLAZE》を止めたい。コウたちはこの杜宮市で続く騒動を止めたい。双方の目的は、同じなのだ。


「だから……力を貸してくれ、センパイ。代わりに俺らはアンタに力を貸す」
「……」


コウ先輩は、すごい人だ。簡単にそんなことが言えちゃって、しかも、それでいて相手をどこか安心させる力を持っている。その証拠に、あのシオさんですら、今はコウ先輩に心を開いてしまっているのですから。
そんなだから、卯月もコウ先輩につい頼りたくなってしまうんですけど。


でも、卯月は卯月である限り、それは無理なんです。




* * * * *





「あの……シオさん」


シオさんとの話も終わり、皆が外へと出る最中。サクヤはシオを呼び止めた。
呼び止められたシオは何も言わず、サクヤの言葉を待っている。


「すみませんでした。いきなり飛び込んでいって、結局、何もお役に立てなくて……」


あの時サクヤは、他の《BLAZE》メンバーの相手だけで精一杯だった。
いくら《異界》の影響で戦闘には自信があると言っても、あるのは身のこなし方だけ。コウやソラのように昔から武道をやっていたわけでも、シオのように喧嘩や殴り合いが日常茶飯事だったわけでもない。いたって普通の、女子高校生。
正直、《ソウルデヴァイス》がなければ、本格的なことは何もできないのだ。


「……そうだな。正直、いきなり一年坊が出てきたときは驚いたが……」


シオはそう冷静に答えるとくるりと後ろを振り向き、サクヤに歩み寄る。
そしてサクヤの頭の上に手をポンとのせると、


「だが、お前は《BLAZE》の奴らを足止めしてくれた」


と言った。


「お前がいなかったら、俺はアキと話すことすらできなかっただろうよ。だから……それは感謝するぜ、卯月」
「でもっ……それでも、卯月は……卯月は……っ!」
「……卯月。お前……」


一体何の意地を張ってやがる?


そう言われたとき、急激に全身の血が抜かれたような、そんな感覚に陥った。
卯月が、意地を、張っている?
なぜ? どうして? わからない。
だって、卯月は。


「卯月」


シオに名前を呼ばれて、ふっと我に返る。


「言われたばっかりの俺が言っていいのかわからねえが……お前も、ちょっとばかり頭が固すぎるぞ」


これ……コウ先輩がさっき、シオさんに言っていた言葉……。
意味はもちろん、わかってる。


「……いえ、そんなことはないです。卯月は、"卯月"なんです。他の誰にもできない、自分だけにしかできないことをやっているんですから」
「……」


サクヤがそう言うと、シオは「……ならいい」と、それ以上何も言うことはなかった。


「おーいサクヤー、シオ先輩ー。置いてくぞー」
「あ、はい! 今行きます!」


外からコウが呼ぶ声が聞こえ、慌てて答える。
シオよりも先に外へ出ると、なぜかユウキが「遅いんだけど」とサクヤに悪態をついていた。そこからまた毎回のように口論に発展するのは、言わなくてもわかるだろう。


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