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「ん…………ここ、は……?」
目が覚めてまず最初に飛び込んだのは、見慣れない天井。
ここはどこだと見渡してみれば、やはり見慣れない……いや、見慣れないどころではない。
中性ヨーロッパの廃城。これが一番しっくりくる表現だろうか。造りは城だが、どこか禍々しさがあったが。
とりあえず、現代の日本国ではあり得ない光景だ。
「っはは……何、ここ…………」
フラフラと立ち上がって、改めて周りをよく観察してみる。
どうやらここは大広間のような所で、一本だけ道があった。道に向かって歩き出した瞬間。
「きゃああ!」
背中に大きな衝撃が走り、数メートルほど吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。
背中がビリビリと痛み、叩きつけられた衝撃で頭がクラクラする。とても動けそうにない。
「…………え………蟷螂……?」
うっすらと開いた目から見えたのは、巨大な黒い蟷螂。恐らく、この蟷螂がサクヤを吹き飛ばしたのだろう。
蟷螂はゆっくり、サクヤに向かって近づいてくる。
「あは、卯月を食べたところで、全然腹の足しになんてならないですよ、なんて…………」
そう呟いたところで、蟷螂は止まらない。
「…………っ!」
「卯月ーっ!」
その瞬間、サクヤと蟷螂の間に見慣れた背中が割って入った。学ランにパーカ、右手には不思議な籠手のようなものをつけている。
「時坂、先輩……!?」
「時坂君!」
「コウ先輩!」
続いて、杜宮学園の制服を着た女性が二人、走ってきた。
一人目は柊明日香。容姿端麗で成績優秀。クラスの学級委員長も務める、ちょっとした有名人だ。
二人目は郁島空。サクヤと同じ一年で、空手部の期待の新人。
二人とも、話くらいならコウから聞いたことがあった。
「あなたが卯月さんね。ここは私たちに任せて、あなたは下がっていて!」
アスカがサクヤに駆け寄り、手を差しのべる。
アスカの手には、コウが右手につけているものとよく似たデザインの片手剣が握られていた。ソラの両手にも、手甲がある。
「ここは専門家にお任せした方が良いらしいですね……すみません、お願いします!」
サクヤは一礼して、蟷螂から離れた場所まで走る。
今あの場に自分がいても、邪魔にしかならないだろう。悔しい思いをグッとこらえ、サクヤは地面を蹴る。
しばらくして、今までの光景が嘘だったかのように消えた。
再び目が覚めたのは、コウと話した蓬莱町だった。