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「ここは……」
前回とは全く違う造りの《異界》で目が覚めたサクヤは、キョロキョロを辺りを見回した。
今回は最奥ではなく、最初の地点からスタートらしい。その証拠に、サクヤの後ろには《門》がある。
おそらく、サクヤのいた世界と繋がっているのだろう。
「卯月!」
「…………え」
まさか、と思ったその瞬間、《門》から出てきたのはコウ、アスカ、ソラの三人だった。
三人は《門》から出てくるなり、サクヤに駆け寄る。
「卯月さん。時坂君から、あなたが記憶を取り戻したことは聞いたわ。でも、ここはあなたがどうにかできる場所じゃない。今すぐに、ここの《門》から出て……」
「出ません!」
サクヤの間髪入れない発言に、アスカが押し黙る。
「確かに、卯月一人ではどうにもならないことです。卯月には、戦う術がない。でも、時坂先輩に聞きました! 《異界化》は、人間の負の感情に引き寄せられるって!」
それは、コウに学園の屋上で聞いたこと。
人間の怒り、恨み、妬みなどに反応して、《異界化》は引き起こされる。
「だとしたら、今回の《異界化》は、卯月の責任です! 原因となるものは違っても、卯月の怒りに反応して、《異界化》は起こってしまった。よって、卯月はあの人たちを助けなければいけない!」
前回は、何もできなかった。駆けつけてきた時坂先輩や柊先輩、郁島さんの陰に隠れていただけ。
でも、今回は違う。
卯月は、卯月の使命を果たす!
「穿て――アルトゥート・スパーダ!」
突如現れた、まばゆい光。
サクヤが叫ぶと、サクヤの両手には双剣が握られていた。
コウやアスカ、ソラの持つ武器と、同じデザインだ。
「双剣の……《ソウルデヴァイス》……!」
「こ、これが、時坂先輩の言ってた、《ソウルデヴァイス》……!? あれ、何で、卯月は使い方がわかって…………」
サクヤが両手で交互に双剣を振るう。
最後にサクヤが双剣を振るったとき、双剣の刃の部分が十数個にわかれ、ワイヤーで繋がれたそれは先端部分が壁へ刺さった。
形は剣だが、性能はコウの持つ 《ソウルデヴァイス》とよく似ている。
ワイヤーをもとの剣の形へ戻すと、サクヤは自慢げに前を向いた。
「これなら、卯月でもお役に立てそうです!」
笑いながらそういう彼女に、コウとアスカはため息をつく。
「仕方ないわね……」
「まあ、そういうことだ。フォローはしてやるぜ、サクヤ」
「……………………っはい!」
四人は《ソウルデヴァイス》を構え直し、《異界》の奥へ進んでいった。
そこは、危険に溢れた未知の世界。
それでも、サクヤは楽しくて仕方がなかったのだ。