「……っていうことがあったんだけどさ」
『あら、そうだったの』

 私は夕飯を食べながら、携帯で母に電話をかけていた。暑くなってきたとはいえ、夜になると涼しい風が家の中に吹き込んでくる。

 適当に昨日の余り物を口に運んでいると、母が心配そうな声で言葉を続けた。

『まさかあの子に恋人がいるとは思ってなかったから、驚いたわ』
「でも、春輔兄さんも大学生だからねぇ……」
『とりあえず、まだこっちは仕事が終わらないから帰れないのよ。やっぱり、帰りは明日になるわ』
「別に大丈夫だよ」

 むしろ一人の時間が延びたのだ。内心喜びつつも、私はそれを表に出さず、淡々と話していく。

「ちゃんと鍵はかけておくし、そんなに心配しなくても大丈夫だから」
『そう……それならいいんだけれど。気を付けてね』
「うん」

 そう言うと、私は通話を切り、夕食の食器を片づけ始めた。これからどうしようかと食器を洗いながら考えていると、自室がぐちゃぐちゃのままだったことを思い出した。あまり整理整頓が得意な方ではないので、出したものはそのままだったりする。流石にあのままでは居心地も悪いし、部屋の片づけでもするか。
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