「……あれ?」

 部屋を片付け始めて30分。私は机の上を整理ながら、あることに気付いた。

「懐中電灯が、ない」

 やってしまった。昨日、ぼんやりしていたから丘の上に置き忘れたんだ。
 時間を見ると、7時半をまわったところだった。今ならまだ大丈夫だろう。もしかしたら、昼間誰かが拾ったかもしれないが、念のため確認しておいた方がいい。
 私は立ち上がると、そのまま玄関の鍵を持って外に走り出した。昨日はたくさんの流れ星が空を横切っていたが、今は何もない。まあ、そうだろう。私はそれ以上深く考えず、丘へと走っていった。

「あれ、君は……」
「うっ……」

 丘に行くと、昨晩の少年が立っていた。手には私の懐中電灯を持っている。相変わらず、月夜に照らされている白い肌が眩しい。下手すると女性に見えなくもない。

「昨日も会ったよね」
「そ、そうですね」
「これ、君のかな?」

 少年は手に持っていた懐中電灯を上にあげて、私に見せつける。私が黙って頷くと、少年はそれを自分の背中に隠したではないか。え?

「えっ、ちょ……」
「返してあげてもいいけど、お願いがあるんだ」
「は?」

 まさかの唐突なお願いを言い始めた。ちょっと待って、何この状況。

「君さ、今日の朝、そこの中学校に登校していたよね?」
「は、はぁ……そうだけど……」
 なんで知っているんだ。もしかして、昨日から私のことをストーカーしてたとか……。物騒な考えをしてしまうが、ふと朝聞こえた会話を思い出す。もしかして、あの言葉は少年のものだったのか。

「そこの中学校にどうしても話をしたい子がいるんだ。会わせてくれないかな」

 そう言って、抵抗を許さない笑顔を向けられてしまった。
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