うなだれてため息をついた私に、和久が慰めの言葉をかける。

「そう落ち込むな。今を大切にすればいいし、俺も君の気持ちに配慮しなかったことを悪く思ってる」
「そうだけど……」
「…………」

 ふと、和久の手が伸びて私の後頭部に回された。母親が子供を撫でるかのように頭を撫でられ、照れくさいやら恥ずかしいやらで、彼の顔を見ることができない。
 でも、頭を撫でられたおかげで、ちょっとだけ気分が明るくなった。なんだか嬉しくなって、にこにこと笑ってしまう。

「えへへ……」
「にやにやして気持ち悪い」
「にやにや!? にこにこの間違いじゃないの!?」
「君は本当にうるさいな」
「さっき『君はうるさいくらいがちょうどいい』って言ってなかった!?」

 そう言ってやると、和久は口を閉じて顔を横に向けた。しばらくして「……確かに言った」と答えが返ってきた。
 ちょっとだけ顔を赤くしている和久のことが可愛くって、大好きで、私は自分でも気持ち悪いほどにやにやしてしまった。

「和久は素直じゃないなあ」
「うるさい」

 睨まれてしまった。でも私の気持ちはふわふわとしている。こんなにも幸せであたたかな時間を過ごせるなんて、私は夢を見ているんじゃないだろうか。
 時間が止まればいいと思いながらも、世の中そんな甘くなくて。 それでも、少しでもこの時間が終わらないでくれ、と胸の中でひっそりと願う。
 彼といつお別れになるかはわからない。 人は心も体も脆いから、いつ終わってしまうかわからない。

 だから、一日一日を、私は大切に過ごすんだ。

「……大好きだよ」

 小さく呟き窓の外をそっと見ると、雪はやんでいた。雪がやんでも、まだまだ冬は去らないだろう。でも私の心には、既に春がやってきていた。
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