3
きっと、誰かを失っていない人なんか、もういない。
それが今の世界で、それでも生きていかなくちゃならない。
死がすぐ傍にある。
それでも、彼女はふたりの悲しみに、引き込まれていた。
(・・・パパ、)
(ママ、お兄ちゃん)
この男は、自分がもっと強かったら、
(私がもっと強かったら、)
みんなまだ生きていた、と言った。
(私のせいだ)
俺のせいだ。
感情がリンクして、足元がぐらついた。
ぱき、と小枝を踏み抜いてしまう。
「!」
「!!」
すぐにふたりはこちらを向き、ダリルと呼ばれた男はクロスボウを構えた。
「ウォーカーじゃないな。手を挙げて、出てこい」
「ベス、下がってろ」
矢を向けられて冷や汗が止まらない。
彼女はゆっくりと体を起こし、両手を挙げた。
「・・・!ダリル、女の子よ!脅さないで!」
「武器は捨てろ。仲間は?」
女の子、ベスが男に叫ぶ。
それでも照準を外さないまま、ダリルは女に近づいていく。
彼女が黙って首をふると、背後に回ったダリルがボディチェックを始める。ナイフは投げ捨てたので足元にあったが、それも遠くへ蹴飛ばされた。
「拘束する。小屋に入れ。」
「ダリル、かなり衰弱してる。乱暴にしないであげて」
「・・・」
心配そうなベスをよそに、ダリルはロープで女の腕を拘束していく。
それでも声をあげない彼女を見て、ベスは更に深刻そうな顔色になった。
そして小屋に戻されるなり、椅子にくくりつけられた。
「回りに仲間がいないか、見てくる。」
ダリルはそう告げて、部屋を出る。
慌てて近寄ってきたベスは、手首や首筋、目の回りなどに触れてなにかを確認し始めた。
「こんなに痩せて・・・何日食べていないの?」
それでも彼女は、なにも発しない。
「お水ならあるわ、飲む?」
水筒を差し出しても、無反応。
数分して、ダリルが戻ってきた。