きっと、誰かを失っていない人なんか、もういない。
それが今の世界で、それでも生きていかなくちゃならない。
死がすぐ傍にある。

それでも、彼女はふたりの悲しみに、引き込まれていた。

(・・・パパ、)

(ママ、お兄ちゃん)

この男は、自分がもっと強かったら、

(私がもっと強かったら、)

みんなまだ生きていた、と言った。

(私のせいだ)

俺のせいだ。

感情がリンクして、足元がぐらついた。

ぱき、と小枝を踏み抜いてしまう。

「!」
「!!」

すぐにふたりはこちらを向き、ダリルと呼ばれた男はクロスボウを構えた。


「ウォーカーじゃないな。手を挙げて、出てこい」

「ベス、下がってろ」


矢を向けられて冷や汗が止まらない。
彼女はゆっくりと体を起こし、両手を挙げた。

「・・・!ダリル、女の子よ!脅さないで!」

「武器は捨てろ。仲間は?」

女の子、ベスが男に叫ぶ。
それでも照準を外さないまま、ダリルは女に近づいていく。

彼女が黙って首をふると、背後に回ったダリルがボディチェックを始める。ナイフは投げ捨てたので足元にあったが、それも遠くへ蹴飛ばされた。

「拘束する。小屋に入れ。」

「ダリル、かなり衰弱してる。乱暴にしないであげて」

「・・・」

心配そうなベスをよそに、ダリルはロープで女の腕を拘束していく。
それでも声をあげない彼女を見て、ベスは更に深刻そうな顔色になった。

そして小屋に戻されるなり、椅子にくくりつけられた。

「回りに仲間がいないか、見てくる。」

ダリルはそう告げて、部屋を出る。
慌てて近寄ってきたベスは、手首や首筋、目の回りなどに触れてなにかを確認し始めた。

「こんなに痩せて・・・何日食べていないの?」

それでも彼女は、なにも発しない。

「お水ならあるわ、飲む?」

水筒を差し出しても、無反応。
数分して、ダリルが戻ってきた。