03
「破ァッッ!!!」


その瞬間アルトの掌から眩いほどの光が放たれた。
バリンという音が屋敷中に響きわたり部屋中のものがレダクトされたかの如く散々になった。

オワタ\(^o^)/というフレーズが頭に浮かんだ時には後の祭りで、まずはフィービーが、続いてぱぱうえが部屋に駆けつけてきた。

「何ごとですか?!」というキーキーとしたフィービーの声がする方を見れば、煙の向こうにフィービーとぱぱうえの影が見える。
見る影もなくなった私の自室を見て、フィービーはブルブルと震え始めた。こ、これは説教が始まる10秒前…。

ちらっとぱぱうえを見ると、ぱぱうえは溜息を吐いて、ヤレヤレしょーもない、とでも言いたげに首を振ると無言で杖を振り屋敷の修復を始めた。


「っっっもうっ! 貴 女 と い う 人 は っ ! 何故こんなにも部屋が崩壊してるのです?! 家の中でやることじゃないでしょう! いったい今回は何をしでかしたのです! エ?!」
「も、もももも申し訳ございません…。杖なしでの魔法を練習していました…。こんな、被害が出ると思わなくて…」
「杖なしで魔法を使えるとお思いで?!」
「ご、ごめんなさい」


キーンと頭に響くほど大きな声を出すと、ブツブツと「杖がないっていうのによくもまあこんなに爆発しますよ」などとごちながら部屋の修復を始めた。
その手つきは非常に手馴れている。


「アルト、杖を使わずとも魔法を放出するのはなかなかできることじゃないが、無闇矢鱈にやってできるものじゃない。魔法の眼鏡と、適当に本を書斎から持っていきなさい」


魔法の眼鏡は今度買いに行こう、と私の頭をポンポンと撫でからぱぱうえは部屋を出た。

はて、魔法の眼鏡とは:
マッドアイが持ってた魔法の目みたいなものだろうか。
魔法の目は魔法を書けられていたものの正体を見破っていたから、魔法の眼鏡も似たような効果を持っているのかもしれない。
魔法の軌道が見えるとか。ま、魔法界すげえ。


▼冒険の書を探しに行きますか?
んなもんなくてもチョチョイのちょいだしぃー?
→ もちのろんさ! 理論なくして魔法ならず、だよね!


という選択肢が頭に浮かんだところで書斎にレッツゴー。
ミッションコンプリートするまで書斎からは出れまテン!!!


書斎に入り、隅から隅までひとまずザーっと流しみる。
the・古書という見た目の分厚い本が天井高くまでズラリと並んでいる。
腐っても聖28一族のブルストロード家、やはり闇の魔術に関する本が多い。
なにも実践的な呪文だけではなく、『闇の魔術の成り立ちと仕組み』などという理論を説明したような本もチラホラ見つかる。
これは、私の探している本も期待できる。

「ンン、これは……」と、手に取ったのは『ナゼナゼ〜?! しもべ妖精の魔法と魔法使いの魔法』というもの。
表紙のイラストに描かれているしもべ妖精はキョロキョロと視線を動かし、目が合うとポッと頬を赤く染めてモジモジしだした。
人差し指をツンツンしあって時たまこちらを見上げてくる。

なんなんだ、一体。
誰がこの本を手に入れたのか気になる所である。
気まずい思いで表紙を開いて流し読みする。
……どうやらこの本は"アタリ"らしい。
これでパッチンの謎が解けるかもしれない。
変なタイトルしてるのにね。
この本を小脇に抱え、次なる本を探す。次に見つけたのは、『杖の必要性と相性』というものだった。
これも面白そうだ、と小脇に抱える。
まずはこれ位でいいかな〜と満足し宣言する。

ミッションコンプリートッ!

そそくさと書斎を出て、先程破壊したばかりの自分の部屋に戻る。
いやはや魔法とは随分便利なものだなー、と独りごちる。
もとマグルから見ればさっきの崩壊度は2度と直せないレベルだ。
しかし魔法にかかればものの1分で修復できてしまう。
指1本でちょちょいのちょいだ。

まず先に、『杖の必要性と相性』を開く。

……ふむふむふむ。
杖は魔力を増幅させ、魔力を杖先に集めコントロールしやすくするためのもの。

あくまで、魔力を持っている人に対して補助をつけるものであるからスクイブやマグルが持っていても効力を発揮しない、と。
……てことは、逆を考えれば、杖なしでも魔力のコントロール力を上げて、魔力も増やせば自分の手で魔法を使うことも夢ではないってことだよね?
俄然アルトちゃんはヤル気が出たよ!

本の続きには、マグルの突然変異によって魔法使いが生まれた魔法界創世の太古の時代には杖はまだ発明されておらず、複雑な呪文などは使うことができなかったためほとんどの魔法使いはただ魔力の塊を放出するだけであった。
その中でも魔力の扱いに長けたものが細かい魔法を使うことができ、現在では杖なしで魔法を発動させることができる者はほぼ確認されていない、と記されていた。

要するに、杖なしで魔法使うのくそムズだよ!ってことですね。
わかりました。
でもアルトちゃん負けない。

次の章には杖の材質によって、向いている呪文の種類などが載っている。闇の魔術向き、とか妖精魔法向き、とか。
とりあえずパスする。
まだ杖持ってないし。

ということで『ナゼナゼ〜?! しもべ妖精の魔法と魔法使いの魔法』を手に取り、開く。

この本にはハリポタ本編では説明されていなかった魔法の仕組みが説明されていてとても面白かった。
曰く、魔法とは、自分たちの魔力をエネルギーにそれぞれの属性をもつ妖精達に属性の力を借りることによって発動されるものである。
または、妖精の力を借りず、目には見えないそれぞれ属性を持つe粒子から属性の力を借りて発動するものである。
しもべ妖精は妖精のため、属性を持つ妖精からの補助が大きく、杖を必要としない。
一方魔法使いは多くの場合、空中のe粒子を糧とするため杖の補助なしでは発動が難しいとされる。

なるほど…? たぶん理解した。
妖精の力が借りられれば魔法は杖なしになるってことよね。
つっても、妖精なんて目に見えないしなあ。妖精さんに話しかけでもすればイイのかな??!!
ナニそのメルヘンファンタジー!!! ハリポタってどちらかと言えばダークファンタジーじゃないの!

ゴホン。まあ、今日の収穫は、杖なしで魔法を使うなら、魔力を手に一点集中させて、妖精さんに力を借りる、てところか。
これが分かっただけでも随分違う。
あとは魔法の眼鏡が魔力が目に見えるようにしてくれるアイテムだと祈ることだけである。

読んだ本の内容の要点を羊皮紙にまとめて元あった場所に本を戻す。
まだ背が小さいため脚立に乗っても届かなかった時に地団駄を踏んでいたら書斎に住み着く小人がえいしょえいしょと本を手で引いて手伝ってくれた。
この小人たちは書斎を勝手に掃除してくれたり虫を退治してくれる書斎の守り神だ。
ありがとう、とお礼を言って手を振ると手をちっちゃく振り返してくれた。
かわいい。


「さてと、」


魔法の眼鏡を買いに行こう、と行きたい光線をぱぱうえに示す必要がある。
ぱぱうえは押しと煩わしいの嫌いだからきっと折れてくれるだろう。
もうひと仕事頑張るかあ、と重い腰を上げた。


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