『…オーナーッ!!!』
倒れた父親に近づくわたしの目の前に、カチャリ…、と銃口が突きつけられた。
「ギン!!」
「ギン てめェ…!!!」
後ろから聞こえてくるルフィとサンジの声。
「過去にどれだけスゴかった男でも こうなっちゃ ただのコック。頭を撃ち抜くのも簡単だ。」
義足を折られて起き上がれない父親をギンは片足で踏みつけにし、銃口を逸らすことなくわたしと父親に突きつける。
「あンの野郎 店主の義足を!!!」
「畜生ォっ!!」
コック達の叫び声が聞こえる。銃口の先をゆっくり見上げれば、ギンは真っ直ぐにサンジを捉え、その目は炎を写し、微かにゆれてみえた。
Order 【 11 】
「あんにゃろ ブッ飛ばしてやる!!」
「まてまて 言い分を聞こうじゃねェか。」
耳をつくルフィとサンジの声にわたしは後ろを振り返る。今にも殴りかかりそうな形相で睨みつけるルフィを、サンジは冷静に片手でいなした。
「この男と女を助けたいだろ?頼むサンジさん。大人しく この船を降りてくれ!!」
続けてギンが言う。
その瞬間、わたしはサンジと目があった。蒼い瞳が真っ直ぐにわたし達を見つめている。でも瞬きをした次の瞬間には、サンジの瞳はギンを睨み付けていた。
「船を降りろ?ーーー やなこった。」
サンジの、いつもより低い声。
わたしは胸元をギュッと握りしめて、サンジのらしくない冷ややかな目を見つめる。
…なんでだろう。胸騒ぎがする。
「バ…バカ野郎サンジ!!挑発すんじゃねェ!!店主となまえが…………!!」
慌てて怒鳴るコックの声が響く。
でもサンジはまったく聞く耳を持たない。
「ギン。その銃 おれに向けろ。」
「お前バカかよ!!死ぬぞ!!?」
「まァな。」
心配するルフィに、サンジはあっけらかんと返し、そのままギンを見つめる。
……だめだ。まずい。止めなければ。
わたしは何か嫌な予感がして、首を振ってサンジに合図を送る。ダメだよ、そんなことしないで…!と。
でもサンジと全く目が合わない。
合わせようともしてもらえない。
「…サンジさん…!!何で……!!」
ギンの狼狽えた雰囲気が背後から伝わってくる。もしかしたらギンは撃つ気なんてなかったのかもしれない。
ただの脅しのつもりで…。
でもギンを見るサンジの瞳はいつもより冷たくて、少し怒っているようにも見えた。
「そんなに死にたきゃ…、殺してやるぜ イブシ銀にな!!」
サンジとルフィの奥で、ゆらりと何かが起き上がる。
………円盤の鎧の男。帆柱が激突して気を失ってたはずの男が、目を覚ましたようだ。
「この“鉄壁のパール” 一度の戦いに二筋の鼻血を出すとは夢にも思わなかった。こいつら危険すぎるぜ。動くなよ。そいつらの頭を吹き飛ばされたくなかったらな…………!!」
鎧の男 パールは、叫びながらサンジに向かって一直線に拳を振り落とした。
「超天然っ パ〜〜〜ル!!!プレゼントッ!!!」
ーーーゴキッ!!!
「サンジ!!!」
『ーッ サンジくん!!!』
喉の奥が一瞬で凍りつく。人を殴った時の打撃音じゃない異質な音がサンジを突き飛ばした。ガコンと壁に打ち付けられたサンジはズルズルと倒れ、二、三回咳き込み、頭から血が流れる。
「この…っ」
ルフィは拳を振り上げ、パールに詰め寄る。
「手ェ出すな 雑用っ!!!」
サンジはそれを止めた。
「お前 何でよけねェんだよ!!」
「ーーー。そこのクソ下っ端が、引き金 引いちまうだろ」
そう言って起き上がり壁に凭れかかるサンジの表情は、前髪に隠れてわたしからは見えない。
「卑怯じゃねェかよギン…。そんな条件どっちものめねェよ!!」
「何でだ!!簡単だろ この店捨てりゃ全員 命は助かるんだぜ!!?ただ店を捨てるだけでみんな…」
わたしの後ろでギンが叫ぶ。でもサンジは頑なに首を縦に振ろうとはしない………。
「この店は そのジジイの宝だ!!!」
(ーーーー………ッ。)
その瞬間、わたしは口元を両手で覆った。
「サンジの奴、店主が嫌いだったんじゃねェのか!?」なんて誰かの声が聞こえる。まだそんなことを言われてるサンジは、どれだけの誤解を招いて来たのか。
(嫌いなんて、サンジくんがそんなの一番ありえないのに…ッ。)
「おれはクソジジイから何もかも取り上げちまった男だ。力も!夢も!!!だからおれはもうクソジジイには何も失ってほしくねェんだよ!!!」
「こんな時にくだらねェことほざいてんじゃねェ………………チビナスが。」
「うるせぇな!!おれを いつまでもガキ扱いするなっつってんだろうが!!!」
あぁ、胸騒ぎの理由はコレだったんだ。
サンジが一番、誰よりもなによりもバラティエを大事に思っていて、幼い頃から一番愛情深くて優しいことを分かっていたのに。
もっと早くこの場を離れなければいけなかった。もっときちんと状況を整理してキミの考えそうなことに向き合っていれば、少なくとも今わたし達親子がキミの足枷になることはなかったのに。
「サンジ 危ねェ!!!」
サンジの後ろで、鎧男の姿が嫌に笑うーー。
「パ〜〜〜〜ル クローーーズッ!!!」
「!!!!」
その手に持つ盾で、容赦無くサンジの顔を挟み潰した。吐血した血が床に飛び散る。白目を剥いたサンジは、力無く膝から崩れ床に倒れた。
「サンジ!!!!」
See you in the next story………